4.一方その頃
どちゃという音とともに体の中心に穴が開いた男の身体は倒れる。
周りには血だまりが広がり、鉄臭さが鼻につく。
「アーア、汚れちゃいましたネェ。アレアレェ?皆さんどうしましタ?ああ、このゴミが気になるんですネ?すぐに片付けるので安心してくださイ!」
うさぎが指を鳴らすとぱっとその場から死体が跡形もなく消える。
広がった血も匂いも元からそこには何もなかったように元通りになった。
一瞬の静寂のもと叫び声が響き渡る。
うさぎを責め立てる声や恐怖のあまり泣き叫ぶ声が広がり、パニック状態に陥った。
「ウーン、うるさいですネェ。あと2、3人ほど消せば少しは静かになりますかネェ?」
うさぎのその言葉は不思議とパニック状態の人々の耳に届き、一瞬にして静寂が戻ってきた。
「オ、やっと静かになりましたネ!イヤァ、よかったよかっタ。これで無駄に救済者の数を減らさなくて済みまス。私たちもむやみにあなたたちを殺すのは避けたいですからネェ。デハ、静かになったところでゲームの説明に移りましょうカ!」
うさぎはそういうと、腕に抱えていた少女に声を掛ける。
「姫様、あなたの出番ですヨ」
人形のような少女は軽く頷き、うさぎの腕から降りるとここにきて初めて声を発した。
「私は私の邪魔をする奴が嫌い。もし私の言葉を遮るものがいたら殺す。そのことを踏まえて聞いて。
あなたたちには今からゲームに参加してもらう。私たちはその案内役。
ゲーム内容は世界の救済。説明が終わり次第あなたたちを第一の滅びる運命の世界に転送する。
第一世界は今瘴気に侵されている。瘴気は人々を蝕みその命を奪っていった。現在、人類の生圏存圏は三国のみとなっている。
あなたたちにはこの瘴気に侵された世界を救ってもらう。
でも、何の力もないあなたたちがいくらその世界に送られたとしても世界が救えるとは思わない。だからゲームマスターはあなたたちにスキルを与えることにした。
ただ、初めからスキルを与えるつもりはない。あなたたちは一定条件を満たすことでスキルを獲得することができる。
あなたたちが最初に獲得できるスキルを私たちは”メインスキル”と呼んでいる。これは”ステータスオープン”といえばいつでも確認できるようにしてある。あと、収納機能も付けてある。あなたたちが獲得したものはアイテムボックスに送られ、好きな時にそこから物を取り出すことができる。これは私たちの親切。あなたたちの文化に合わせた設定。感謝するといい。
基本的にはスキルの力を活用してゲームを攻略してもらう。もちろん、スキルの力を使わずとも攻略できるというのならそれで構わない。攻略するということが最も重要。
攻略には攻略度が存在する。ゲームクリア時にこの攻略度が100に近いほど評価が高くなる。でも、これを確認するすべはない。常に自分の最善を尽くしてゲームに挑むように。攻略度を上げるには救済者全員の協力が必要。力を合わせることを推奨する。
そして、攻略度とは別に貢献度というものが存在する。これは言葉の通りゲーム攻略にどれだけ貢献したかを数値化したもの。貢献度を消費することによりアイテムショップで特殊なアイテムと交換することができる。アイテムショップはステータス画面から開けるからそこでどんなアイテムがあるか確認するといい。アイテムは攻略に役立つから貢献度を稼げるように積極的に攻略に参加することを推奨する。
攻略が完了したかどうかは私たちで判断する。攻略が終わり次第、その世界から帰還させる。もし、その世界で死んでしまった人はその世界に取り残されるから気を付けて。
説明はここまで。あとは、ゲームを攻略していくうちに感覚をつかんでいって。
それじゃあ、ゲームの舞台となる世界に転送する。頑張って」
少女が一気に説明を終えると一方的に説明されて戸惑う人々は一切の質問も許されずそのまま身体が透けていき、一人残らずその場から消えた。
その場に残されたのは少女とうさぎだけとなった。
少女はいつの間にか用意されていたお茶会のセットのような椅子に座るとうさぎに声をかけた。
「つかれた。うさぎ、お茶」
「ハイハイ、用意してありますヨ」
用意したお茶とお菓子を少女の前に差し出すと、うさぎも席に着いた。
「サテサテ、どうなりますかネェ。あの者たちはあの世界を救えるのでしょうカ。姫様はどう思いまス?」
「知らない」
「姫様は冷たいですネェ。まあ、あまり期待せずにいまショウ。期待したらした分だけ裏切られたとき残念な気持ちが大きくなりますからネェ」
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ブツと映像が途切れる。
「とまあ、こんな感じだな。おまえ以外の救済者はすでにゲームに参加している。おまえもいつまでも閉じこもってないでゲームに参加しろ」
「目新しい情報といえば攻略度とアイテムボックス、ショップくらいか。プレイヤー全員の協力が必要、ねぇ。やっぱ、俺も参加しないといけねぇか。まあ、どっちみちずっとここにいるわけにはいかないしなぁ。でもここから出たらすぐ死ぬ未来しか見えないんだよなぁ」
ごろごろしながら一向に行く気がない紅月に切れたイデスが強制的にゲームの中に送り込もうと紅月を転送させ始めた。
「……ぐだぐだうるせぇ!さっさと行ってこい!」
「はあ?!お前強制的に俺をここから出せるのかよ?!ここは俺の無敵地帯じゃねぇのかよくそが!」
こうして紅月は心の準備も何もできていない状態でゲームに参加することになったのだった。
ありがとうございました。




