3.自分のスキルを確認するのは大事なことだよな
無力感に包まれつつもいつまでもその状態ではいられない。
死ねなくなったという事実を無理やり飲み込んで、前を向くことにした紅月はふと自分は今どういう状態なのか気になった。
「そういえば、俺は今自分のスキルのセーフティエリアの中にいるんだよな?俺のスキルって自分で確認できたりしないのか?」
「できるぞ。お前たちに合わせてスキルは調整してあるから”ステータスオープン”っていえば見えるはずだ。ステータス画面は本人以外には見えないようになっているから安心しろ」
「……。なんか本当にゲームみたいな仕様だな」
「わかりやすい親切仕様だろ?」
「確かにわかりやすくて助かるがなんというか……いや、何でもない」
紅月は言いたいことを飲み込んで”ステータスオープン”と声を発する。
すると、紅月の目の前にステータス画面が現れた。
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名前:夜光 紅月
性別:男
スキル:メインスキル”死は訪れない”
・派生スキル”憩いの場”
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ステータス画面には最低限の情報しか載っておらず非常にシンプルだ。
紅月がメインスキルと書かれている部分に触れると新たな画面が開いた。
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メインスキル”死は訪れない”
あなたのもとに死が訪れることはありません。
あなたは死ぬたびに蘇り、そのたびに力を得ることになるでしょう。
その力があなたの力になるかどうかはあなた次第です。
死という救済を失くしたあなたに祝福を。
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「え?なんだこれ、抽象的すぎないか?」
「なんだ気に入らねーのか?」
「いや、なんていうかスキルの説明ってこんなだっけ?もっと細かく教えてくれんだろ、普通。てか、救済失くしてんのに祝福ってなんだ?煽ってんのか?
はあ、仕方ない。これから読み取れることは、俺は死ねば死ぬほど強くなるってことか?どこぞの戦闘民族かよ。俺なるべく死にたくねぇんだけど。まあ、いいや。派生スキルのほうも見てみるか」
紅月は派生スキルに触れる。
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派生スキル”憩いの場” Lv1
死んだ際に蘇生する安全地帯を形成するスキル。
このセーフティエリアには主か主が許可したもの以外は立ち入ることができない。
このエリア内ではあらゆる能力が使用不可となり何人も危害を加えることはできない。
主はいつでも自由に出入りできる。
レベルアップ条件:貢献度1000の消費
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「ああ、死んだときに手に入る力ってのがこの派生スキルなのか。俺の派生スキルの獲得条件が死ぬことってわけね。くそみたいな条件だな。てか、このスキルレベルアップすんのか。メインスキルの説明とは違ってこっちはかなり具体的に教えてくれるのな。それにしてもこの貢献度ってなんだ?」
「そりゃ、メインスキルのほうはあの説明がすべてだしな。あれ以上に書くことがないんだよ。貢献度についてはゲームに参加すればそのうちわかるから気にすんな」
「いや、絶対あれ以外にも書くことがあると思うけど……。貢献度についても適当だな……。まあ、いいや。これレベルアップするとどうなるんだ?」
「レベルアップ条件のとこ触ってみな。レベルアップ後のスキルの変化が書かれてるはずだぜ」
レベルアップ条件に触る。
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レベルアップ条件:貢献度1000の消費
Lv2:安全地帯がより快適な空間へと変わります。
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「より快適な空間?この何もない白い空間が過ごしやすい空間になるってことか?できれば、ベッドとか風呂とかトイレとかほしいな。ここだけで完結できる空間とか最高だよな」
「……おまえ、そんな空間になったらここから出る気ねーだろ」
ジト目で紅月を見るイデス。
「うるせぇ。俺は元来引きこもり体質なんだ。純日本人だから仕方ねぇだろ」
「いや、それ日本人とか関係ねーだろ」
「ばっかお前、日本人はな昔から閉じこもるのが好きなんだよ。鎖国で200年以上も閉じこもる民族だぞ。なめんな」
「いや別になめてねーし。そういえばあの時も閉じこもってたな。ほんと変な種族だな。てかそんなことはどうでもいいんだよ。おまえ、自分にできることはやるんじゃなかったのか?もうすでにやる気が見えねーんだけど」
「……俺は思ったんだ。別に俺が何かしなくても誰かが頑張ってゲームをクリアしてくれればいいんじゃないのかと。俺の力なんて微々たるものだしあってもなくても変わんねぇだろ。むしろ俺が何もしなことこそ最も貢献することになると思うんだよな」
はっきり言ってオレはすでに面倒くさくなっていた。
さっきは死ねなくなったっていう衝撃のせいでいつもなら存在しないやる気が顔を見せていたが、冷静になってきて考えてみると俺が何か頑張る必要があるのだろうかという気分になってきた。
正直、俺は何もしたくない。
できることなら何もせずこの空間でごろごろしているうちにすべてが終わらないかなと思っている。
そんな紅月の心の内を読むようにイデスがいう。
「おまえの考えはわかったけどよ。おまえここからずっと出ないっていう選択肢は現状あまりおすすめできないぜ」
「まあ、それはそうだよな……。最低でも”憩いの場”のレベルを2に上げないとこんな何もない空間でずっと過ごすなんて気が狂っちまうもんなぁ」
「いや、それはまあ別にどっちでもいいことだけどよ。食料とかはここを出てゲームに参加しないと手に入らないぞ」
「ええ、そこは無償提供とかの親切仕様じゃないのかよ」
「それは甘えすぎだ。おまえ結構図太いな……」
イデスは呆れたように紅月を見る。
紅月はごろんと寝ころび、そのまま伸びをした。
「んー!……はあ、外に出るしかないのかぁ。俺のスキル戦闘に関しては何の優位性も獲得できないスキルなんだけど。これで戦え一択だったら無理ゲーなんですけど」
どう考えても戦闘には一切使えないスキルのことを考えているうちにふと思った。
「あれ?俺、今参加してるであろうゲームのこと全然知らねぇんだけど」
紅月はイデスの方を向く。
「おまえ全然そのことに触れねーから説明いらねーのかと思ったぜ」
「いや、説明いるわ。スキルの説明先に聞いちゃったからゲーム内容普通にすっ飛ばしてたわ」
「やれやれだな。まあいいや、オレから説明するよりほかの救済者と同じ説明を聞いたほうがいいだろ」
イデスがこれを見ろというと空中に映像が映し出された。
ありがとうございました。




