13.害虫駆除は早ければ早いほど良い
思う存分泣いてすっきりしたのか泣き止んだ王女は憑き物が落ちたような表情で恥ずかしそうに笑った。
「お恥ずかしいところをお見せいたしましたね。今日はもう遅いですし、お部屋をご用意いたしますのでそちらでお休みください」
「ありがとな。そうだ、俺は今まで一人で暮らしてきたからか騒がしいのが苦手なんだ。出来れば周りに誰もいない客室とかあればそこで休みたいんだけどできるか?」
「わかりました。では、周りに人を近づけないよう手配しますね。ですが、お世話係の者は近くに控えさせたいのですがそちらは大丈夫でしょうか?」
「世話係も必要ないから俺の部屋には近寄らないよう言っておいてくれ」
「わかりました。では、朝のご挨拶の際はお部屋のほうに伺っても大丈夫ですか?」
「ああ、それは大丈夫だ。部屋についたらすぐに休むから飯もいらない」
「さすがにそれは……。では、こういたしましょう。お部屋に行く前に軽食を用意させますのでそちらをお持ちください。タダヒトさんがお部屋に入りましたら朝まで誰もお部屋には近づけないようにいたします」
「まあ、それなら大丈夫か。世話をかけるな」
「いえいえ、まだ何もできていませんのでこれくらいはさせてください!それでは、すぐに準備しますね」
そういうと王女はディナに軽食の準備を頼み、王女と王女の護衛としてリッターは客室までタダヒトを案内してくれることになった。
客室につく頃にはディナが急いで用意してくれたであろう軽食をもって現れた。
「ちょうど間に合いましたね」
「仕事が早いな」
タダヒトはディナから軽食の入ったバスケット受け取り、部屋の中に入る。
「それでは、ごゆっくりお休みください。また明日お会いしましょう」
「ああ、そういえばお前たちは王様の言ってたパーティーには参加しないんだよな」
「はい、陛下からも参加するなと言われておりますしこの後は部屋で休む予定です。それがどうかしましたか?」
「私もそのまま姫様のお世話をいたしますので参加することはありません」
「俺もあんなところに好き好んでいく気にはなれん」
「いや、それならいいんだ。お前たちも今日は疲れただろうしお互いゆっくり休もうぜ。んじゃ、また明日。おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
王女たちと別れ、部屋にあるベッドに飛び込んだ。
「はあ、疲れた」
王女が手をまわしてくれたおかげか人の気配を感じず、静かだ。
念のため部屋全体に結界を張り、鍵をかけたうえで封印も施しておいた。
「さてと、さっさと眠りたいところだが最後に一仕事してから寝るか」
そして紅月はこの世界に来てから初めてタダヒトからログアウトした。
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VR機器のカプセルから出ると軽くストレッチをして体をほぐす。
「んー、ほとんど生身と変わらないとはいえやっぱり自分の身体が一番だな」
そんな紅月にイデスが話しかけてきた。
「よお、活躍してんじゃねぇか。貢献度も結構稼いだしスキルのレベルアップができるようになってるけどどうする?」
「ああ、そういえば貢献度でレベルアップできるスキルがあったな。それはあとでいいや。すぐにまた行くし」
「あん?じゃあ、なんで戻ってきたんだよ。戻ってくる必要なくねぇか?」
「今度は生身で出るから一回ログアウトする必要があったんだよ」
「生身でここから出ようだなんてお前らしくないな。槍の雨でも降るんじゃないか?」
馬鹿にすようにケラケラ笑うイデス。
「うるせぇよ。いいからさっさと俺を転送してくれ」
紅月はイデスにそういいつつ、ショップで買っておいたパーカーを羽織ると無造作に後ろで一つに結んだ長い黒い髪を中に入れるようにフードをかぶり狐のお面で顔を覆う。
「なんだよ、その不審者スタイルは」
「俺と俺以外のやつらのためだ。ほら、早く転送」
「なんだそりゃ。まあ、お前が積極的に動くのはいいことだしな。きりきり働いて来いよ」
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転送が終わり、さっきまでタダヒトとしていた客室に立っていた。
「さてと、どうするんだったかな。えっと、”マップオープン”」
そうつぶやくと目の前にマップが開かれる。
マップにはタダヒトが通ったことのある範囲の簡易的な配置図が表示されている。
そのマップの中には点滅している赤い点が一か所と青い点が一か所、そして青い点の周りにはたくさんの白い点があった。
白い点は他にもまばらに散っており関連性のない動きをしている。
「これだな。おっと、その前にこの部屋にもこれ置いておかないとな」
紅月はアイテムボックスから青い宝石が浮かぶ不思議な装置を取り出し、部屋に置く。
その瞬間、マップに表示されていた赤い点のすぐそばにもう一つ青い点が表示された。
「よしこれで大丈夫だな。それじゃあ、さっさと済ませるとするか」
紅月がマップの赤い点の近くではないほうの青い点に触れるとその場から消えた。
ありがとうございました。




