第3話 桜吹雪の甘い誘惑
春風に混ざって、桜の花びらが舞い散る。
少年は通学路の桜並木を、少し急ぎ足で歩いていた。
木の根元に引っかかっていた小石に足を取られ、前のめりに倒れそうになる――その瞬間、
「わっ!」
リナの腕が、少年をしっかり抱きしめた。
肩に触れた手の温もりと同時に、胸の柔らかさが軽く肩に当たる――ほんの一瞬、しかしその感触で頭の奥が熱くなり、息が止まりそうになる。
鼻をくすぐるのは、桜の香りと混ざったリナの甘く落ち着く香り。
大人のお姉さんらしい、ほのかに香水の残る上品な匂いが、少年の意識を完全に支配した。
柔らかく揺れるブラウス越しの体温と、肩に触れた指先の感触。
視界の端で舞い散る桜の花びらも霞むほど、少年の頭は真っ白に支配され、胸の奥が焼けるように熱くなる。
「大丈夫よ、怪我しなかった?」
リナの声は柔らかく、優しく、少年の胸の奥まで染み渡った。
鼓動が速まり、理性はすっと消え、ただリナの温もりと香り、そして軽く触れた胸の感触に意識を奪われる。
「……あ、ありがとう……」
リナはわずかに微笑み、少年の肩を軽く押しながら、耳元でささやいた。
「Oh, ich bin überrascht! Deine Reaktion ist so süß…」
(あっ、びっくりした! あなたの反応、すごく可愛い…)
二人は桜の花びらが舞う道を歩き続ける。
少年は振り返る勇気もなく、ただリナの温もり、胸の柔らかさ、そしてお姉さんの香りに心を支配され続けていた。
――桜はまだ舞い続ける。
けれど、少年の心の中の熱は、もう誰にも止められそうになかった。




