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第1話:タロットが導く運命の第一歩

「うわっ、なんじゃこりゃ!?」

星見悠斗ほしみ ゆうとは、突然の眩い光に目を覆った。ついさっきまで、東京の片隅にある小さな占いサロン『スターライト』のバックヤードで、師匠のタロットカードを整理していたはずなのに――。

「いや、待て待て。落ち着け、俺。夢か? VRゲームのバグか?」

周囲を見回すと、そこは見知らぬ石畳の街並み。木造の家屋に、馬車がガタゴト走り、色とりどりのローブを着た人々が闊歩している。中世ヨーロッパ風のファンタジー世界だ。しかも、道行く人々の頭上には、キラキラと光る星のようなエフェクトがチラチラ浮かんでいる。

「マジで……異世界転生!? いやいや、なろう小説かよ! 俺、25歳の冴えない占い師アシスタントが、なんでこんな目に!?」

悠斗は頭を抱えた。確かに、さっき触った古いタロットカード――師匠が「絶対触るなよ」と言っていたボロボロのデッキから、妙な光が放たれた瞬間、意識が飛んだ。そして、気づけばここにいる。

「とりあえず、状況整理だ。俺の名前は星見悠斗、25歳。趣味はオタク文化と占いアプリいじり。特技は……タロットの意味を全部暗記してるくらい? うわ、めっちゃ平凡! せめてチート能力の一つでもくれよ、なろうの神様!」

と、その時、頭の中に不思議な声が響いた。

《星詠みの試練者よ、汝に『絶対予見アブソリュート・フォアサイト』の力を授ける。運命を読み、書き換える力だ。使いこなせば、世界すら変えられるだろう。》

「うおっ!? 何!? 脳内ナビゲーション!? いや、これがチート能力ってやつか!?」

悠斗は慌ててポケットを探ると、さっきの古いタロットデッキが握られていた。カードはボロボロなのに、妙に神聖なオーラを放っている。試しに1枚引いてみると、『星』のカードが現れた。すると、目の前に光のホログラムのような画面がポップアップ。


【絶対予見:発動】

対象:星見悠斗

予見内容:5分後、市場通りで盗賊団の襲撃が発生。少女が危険に晒される。

介入可能:運命を書き換えるか?(Yes / No)


「うそ、マジで!? ゲームのUIみたい! てか、少女が危ないって!? 5分後!? 急げ、俺!」

悠斗は反射的に「Yes」を選択。すると、頭の中に市場通りの地図が浮かび、少女が襲われる具体的な場所がピンポイントで示された。さらに、「盗賊の攻撃を回避させる」「少女を安全な場所に誘導する」といった選択肢が脳内に流れ込む。

「すげえ、これが『絶対予見』か! よし、なろう主人公っぽくヒーロー気取りで行くぞ!」


市場通りの騒乱

市場通りは、色とりどりの屋台や商人たちの声で賑わっていた。魚の匂いとスパイスの香りが混ざり合い、異世界らしい活気が溢れている。悠斗は人混みをかき分け、予見で示された場所――果物屋の前を目指した。

「いた! あの娘か!」

そこには、銀色の髪をポニーテールにした少女がいた。年の頃は17か18歳。薄汚れたローブを着ているが、透き通るような青い瞳と整った顔立ちは、まるで絵画のようだ。彼女はリンゴを手に持つ屋台の主人と値切り交渉中だった。

(間違いない、こいつが予見の少女だ! でも、盗賊はどこだ?)

その瞬間、市場の端からドカドカと荒々しい足音が響いた。黒いマントをまとった三人組の男たちが、剣や短刀を手に押し入ってきた。

「全員、動くな! 金目のものを出せ!」

市場は一瞬でパニックに。客が悲鳴を上げ、屋台の商人が慌てて逃げ出す中、銀髪の少女は呆然と立ち尽くしていた。

「くそっ、間に合え!」

悠斗は予見の選択肢を思い出し、少女を助けるルートを選んだ。頭の中で「少女を安全な場所に誘導する」が光り、具体的な行動が閃く。

「よっと!」

悠斗は少女の手を掴み、近くの路地裏へ引っ張った。少女は「え、な、何!?」と驚くが、悠斗は構わず走る。

「説明は後! とりあえず逃げるぞ!」

路地裏に逃げ込んだ瞬間、市場の方でドン!と爆音が響いた。盗賊の一人が火炎魔法らしきものを放ち、屋台が燃え上がっている。

「うわ、ガチのファンタジーやん……!」

少女は息を切らしながら、ようやく口を開いた。

「あなた、誰!? なんで私が狙われるって分かったの!?」

「えっと、俺、星見悠斗! 理由は……まあ、運命の導きってやつ?」

悠斗は適当にごまかしつつ、タロットデッキを握りしめた。すると、再び『絶対予見』が発動。


【絶対予見:追跡】

対象:盗賊団

予見内容:盗賊団は少女を追って路地裏に接近中。リーダー格は『星詠みの血』を狙っている。

介入可能:戦闘を回避するか? 敵を無力化するか?(Yes / No)


「『星詠みの血』!? なんじゃそりゃ! てか、この娘、ただの一般人じゃないのか!?」

悠斗は頭を抱えつつ、少女に目をやる。彼女は怯えた表情で、しかしどこか決意を秘めた目で悠斗を見返していた。

「あなた……もしかして、星詠み?」

「え、星詠み? いや、俺、ただの……って、待て、時間がない! 盗賊が来るぞ!」

悠斗は『敵を無力化する』を選択。すると、頭の中に具体的なビジョンが浮かんだ――路地裏の木箱を倒し、盗賊を足止めするイメージだ。

「よし、あそこ!」

悠斗は少女を背に庇いつつ、路地に積まれた木箱に体当たり。ガシャン!と音を立てて箱が崩れ、ちょうど駆け込んできた盗賊の一人が下敷きに。

「ぐわっ! なんだこいつ!?」

「今だ、走れ!」

悠斗と少女は再び走り出した。だが、盗賊のリーダーらしき大柄な男が、剣を振り上げながら追いかけてくる。

「その娘を渡せ! 星詠みの血は我々のものだ!」

「星詠みの血って何!? てか、俺、戦闘力ゼロなんですけど!?」

悠斗は内心パニックだったが、タロットデッキが熱を帯びるのを感じた。反射的にカードを1枚引くと、『塔』のカードが現れ、頭に新たな予見が流れ込む。


【絶対予見:反撃】

対象:盗賊リーダー

予見内容:リーダーは油断しており、10秒後に足を滑らせる。

介入可能:足元に水をかけて滑落を確定させるか?(Yes / No)


「マジかよ、こんなピンポイントな予見!?」

近くに水桶を見つけた悠斗は、迷わず「Yes」を選択。桶を蹴飛ばし、水を路地にぶちまけた。すると、盗賊リーダーが「うおっ!」と叫びながら見事にスッテンコロリン。剣を落とし、地面に倒れ込む。

「す、すげえ……! これが『絶対予見』の力!」

少女は目を丸くして悠斗を見つめた。

「あなた、ただの星詠みじゃない……! こんな正確な予見、見たことない!」

「へへ、俺もビックリだよ! とりあえず、逃げ切れたっぽいな」


少女の秘密

盗賊団を振り切り、二人は安全な広場にたどり着いた。少女は息を整えながら、自己紹介した。

「私はリリア・フォーチュナ。……ありがとう、助けてくれて」

「いや、いいって! 俺、星見悠斗。えっと、フォーチュナって、なんか高貴な響きだな?」

リリアは少し顔を曇らせた。

「昔はそうだった、かな……。私の家は没落貴族で、今はただの平民よ。でも、さっきの盗賊が言ってた『星詠みの血』……それ、多分、私のこと」

「え、マジ? それって何?」

リリアはローブの内側から、星の形をしたペンダントを取り出した。

「私の家に伝わる秘宝なの。星詠みの才能を増幅する力があるって。でも、最近、闇星会って組織がこれを狙ってるって聞いて……」

「闇星会? なんかヤバそうな名前だな……」

悠斗はタロットを握りしめ、試しにリリアの運命を占ってみた。すると、『絶対予見』が再び発動。


【絶対予見:運命の分岐】

対象:リリア・フォーチュナ

予見内容:彼女は世界の運命を変える鍵。だが、闇星会の手で滅びの道へ進む可能性も。

介入可能:彼女を保護し、運命を導くか?(Yes / No)


「うおっ、めっちゃ壮大な話になってきた!?」

悠斗は思わず叫んだ。リリアがキョトンとした顔で尋ねる。

「どうしたの? また何か占った?」

「いや、なんでもない! ただ、ちょっと運命がデカすぎるなって! なあ、リリア、これからどうするつもり?」

リリアはペンダントを握りしめ、決意のこもった目で言った。

「私は……この力で、家族の名誉を取り戻したい。そして、闇星会を止める。あなた、もしよかったら、一緒に……」

「え、俺!? いや、俺、ただの占い師アシスタントで……」

だが、リリアの真剣な瞳を見て、悠斗はゴクリと唾を飲んだ。脳内の『絶対予見』が囁く。

(ここで「Yes」を選べば、なろう主人公らしい冒険が始まるぞ!)

「……よし、いいぜ! 俺、リリアと一緒に運命を変えてやる!」

悠斗はタロットを掲げ、ニヤリと笑った。その瞬間、頭上に輝く星が一際強く光り、まるで彼らの未来を祝福するかのようだった。


To be continued

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