いちごミルクプリンセスを護衛せよ
天王くんのヘタレが確定した日から
特に何も進展も後退も無く迎えた土曜日の午前中は
ハンドボール部は体育館で通常練習
その少し先にあるテニスコートでは
数校集まっての練習試合があるらしく
他校の学生がたくさん来ていて賑やかだ
そう言えば玲央も
今日練習試合だって言ってな…
どこでやるか聞かなかったけど
玲央もあの中にいるのかな?
玲央とは貴腐人の三男で
赤星高校テニス部所属の3年生のことである
こっちの練習終わったらちょっと覗いてみようかな…
そんな事を考えながら
ハンドボール部の練習を眺めていると
なんだか殿崎くんの様子がおかしい
妙にソワソワとして落ち着かない感じで
体育館の外を気にしている
あ…ボール取り損ねた…
パスを回されたのにキャッチをミスるなんて珍しい…
殿崎くんどこか調子悪いのかな?
それとも天王くんとの事、引きずってるのかな?
それに司令塔の殿崎くんが腑抜けてるからか
顧問が私用で来ていないからか
全体的にダラケてる感じだし
誰も怪我しないと良いけど…
あ…今度はコケた…
んー良くないな…
貴腐人はピッと笛を吹き
練習を中断させる
「集合」
部長が号令をかける
ちなみに殿崎くんはチームの司令塔だが
部長ではない
部員が貴腐人の前に整列したのを確認して話し始める
「んーなんか調子が出てないっていうか…練習に身が入ってない感じがするので
ちょっと休憩にしましょう
10分で気持ち切り替えて!気合い入れて!」
「はい!」
返事は良いなぁ…
「殿崎はちょっとこっち来て」
「…はい」
「どうした?ミスが多いようだけど…調子悪い?」
「…すみません…何でもありません」
「そう…大会前だし怪我とかしたら大変だからちゃんとして…」
「はい」
「集中してチャッチャッと今日の練習終わらせましょう」
そう言うと殿崎くんの瞳がキラッと一瞬輝いた
「先生…それは集中してチャッチャッとやれば今日の練習時間が短くなると言うことでしょうか?」
「え?まぁ…それでも良いけど…気合い入れて質の高い練習が出来れば時間は多少短くとも…」
今度は殿崎くんの瞳がギラッと光った
「先生、言質取りましたからね!」
「え?あぁ…うん」
え?なに?
早く帰りたかったってこと?
休憩時間が終わると先程とは別人のように気合いの入った司令塔に引っ張られ
部員たちは濃厚で密度の高い練習をし、かなりの時短で練習を終えた
やれば出来るんじゃん…
殿崎くんは秒で帰り支度をしそそくさと体育館を後にした
殿崎くん…何か予定でもあったのかな?
まぁ別にイイけど…ね
さてさて
まだ少し部員が残っているけど
貴腐人もそろそろ行くか
「部長さん!体育館の鍵しめお願いね!」
そう言って体育館を出ようとすると
姫ちゃんに呼び止められた
「先生!」
「あぁ姫野くん、お疲れ様」
「ねぇ先生はこのあと何かある?」
「ん?テニスコートの練習試合を覗きに行こうかなと思ってるよ」
「僕も!!」
「そう…天王くんの応援?」
「ん?それもあるけど…」
「けど?」
「他の学校の生徒もたくさん来てるから見学したいなぁ」
姫ちゃんが他校生の中をうろうろするのはちょっと心配
今日はいつもの動く塊の人々はいないし
NOバリア状態…
これは護衛が必要な案件では?
「そう…じゃあ先生と一緒に行く?」
そう言うと姫ちゃんは満面の笑みで大きく頷いき
手に持ったトートバッグの中身を見せながら
「じゃあさ、僕サンドイッチ作ってきたからテニスコートの近くで一緒に食べようよ!ね?先生」
とランチのお誘い
「え?先生にもくれるの?」
「うん!いっぱいあるから」
「そっか、ありがと。じゃあそこの自販機で飲み物買って行こうかな…姫野くんは何が良い?」
「えっと…いちごミルク」
ぐっ
今日も眩し可愛いな…おい
いちごミルク…お似合いだぜ
練習中は鬼神のようにボール投げてたけど…
紅白模擬戦では相手チームボッコボコにしてたけど…
それもギャップ萌って事で…
うんうん
良き良き…
目尻が下がるねぇ
「テニスコートの近くにいい感じの木陰があるんだ
そこで食べようね!先生」
「そうね」
「先生はツナサンド好き?」
「好きだよ」
「良かった!今日はツナサンドとたまごサンドと野菜とハムとチーズのやつと…あと苺のフルーツサンドを持ってきたんだ」
「え!すごい姫野くんが作ったの?」
「そう!」
「へぇ〜姫野くんお料理得意なんだね」
「得意かは分かんないけど、料理するのは好き」
貴腐人は自販機で飲み物を調達し
他愛の無い会話をしつつ
ニコニコと笑う姫ちゃんと並んで
テニスコートへと向かったのでした
姫ちゃんを見つめる他校生を威嚇しながらね!




