persona
「理事長!」
「おー美月!どうした?」
中庭で用務員さんと一緒に薔薇の剪定をしている理事長を捕まえた
「ちょっと、生徒の事で相談があるんですが」
「今?」
「後でもいいですがなるべく早く…あと2年の学年主任と2年1組の担任も一緒に」
「ふーん…じゃあ…放課後理事長室な
主任とかにも声かけといて」
「承知しました」
理事長…麦わら帽子似合うな…
庭仕事も好きなんだろうか?
多趣味だからなぁ…
二人して薔薇を背中に背負っちゃってぇ
よく見ると用務員さんもかなりのイケオジなんだよな〜
理事長、採用のとき顔とかも見てるのかな?
…違うか
理事長✕用務員
うーん
ちょっとどうかなぁ
逆?
うーん
それも無いな〜
イケオジの妄想は慎重にしないと脳内で事故るからなぁ…
「美月?何ぼーっとしてんだ?」
ハッ
薔薇に囲まれた2人を邪な目で見てしまった!
「あ、いえ何でもありませーん!では、失礼しマース」
「?」
危ない危ない…
トリップしそうだった
さてさて授業に行かねば…
次は確か2年4組
このクラスには…
スパダリ予備軍
有馬くんと
真面目眼鏡ツンデレ美少年
酒井くんがいるからねぇ
それからそれから
ちょいヤンチャでヤンキー顔イケメンの
河合くんも外せない
どう脳内カップリングしようかと思案中…
ウキウキしながら2年4組へと向かう
4階まで階段を登るとその先の屋上へと続く階段の踊り場から何やらボソボソと声が聞こえる
物陰の向こうなので姿は見えない
そっと息を潜めて聞き耳をたてる
「ちょっ、よせよ…こんな所で…」
「ここじゃなかったら良いの?」
んっ!?
「んっ!んんうっ!………だから!そんなとこ触るなって!」
「声…出したら誰かに聞かれちゃうよ?」
「んっ…や…やっ…」
は、はわわわぁ!!
な、何事ですかぁ?
お耳に神経を集中!!
「ほらここも…こんなに美味しそう…」
唇をあわせ啄むような…
舌先を絡め合うような?
そんな音がする…
ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?
「んんぅ!っあんんっ!!やめっ!あぁっ!」
ドンっ!
「もう!よせって!」
バタバタッ
物音のあと1人が階段を駆け降りてきた
貴腐人はサッと柱の陰に隠れて
様子を伺う
バタバタと降りてきたのは…
護国顔イケメンハンドボール部司令塔
みんな大好き総攻め様(貴腐人目線) 殿崎雅人!
頬が紅潮し制服の襟元が乱れている
っ!
えぇー?
尾崎くんは柱の陰から覗く貴腐人に気付くことなく
そのままバタバタと階下へと走って行った
ひょぇ〜
な、生ですか?生のBのLですか?尾崎くんですかぁ?
総攻め様なのに…(貴腐人目線)
攻められてました?
あ、相手は???
あの声……は…確か…確か…
「せぇんせ!」
「ひっ!」
「盗み聞きですか?」
し、しまった!
驚きのあまり柱の陰から動けずにいた貴腐人に覆いかぶさるように圧をかけてきたのは…
継承顔爽やかイケメン、テニス部キャプテン
テニスコートの貴公子 天王隼人!
「えっ?えっと…聞いてません…」
「……」
天王くんはグッと顔を近付けて圧をかけてくる…
「……まぁ いいや…
あいつあと一押しなんだよね…ずっと好きだったんだ」
「ソ、ソウデスカ…」
「邪魔しないでよね?」
天王くんはニッコリと笑い更に圧をかけてくる
こ、これは…
テニスコートの貴公子?いや…帝王?いや魔王だろう?
……こっ怖っ
しかし…BLを守護する貴腐人としては
負けてはいられません
「もちろん!」
ニッコリと笑い圧を押し返す
天王くんは不敵な笑みをうかべ
少しだけ圧を弱める
「先生は…尾崎のこと好きとか言ってんのオカシイって思わないんだ?」
「あぁ…別に?人を好きになることは性別関係なく尊いことだからね
でも…」
「でも?」
「学校でイチャツクのはいかがなものかと…あと
カップリングに不満?というか…謎?があるよね」
「どういうこと?」
「天王くんと尾崎くんは二人とも姫野くんのことが好きなんだと思ってた…トライアングルラブ的な…」
思わず本音が出ると天王くんは
ふわっと笑って言った
「なんだよそれ?面白いな先生…
まぁ…俺にとって正雪は弟みたいなもんだよ…
あいつ変なのに絡まれる事が多いから守らなきゃとは思ってるけど、LOVE的な好きとかとは違うかな…尾崎も正雪のことは多分そんな感じ」
「ふ~ん…そっかぁ」
ちょっと残念…でも…
天王✕尾崎これはこれで…イイ!
そして近くで見る天王くんのご尊顔…イイ!
顔も…色気も…堪らんね!イイ!
ヤバい
顔が…緩む
「先生?何?どうしたの?ぼーっとして…」
いかん!またトリップしかけた!
最近、気を抜くとすぐコレだ…
男子高校は妄想の宝庫だからなぁ…
(いや、さっき見たのは…現実だけどな…)
「あぁっ!授業!行かなきゃ!」
「あぁ…」
「天王くんも!早く!教室行って!ほら!」
「先生!後でまた話そうな!」
天王くんはそう言い残し
爽やかな貴公子風に戻り颯爽と教室へと向かって行った
「……気が向いたらね」
ポツリと返事をしたが多分天王くんには聞こえてないだろう
貴腐人も授業へ向かわなければ…
平常心…平常心…平常心…
心のなかでつぶやいて
平静を装うように顔を作りスタスタと2年4組へと向かう
……が
さっき目の当たりにした光景がどうしても脳裏を横切る
ニヤけずに1コマ授業出来るだろうか???
教室へ入る前に大きく深呼吸をする
大丈夫…できる
教室のドアに手をかけ
腐った妄想に蓋をして教師の仮面をつけ教壇へとあがる
さぁ
50分間の授業の始まりだ