表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忠犬男子が懐きすぎて異世界までついてきた「件」  作者: 竜弥
序章:てんぱい最後の三日間
9/79

第9話 てんぱい、異世界へ

「…はっ!!!?」


 気が付くと俺は小雨の降る小高い丘にいた。


「えーっと?…あ、そっか…」


 クータンとの最後のシーンを思い出す。


 *********


 回想


「よ、よし、決めた!どうせ行くときゃ一人だ!ひと思いにやってくれ!」

「ふむ、心得た…ぬしよ、その場の中央に立ち身を委ねよ」


 言われるがまま愛着の湧いた長年の根城の中央に立つ。

 俺の目の前でクータンはスッと立ち上がり短い前脚を天井へ掲げる。

 なにやら呪文のようにぶつぶつと言っているが俺の耳では聞き取れない。


 すると急に足元に…なに?牛の模様の魔法陣?そういや、クータンって一応牛だった。


「なあ、…これ大丈夫?牛の世界とか行かない?」

「案ずるな…行先はすでに定められし地。我が手に揺らぎはない」


 いや、それ前脚だけどな?…なんてツッコんでる場合じゃなさそうだ。

 足元の牛の魔法陣は何重にも連なって、ぐるぐると回り出し、どんどん加速している。

 これは、いよいよ発動って感じか!?


「うおっ!俺、マジで行くみたいだ!玄太!!俺!行ってくるからな!!」

「青年よ、天命を背負い、いざ、かの地へ赴くがよい」


 魔法陣から吹き上がる光に包まれ、俺の視界が一気に白く染まる。

 いよいよかーーーって、待てよ?ガスの元栓しめたっけーーー


「うおおおおおおお!!…お?ぉおい!!仔牛ぃぃ!なんか腕が痛ぇぞぉぉぉ!!!」

「ふむ!失念しておったが、異能の付与により前脚が痛むぞ」


「さ、先に言えぇぇ………ひっ………」


 *********


「…そうか、俺、異世界に転移して!って、いちち…」


 腕にはジンワリと鈍い痛みの余韻が残る。


「てか、俺のは腕だっつーの!!」


 そのツッコミの宛先はここにもういない。

 フッとクータンの余裕ぶった顔を思い出す。

 それにしても、マジで来ちまったのか、…異世界に。


「…玄太、大丈夫かな」


 …いや、俺の今後の方がヤバいんだって!ってか小雨も降ってるし、傘でも持ってきた方が良かったか?とにかく今は、人の心配をしている場合ではないのは確かだ。


「んで!?ここはどこだっと!」

「よっ!」と立ち上がり、ぐるっと周りを一望する。


 空を見上げてみると、地球と同じ空…だよな?残念ながら青空は見えない。

 代わりに広がってたのは薄灰色の雲。小雨降ってるしそこは仕方ない。


 足元に目をやると、色とりどりの花が咲き乱れてて、雨粒がその花びらをきらきら輝かせてる。

 薄い赤、青紫、金色の縁取りまで入ってて、完全に宝石。地球だったら普通にこのまま売れそうだ!


 …うん、そんなことより。


 俺が立ってるこの丘から見下ろした先、さっそく気になる施設がどーんと俺の目に飛び込んでくる。


「お!?あれは…農場じゃねえか!?しかも、めちゃくちゃデカい!!」


 気が利くじゃねえか!と思いつつ、俺は丘を下ってデカい農場に一直線に向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ