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忠犬男子が懐きすぎて異世界までついてきた「件」  作者: 竜弥
第6章:神の器の奮闘記 ~王国復興編~
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第80話 玉座奪還作戦 前半

【アグリスティア王宮・離れ】


 離れに近づく大勢の足音。


「……あれ?外がなんか騒がしくなってきたっす!」


 玄太が小声で立ち上がる。物音に敏感になって、耳がぴくぴくしてた。俺もそっと立ち上がりドアに近づく。


「将軍たちかのぉ!?」


 王女たちは父上のそばに立って、こっちを見ている。


「お父様にしては早すぎる。……敵?」


 アリスが不吉な事言うから、玄太も俺も一気に緊張してなぜか身をかがめる。


 そしてガチャ、と重たい扉が開いた。


「戻ったぞ!!」


 ラクターさんの威勢のいい声。……だけど、ただの帰還報告じゃない。明らかに何か持って帰ってきた男の声だ。


 そしてその背後から、ぞろぞろと現れる人影。


「おぉぉぉ、ぬしたち……!」


 王様が立ち上がった。その目には涙がジワッと浮かんでる。


「セス……!セスではないか!生かされておったか!」


「へ、陛下……!!無事でなりよりです!」


 ぼろぼろの軍服の男が膝をついた。その後ろにも、顔に傷を持つ厳つい騎士や、長身の老人、白髪の若い騎士。おそらく、かつての王国の重鎮たちが、続々と現れる。


 玄太が小声で「うおぉ……!」って呟いてたけど、俺もその気持ち、わかる。


「レミス卿……ルード老……わしは……わしは、ずっとお主らに合わせる顔が……!」


「やめてくだされ、陛下。こちらこそ、お力になれなかった非礼を」


「すべてはあの妃とゲドの陰謀!見抜けなかった我らに非がありゆえ」


 次々と膝をつく側近たち。王様はもう、泣くの堪えてるのが丸分かりだった。


「よかった……これでこれで戦える……!」


 リゼリア王女もぎゅっと拳を握りしめてた。


 リシェル王女は、あまりに人が多すぎて「わわわわ!」って感じで俺の後ろに隠れてる。いや、君を守ってくれる人たちだぞ?


「さすがお父様……いや、ラクター将軍!!でっかく連れてきたわね!」


 アリスが笑顔でそう言った。


「うむ。アリスもよくここを守った」


「でも……ここからが本番ですよ!隊長」


 コンバインーさんが静かに口を開いた。


「でも……ここからが本番ですよ、隊長!」


 コンバインさんが静かに口を開いた。


「だな。ラクター将軍よ、なにか策はあるのか?」


 セス卿が考えるようにラクターさんに問いただす。


「正門には陽動を仕掛け、裏口から玉座へなだれ込み奪還する。」


「おぉぉ!!!!」


 忠義の騎士たちが沸き立つ。


「……みんな、待って!」


 その声で、全員がビタァッと静止した。


 アリスだった。肩を震わせながら、顔は真っ青だ。


「アリス……何が視えた?」


 ラクターさんが不安げに声をかけると、アリスはぎゅっと目を閉じて吐き出すように言った。


「その作戦……裏口はダメ。罠?みたいなものがあるのかも」


「……なっ!?」


 その場が一気に凍りついた。


「裏口の先の仕掛け。中から扉を封鎖され、袋小路になる構造?……玉座の間に届く前に、みんな」


 声が震えていた。


「アリス、確かなのか?」


「……ええ、お父様。通路で足止めになってるみんなが見えました」


「ううむ。確かに裏口からの回廊は構造が簡素だ。閉じ込めるのも簡単かもしれん」


 セス卿の声に空気が重くなる中、王様が椅子から立ち上がった。


「で、では、どうすればよいのじゃ!正面から突っ込むのは自殺行為じゃぞ」


「くそおおおおお!!目の前なのに!窓からの侵入は目立つし、どうしましょう!隊長!!」


 コンバインさんの気合むなしく全員がその場に固まってる。俺はもちろん……うん!何も思いつかない。


「……いや、方法はあるぞ」


 ざわめく空気の中、いかにも知恵者って感じのルード老が静かに口を開いた。


「あえて王宮から“脱出した”と見せかけてみてはどうじゃ?」


 セス卿がすぐにうなずいている。


「敵の注意を正門や外壁に引きつけ、その隙に“本命”を別ルートで狙うという事か!?」


「なるほどな。しかし、正面と裏口以外に通じる通路はあるのか?」


 ラクターさんの問いに、レミス卿が口角を上げた。


「ある。中央塔の上階から、玉座の真上。あの天窓……」


「天窓!?……たしかに上から来るとはだれも思わん」


 上から行く、という恐怖の作戦に俺と玄太は顔を見合わせて絶句。


(お、おい玄太。この人たち高いところから降りても無傷なタイプか?)


(そうっすね…おれらは凡人なんでやべえっすねぇ)


(でも、盛り上がってるし。この雰囲気に「怖い」という理由で水はさせねえな)


 俺たちがビクビクしてる中、リゼリア王女がリシェル王女に思い出したように言った。


「ねえ、リシェル!あなたよく王室から中央塔の最上階へ行ってたでしょう?どこから行ってたの?」


「あ、あのぉ……中央塔なら、王宮西側の書庫から……。あの道は誰も使わないから…」


「なんと!でかした、リシェル王女!」


「では王宮西側の書庫へ一度引き、中央塔を登って玉座の真上から……!」


 ……おいおい。まじか。本気で塔の上からドロップイン?俺、マジで高いとこ苦手なんだけど。


「てんぱい。このルートなら成功って前提で進んでるけど、足、滑ったらどうすんすかね?」


「……だな。でも言うのはやめとこうぜ」


 はぁ、とは言え。俺たちの心配は現代人にしか分からないんだよな。


「それにしてもラクターよ。未来視とは、すごい娘を持ったものだ」


「……うむ。自慢の娘だ」


「も、もう!お父様ったら!」


「本当ですわ。わたくしたち王女付きの側近に迎えたいくらいです」


「こ、光栄ですって、もう……やだなぁ。」


 おほっ!顔が赤くなってる!照れるアリスはなかなかレアだな。


 でも──


 この流れは、きっと間違ってない。


「よし、決まりだな」


 ラクターさんがみんなを見渡しながら、低く告げた。


「偽装撤退からの、書庫潜入。そこから玉座を空から奪う“天の奇襲”だ」


 その瞬間、兵たちの目が一斉に光を帯びた。


「アグリスティア奪還には、ふさわしい舞台じゃの」


 と、まるっこい王様まで天窓からの侵入にニンマリ。


(この王様ですら行けるんなら、俺たちでも行けるだろ……うん、大丈夫)


「……へぇ、……この王様って見た目に寄らず、……動けるデブなんすかね…?」


「こら……玄太!……っし!!」


 小声で言ってるけど、ミミみたいな能力者がどこにいるかわからんからな。


「よし、策は万全。みな、行くぞ!」


 ラクターさんが一声だけかけると、忠義の側近たちが無言でうなずき、武器を手に立ち上がる。


「……てんぱい!」


「うん、玄太!」


 玄太と目を合わせ、拳を軽く打ち合わせた。


「いざ、王宮西側の書庫へ!!」


 こうして、俺たちは勢いよく扉を開けた。

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