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忠犬男子が懐きすぎて異世界までついてきた「件」  作者: 竜弥
第6章:神の器の奮闘記 ~王国復興編~
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第79話 勇士たちの再会

【アグリスティア王宮・東棟への路】


「かつて、騎士団の詰所として使われていた頃と変わっていなければ、奥の牢へ通じているはずだ」


 ラクターさんの低い声が、夜の石壁に沈むように響いた。


 その背には、無言でうなずくコンバインさん。完全に現役時代の顔に戻ってる。


「隊長、見張りです!5……6人です」


「よし。俺の弓の陽動でおびき出して数を減らすぞ」


「分かりました!ゴブリン狩りのアレっすね」


「……っふ、なつかしいな」


 二人が静かに壁の影へ消えた。


【アグリスティア王宮・東棟裏】


 王城の外壁沿いにひっそりと佇む東棟に到着した二人。


 闇の中、矢羽が風を裂いた。


 ピシュッ──


「っな……!?今の音は……?」


「誰かいるのか!?」


 見張りの兵士たちがざわめいたその瞬間、ラクターさんの矢が再び飛ぶ。今度は足元、わざと石畳に当たって甲高い音を立てた。


「東だ!東側に何かいるぞ!」


「二人で確認に行け!」


 警備兵の一部が持ち場を離れ、緊張が崩れた。


 その一瞬を逃さず、コンバインさんが陰から飛び出す。


「ぐはぁっ」


「二人!今です、隊長!」


 残る兵の三人が、何かに気づいたようにこちらを振り返ったが、振り切るより早く、ラクターさんの肘が喉元に突き刺さる。


 無言で崩れる兵士。まさに、無駄のない一撃。さらにコンバインさんがもう一人の背後に回り、首筋をとって押さえ込む。


「おっしゃ、牢鍵ゲット!……騎士団仕込みの寝技、まだ忘れてませんよ!」


「……よし、あとは中の確認だ」


 ラクターさんが静かに扉を押し開ける。古びた木扉の軋む音が、やけに長く響いた。


「気配なし。コンバイン!一気に牢まで駆けるぞ」


「っは!!」


 巨漢二人が風のごとく兵舎内の奥まで走り抜ける。


「隊長、奥に灯りが。人影も……」


「うむ。間違いない。あれだ!」


 ラクターさんの目が、牢の最奥にある鉄格子を捉える。


 そこには、ぼろぼろの衣を纏いながらも、背筋を正したまま座る男の姿があった。白髪交じりの短髪の巨漢。軍服の破れた裾からは、まだ誇りが滲んで見える。


「……セス卿だ。間違いない」


 ラクターさんが囁くように言った。


 そして玉座奪還の鍵を握る、忠義の者たちとの再会の時が迫っていた。


【アグリスティア王宮・東棟・牢前】


「セス卿……久しいな!」


 ラクターさんの低い呼びかけに、鉄格子の中の男がゆっくりと顔を上げた。


「……その声……まさか……!?」


「お目覚めいただきたい。玉座奪還の時が来た」


 沈黙の後、牢の中の大男はゆっくりと立ち上がった。


「ラクター……お前が来るとは、思いもせなんだ……」


「立てますな?……セス卿」


 ラクターを見たセス。自然とその顔付きが戦士の表情に変わってくる。


「ふむ。折れかけていたが、お前の顔を見たら力が湧いたぞ!」


「っふ……王の側近になって腕は鈍ってはおるまいな?」


「馬で駆ける足は鈍ったが、剣を振る腕は残っておるわ!」


 コンバインさんが格子を破るため、兵士から回収していた鉄鋏を取り出す。


「他に、生存者は?」


「……奥だ。レミス卿と、ルード老!下の階には若い連中が数十人いる!」


「よし……!」


 バチン、と錠が外れる。鉄扉が重く開くと、ラクターさんが中に踏み込んだ。傷だらけの騎士、レミス卿とぶっとい眉の学者肌、ルード老と無事再会。


「おぉ、ラクター!まだ……我らの国は終わっておらんということか?」


「相変わらず……カッコいいところ持っていくのぉ!将軍」


「っふ!貴殿らも変わらんな」


「……隊長!下に行って全員、連れてきます!」


「ああ!頼んだ!」


 薄暗い牢の奥で、静かに立ち上がる影がいくつもあった。


 玉座は、ただの椅子ではない。王を支える者たちがいて、初めて意味を持つ。その仲間たちが、今ここに再び、立ち上がろうとしていた。

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