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忠犬男子が懐きすぎて異世界までついてきた「件」  作者: 竜弥
第6章:神の器の奮闘記 ~王国復興編~
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第74話 玄太の戦略 前半

 屋敷の地下、普段は使われていない書物庫が、今は仮設の作戦会議室と化していた。


「なんでこんなところでやるんだ?」

「うむ、グロウやミミら子供達には聞かさられんからな」


(なるほど!ミミもませてはいるが、まだ子供なんだ)


 丸テーブルに集まるのは、俺、アリス、ラクターさん、ノーグさん、コンバインさん。もちろん、玄太もちゃっかり俺の隣にくっついて座ってる。


「ではそろそろ本題といこうか」


 ラクターさんが静かに開口した途端、部屋の空気がスッと引き締まる。


「目の前に迫る帝国本隊。我々には時間がない。だが…」

「黙って待つ気は、さらさらないんすよね?」と、玄太がニヤリと笑う。


 その笑顔を皮切りに、テーブルの上に、手書きの作戦案がドンッと叩きつけられた。手描き。しかも、ちょっとしたイラストつき。


「誰が描いたんだ、これ」

「俺っす!」


 玄太が元気よく挙手。やけにクオリティ高いイラスト付きの作戦案。


「作戦は二本立てっす!」


 まるでゲームのイベント画面みたいな吹き出しまで添えられてる。


「一つは正面突破じゃなくて、奇襲で城を揺さぶる。もう一つは、それを補強する心理戦。てんぱいの力を“怖がらせる”ことで、敵を動かせなくするんすよ」


 …うん。絶対、日頃のゲームの成果だなこれ。


「玄太君!?君は、かつてどこかの国で軍師か指揮官などをしていたのか?」


 ノーグが真顔で首をかしげる。


「う~む。この若さでこの戦略眼…立派な男だ」

「え、えへへ!てんぱい、褒められちまいました…!」


 玄太は頬を赤らめて照れ笑い。でもそのわりに、内心すっごくドヤってるのがバレバレだ。


「俺が寝てる間に、すげえな」


 だけど…素直にすげぇと思う。現代では玄太の休日ってゲーム三昧だったけど、その手の知識も無駄じゃないんだな。……というか俺も知らなかったんだけど、お前のゲーム好きのジャンル、広すぎねえ?ラクターさんが手元の案を読みながら、思わずうなっていた。でも、アリスとコンバインさんは無言で資料を見つめていた。


 で、肝心の2大作戦案。


「で、最初のやつ。これは?」

「作戦1は【先手必勝・奇襲型】っす!」


 玄太が広げた紙の右上を指差す。


「敵の城に、こっちから仕掛けに行きます。ラクターさんとコンバインさんは城の構造も熟知してるはず。しかも、まだ内部には王国派の人も……」

「……確かに、まだあの城には心ある者も残っているだろう」


 ラクターさんが深くうなずいた。


「目的としては王族の救出っす!」

「なるほど。帝国の正当性そのものに揺さぶりをかけるってことか」


「敵の本陣が揺らげば、周囲の町民も手を挙げる人が出る可能性があるわ」


 アリスが冷静に補足を入れる。


「ただし、成功率はギリギリ。そこで作戦2っす!」


 玄太がバッと次の紙を出した。そこには“ピンポイント豪雨”とか“神罰”と書かれた奇怪なメモ。


「作戦2、それは【心理操作・脅し型】っす!これは、てんぱいの話の時に出てた作戦なんすけど…」

「脅しって事は、まさか帝国に対して?」


「はい!帝国がてんぱいを手に入れてやろうとしてること、こっちがやっちまうって寸法っす」

「干ばつか、大雨か。実際にやる必要はないが、“狙われている”と感じれば、一気に慎重になるだろうな」


「この場合、帝国民全体にこの話を流出させて国全体を動揺させるっす!」


 真面目に説明されると、妙に説得力があるのが腹立つ。


「でも、脅しだけで効果あるのかしら?」

「うむ。この作戦は長期戦ありきだからな。その気になったらアルカノアなんて大軍につぶされかねん」


「そこで、これっす!」


 玄太がイラストつきの最後の紙を掲げた。

 何やら“神の器に逆らった村の末路”みたいな物騒な漫画が描いてある。


「農場に神の器が降臨したってウワサを、あえて外部に流すんす!」

「おいおい、もう神の器は勘弁してくれよ」


 俺の心配をよそに玄太は説明をつづけた。


「実際はただの脅しっすから!下手に手を出すと世界中に神の怒りが降り注ぐって!」

「なるほど。民間伝承に乗せることで、帝国全体の動きを間接的に封じるわけか」


 ラクターさんが真面目にうなずく。


「神の器の話は、先日農場にスパイが紛れ込んだ時にすでに伝わってるだろうから信じる可能性が高いわね」

「ただし、やりすぎると“でっち上げ”だとバレる。仕込みは慎重に」


 アリスの補足に、玄太も「もちろんっす」と頷いた。


「使い方次第で化ける作戦だな」


 俺も資料を見ながら、そう言わずにはいられなかった。


「上の連中が“神の怒り”を本気で恐れなくても、兵士や民衆の不安が広まれば、組織はゆっくり崩れていくわね…」


 その言葉に、テーブルの周囲がしんと静まり返る。


「よくここまで描いたな玄太!一体どこで軍学を?」


 コンバインさんが、半ば感心したように呟いた。


「サウザンドウォーズⅣっす」

「お前がハマってた戦国のやつか!!」


 ご存じのとおり、玄太のゲーム好きは度を越していた。崩壊王国なんてマルチゲームでは俺もドはまりして、二人でよく夜通し遊んだっけ。


「いや、あれは名作っすよ。アプデで軍馬の足音も変わるんすよ?」

「な、なんの話だそれは」 


 コンバインさんは怪訝そうな顔をしていたが、テーブルの他の面々は誰も笑わなかった。玄太の提案は、冗談や遊びに見えて、その実、確かな説得力と現実味があったからだ。


「やってみませんか!?俺たちで、帝国に噛みつく戦い」


 玄太が、まっすぐに俺の目を見て言った。あいつの目は、本気だった。ひたすらまっすぐで、まっすぐすぎて、そのバカみたいな真剣さに、俺はどれだけ救われてきたか分からない。


 このバカ、ほんと…やっぱり、すげぇよ。


「名付けて、神の怒りプロジェクト!始動っすよ!」

「ああ。派手にいこうか。神の器らしく、な!」


 みんなはうなずきながら、もう一度資料の地図に目を落とした。無茶な計画かもしれない。そんな事はみんな分かっていた。でも俺たち人間は、こうやって希望を見つけて、前に進んでいくんだ。

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