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忠犬男子が懐きすぎて異世界までついてきた「件」  作者: 竜弥
第5章:神の器の奮闘記 ~スカイリンク封印編~ 
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第66話 女王サマにご挨拶!

 トプン!!と二人して飛び込むと、水の中のはずなのに、息苦しくない!??


 むしろ、まるで空気の中をゆったり泳いでいるような、不思議な浮遊感が身体を包む。


「……お…?…おお?」


 息もできるし、声が出せる!?


「なんだこれ!喋れるぞ!」


 その声に、息を止めて鼻を摘んでいた玄太も気づく。


「あ……本当っすね」


「……おい、玄太。手、ちょっと離していいか?」


 すると逆にギュウゥと手を握る力がさらに強くなる。


「やっ、だめっす!一生離さないでください!」


 んぐ!俺の手、あとで痺れて動かなくなりそう。


 そのまま俺たちは、ゆるやかに沈み……いや、落ちていった。


 下のほうには、柔らかな光の層が広がっていて、まるで水の中に道があるみたいだった。


「う、うわぁ……」


 ふっと意識が浮いたような感覚とともに、俺たちはふわりと地面に降り立った。


 見上げると、水面が天井みたいに頭上でゆらゆらしていた。


「はえ〜〜…な、なんだここ……」


「ここ、本当にさっきの水の中なんすかねぇ?」


「うーん。どっちかっていうと、水の中から異空間にワープした感じかな……」


 先に到着していたアリスが、きょろきょろと辺りを見回しながら言った。


「お、アリス。無事だったか?」


「ええ、問題ないわ!ところで男子二人、遅かったわねぇ?」


「あ、いや、心の準備ってやつ?」


「ふふん、びびってたんでしょ?」


 ……やかましい!と思いつつも、俺と玄太は目を逸らして、そっと手を離した。

 

(ふう。手がジンジンするぜ)


 そして目の前には、水晶みたいな建物が……浮いてる!?地面に建ってるわけじゃなく、水の上にふわふわと並んでいる。


「……街、だな?」


 アリスと顔を見合わせながらあんぐり。


「街っていうか精霊さんたちの集落、よね?」


 透明な道の上を、小さな光の精霊たちが行き交ってる。中には子どもらしい姿も多くて、なんか、水の中の幼稚園みたいな雰囲気だ。


「お〜い!!」


 そんな中、例の精霊がドヤ顔で戻ってくる。横には、さっき会ったミルルちゃんも。


「ちゃんと着いてきたじゃない。意外と根性あるのね!」


「ご招待、ありがとうございます」


「ここからまだどつか行くのか?」


 当たり前のことを聞く、俺。


「行くに決まってるでしょ!」


「ウォル様ぁ~、この人たちはお客様ぁ?」


「ん~……ま、そんな感じかな。入り口まで案内したの、ミルルでしょ?」


「うんっ!あのね、てんぱいっていうんだよ!さっき声かけてくれたの!」


 ミルルがちょこんと俺の横にくっついてきた。

 え、なにこれ、天使?この子、かわいすぎんだろ。


「あ、てんぱいの隣!!ん…まぁ、そっち側は今だけ貸しっすよ」


 玄太がむすっとしながら、俺の反対隣にぴったり張りついてくる。おい、ちっちゃい子にまで張り合うな。


「ふふ、なんだかにぎやかでいいわね」


 ウォルは笑って、ミルルの頭をぽんぽんとなでた。


「じゃあ、さっさと案内するわよ。着いてきて!」


「ついてきて!」


 ウォルがくるっと身体を翻すと、透明な道の上をスイスイと進んでいく。俺たちは慌ててそのあとを追いかけた。


「ここ、ちゃんとした建物もあるんだな……」


 横目に見えるのは、透明な壁で囲まれた家っぽい何か。中では小さな精霊たちが泡で遊んでたりしてて、なんか平和な光景だ。


「ほんと……街っていうか、村みたいな……」


 道の周りには、水草みたいにゆれる光の柱があって、泡が上にのぼってく。それはまるで、水中に浮かぶ天の川、なんてな。


「こっちこっち。ちゃんとウチの女王に挨拶してもらわないと。勝手に山を晴らした罪人としてね!」


「女王!?んで、罪人って!!?」


 玄太が「やっぱ帰りたいっす」と小声でつぶやいたけど、はいスルー。


「大丈夫よ。優しい人だから。雷落とされるくらいで済むかも」


「怖いわそれ!!!」


 そんな軽口を叩き合いながら、俺たちは街の奥のひときわ目立つ建物へと向かうことになった。


 そこは、水晶のように透き通った、静謐な建物だった。まわりでは精霊たちがふわふわと泳ぐように動き、水音がかすかに響いてくる。


「おおおお……」


 玄太が完全にぽかーんと口を開けて見上げていた。


 中は外よりさらに静かで、天井にはゆれる光の帯。壁の向こうを、魚のような影がすいーっと通っていく。


「ここが……精霊の女王の家?」


 俺がつぶやいた瞬間、ウォルがぴたりと立ち止まった。


「着いたわよ。ちゃんと礼儀正しくしてよね?」


 くるっと振り向いて、ちょっとニヤッとした顔を見せるウォル。この人、油断ならねぇ。


「女王サマって、どんな人なんすか……?」


 玄太の小声に、ミルルがニコっと笑って言った。


「えっとね~、ウォル様のママ!」


「え、じゃあこの人、王女サマなの!?へぇぇぇ」


 俺と玄太、息ぴったりで叫んでしまった。


「そうよ?もっと敬っていいのよ?」


 ウォルがどこか誇らしげに胸を張る。


「やれやれ、お姫様にしてはおてんばだ」


「てんぱい、それ死語っすよ」


「うるへー!」


 ……とか言ってたら、ウォルがいきなりキリッと振り返った。


「……さあ、入って」


 ウォルのひと声で、俺たちは無意識に背筋をしゃんと正した。


 中はほの暗くて、ひんやりしていて、どこか水の底みたいな空気。しんとした静寂の中、ひとつの声が響いた。


「……あら。お客様?」


 水に溶けるように澄んだ声。その声の主は、水が渦を巻いて自然に形作ったような玉座の中央にいた。


 水でできたようなキラキラしたドレスをまとってて、The女王って感じ。


「人間がここまで来るなんて、珍しいこともあるものね」


 その声にはトゲはなかったけど、視線を細めてどこか探るような感じ。


「えっと……はじめまして。俺たち、雨を……というか、あの、結果的に止めちゃってて……」


 俺がしどろもどろになってると、ぽんっと肩を叩いてくれたアリス。「落ち着け」って目が言ってる。


「ええ。分かりました。よく来てくれましたね」


 女王は静かに歩み寄ってくる。


 その一歩ごとに、足元の水がふわっと花のように咲いては収まっていく。


「私はセレヴィア。この山の守り手にして、雨の律を束ねる者です」


 あっ、なんかすっごい立派な肩書ききた。


「私は、アルカノア農場のアリスと申します」


「俺は天貴!で、こっちは…」


「てんぱいの相棒、玄太っす!!」


「……ふふ。にぎやかなのは嫌いじゃないわ。さあ、話しましょうか」


 こうして、俺たちは雨の律の本丸に、正面から踏み込んでいくことになった。

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