表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忠犬男子が懐きすぎて異世界までついてきた「件」  作者: 竜弥
第4章:神の器の奮闘記
52/188

第52話 てんぱいの背中 後半

 丸二日間眠っているらしい俺は、ようやく永い眠りから覚めようとしていた。


「う、う~ん…玄太ぁ…朝かぁ?」

「て、てんぱい!!」


「え?うそ!本当に起きた!?」


 驚きと喜びが混ざった声を上げ、みんながベッドに駆け寄ってきた。



#__i_d7fdecae__#



「てんぱいっ!目、覚めたっすか!?ねぇ、見えてるっすか!おれのこと分かるっすか!?」

「…え?なに…お前、さっきからずっと叫んでたぞ…?」


 そう返したその一言に、玄太の目がうるうるモード。


「うお!!マジで起きたぜ!す、すげぇぞ玄太!」

「天貴さんっ!心配しましたよ!」


 俺が目を覚ますと、全員が俺を見て喜んでいる。おいおい、そんな大げさな。


「って、何この空気。みんななんで泣いてんの?」


 俺はキョトンとした顔でみんなを見渡す。


「天貴が二日間も目を覚まさなかったからよ!もう、死んじゃうかと思ったんだから!」


 アリスが思わず声を上げ、シーダは涙をぬぐいながら笑っていた。そんなみんなの様子にようやく俺の頭も、少しずつ現実を理解し始めた。そして聞かされたのは、自分の背中の痣が、いろいろ引き起こしてたって話。俺の魔力が変色し始めてること。で、その影響で倒れていたらしいってこと。


 そして…。


「玄太ぁ」

「なんすか?てんぱい!」


「お前が苦しんだのは、俺のせいだったんだな」


 その言葉に、玄太の目には洪水が押し寄せる。


「て、てんぱぁ…そんな顔しないでってば。おれが勝手にやらかしちゃっただけで!」


 玄太のことは何があっても守るって決めてたのに、その俺が玄太を傷つけたのかよ。


(はぁ…情けなさすぎて、顔向けできねぇ)


 思わず、ベッドの上で背中を向けた。今の俺の顔、きっと見せられるもんじゃない。


「グス…てんぱい」


 背中から聞こえる玄太の声。


「おれ…てんぱいの背中、嫌いっす!」


 玄太のか細い声が、背中にズキッと突き刺さる。


「だよな…怖いよな、俺…」


 そうつぶやいた瞬間だった。玄太がいきなり、俺の肩をガッと掴んで、ぐいっと俺の体を正面に引き戻してきた。


「ちがうっす!」

「てんぱいの背中見てると、どっか行っちゃいそうで嫌なんす」


 やめてくれよ。そんな顔されたら、何も言えねぇじゃんか。玄太は、まっすぐで、泣きそうで、それでも俺の目をじっと見つめてくる。


「だから…だから、ずっとおれの方を見ててください!!」


 その言葉が、胸にストレートで刺さった。返す言葉が見つからない。


「ね!?てんぱい!」


 で、俺の口からとっさに出たのは、情けなすぎる一言。


「お、お…ぅ…」


 何だよこれ、マジで。玄太は全力でぶつかってきてくれたのに、俺ってほんとヘタレ。そのとき、背中の刻印がポゥッと、ほんのり脈動したのを感じた。でも、不思議といつもの痛みはなかった。


 むしろ…ちょっとだけ、暖かかい気がした。


 *****


 続きは二人でやってね、という謎の言葉を残して、アリス達はクータンを連れて部屋を出て行った。クータンはファミリぃと共にいるとかなんとか言ってたけど、甘乳パンひとつであっさり陥落。今ごろリビングで甘乳タイムしてるはずだ。


 いや、てか…続きとかねえからっ!ツッコミながらも、俺は一瞬だけ玄太の顔を見てすぐに視線をそらした。


(玄太、なんかソワソワしてんな?)


 そして、ドアの向こうが静かになったと思ったら矢先。


「…よいしょっと」


 ベッドの端がきしんで、玄太がニッコニコしながら乗ってきた。


「おいおい、狭いだろ」

「この前のお返しっす。今度はおれが、てんぱいに添い寝する番!」


「いや、いいって!てか、俺は寝てただけだろ?」

「おれが必要なんす!」


 そう言うと同時に俺の肩に、ひょこっと玄太の頭が乗っかる。こいつ、テコでも動く気ないな?


「じゃあ…少しだけだぞ」

「も~、分かってますって!」


「……ったく」

「えへへ」


 ――やばい。


 何がやばいって、こっちは変な汗が出てくる。


「な、なぁ?ちょっとこの部屋暑くないか?」

「さっきまで、てんぱいはずっと冷たかったんすよ?この手、おれが温めなきゃ」


 そう言って俺の手をギュッと握ってくる。


「…じゃ、仕方ねえ」


 必要ないってフリをして、俺の手は玄太の手のひらに無抵抗。手をぎゅっとされると指が勝手に閉じちゃうのって、反射行動だよな?


(まぁ、確かにあったけえ…)


 はぁ。それにしても、今日は色んな事が分かった。背中の痣の事や、魔力の色のこと、それと…添い寝って、してあげるより、される方が恥ずかしいってこと。


 でも、さ。そんなことより。玄太の手は、いつも通りあったかくて。


「ねむっ…」


 俺が小さくつぶやくと、


「……っすね」


 玄太の返事が、まるで俺とリンクしてるみたいに返ってきた。今日はこのまま寝ちゃっても、いいよな?なんて思いながら俺はゆっくり目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ