表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忠犬男子が懐きすぎて異世界までついてきた「件」  作者: 竜弥
第1章:忘れ物の日々
11/188

第11話 忠犬、閃く

 クダンは三日で死ぬはずだったのに、そのクータンは今日も隣で甘乳パンをもぐもぐと、いつものように生き生きとしていた。


 そして玄太はというと。


「あ゛あ゛あ゛……てんぱいが消えていくぅぅぅ……」


 枕をぎゅっと抱きしめながら、布団の上でゴロゴロ転がっていた。


 布団や枕にほんのり残るてんぱいの匂いだけが、いまの命綱。それを頼りに、なんとか生き延びてきたというのに、その残り香も風前の灯火である。


 玄太はまさに今、崖っぷち状態。


「にしてもさぁ……」


 横目でチラッと見ると、甘乳パンに夢中な小さな仔牛が視界に入る。


「よく飽きないっすねぇ、それ」


 クータンはそのままパンをもぐもぐしながら、ふっとこちらを見てこう言った。


「ぬしも毎日、鳥の四肢を煮込んだ異国の汁を飽きずに食しておろう」


 いつものクータン節で言い放ち、もぐもぐタイムを続行。


「チキンカレーな!安くい美味いんす!クータンも食えばわかるっすよ!」


 クータンは一度だけ目を細めて、鼻でフンと笑った。


「我はこれで十分……否、これこそが至高じゃ」


 三日を過ぎてからというもの、クータンはやけにしゃべるようになった。まるで死ぬ運命から解放された途端、口のチャックまでぶっ壊れたように。


「でもなんでクータンって、生き延びれたんすかねぇ?」


 玄太がボソッと疑問を口にすると、クータンはもぐもぐしたまま、ちょっとだけ首をかしげた。


「我は神託を告げるのみに在る存在。それ以外の背景は知る由もなし」


「ふ〜ん」


 玄太は布団にゴロンと横になり、スマホを手に【クダン 三日】と検索する。


「……ネットだと、五日とか生きる事もあるとか書かれてるんすね」


 五日どころか、とっくにそれ以上生きているクータンを見る限り、運命の日が来るのはまだまだ先になりそうだ。


【件・くだん……家畜などから突然産まれ、数日で死ぬ。その口は、予言をするためだけに存在し、死ぬまで食べ物などは口にしない。しかし、予言は必ず的中すると言われ……】


「ふぅん……ん?」


 画面をスクロールしていた玄太は、とある一文に違和感を覚えて手が止まった。


【死ぬまで食べ物などは口にしない】


「…………え?」


 ゆっくりと横を見る。


「むぅ……」


 そこには、甘乳パンの最後のひとくちを、名残惜しそうに眺めているクータンの姿が。


「あの、クータン?」


 玄太が小さく手を上げて声をかけると、目だけでこちらを見る。


「今、おれ、すっごい衝撃の事実に気づいちゃったんすけど……」


「ぬしの腹がポテッとしておる件か?」


「違いますぅぅぅ!そんな事は前から知ってますぅぅ!!」


 って何言わせんすか!っと、スマホの画面を突きつける玄太。その画面には、【死ぬまで食べ物などは口にしない】の一文がしっかり表示されていた。


「クータンが生き残った理由って……」


 クータンはパンを持つ手をピタッと止めて、耳を傾けている。


「甘乳パン食いまくってるおかげかもっす!」


 ふたりの間に沈黙が走る。


「ふむ、それは合点がいく見解じゃの」


「でっしょぉぉぉ!!!」


 玄太は、謎の大発見をした学者のように拳を握りしめた。はしゃぐ玄太を見てクータンまで嬉しくなってくる。


「ぬしがせっせと甘乳パンを運んでくれたおかげかの」


「いや~これ、てんぱいにも早く教えたいっすよ!」


 そう言って、ぱっと笑顔になる玄太だった。しかし5秒と持たずに、はしゃいだ気持ちがスンとどこかへ引いていく。


「……てんぱい、今ごろ何してんすかねぇ」


 部屋の空気が少しだけ、しん……と静まった。


 すると、もぐもぐしてたクータンが、ぽそっとつぶやいた。


「……では、見てみるかの?」


「は?」


 その瞬間、玄太の体が時間停止でもしたかのようにピタッと止まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ