プロローグ
★プロローグ
ごはんを食べることが、好きだ。
おれはごはんを食べることが好きなんだ。
大好きだ。
愛してるんだ。
そんなの一番知ってるって、きみはすぐに言うだろう。
いつもみたいに思いっ切り呆れるだろう。
それから、いつもみたいにおれの背中を蹴り飛ばして、それから、それから、呆れ顔ではあるけど。
――それでも、宇宙の誰よりもきみがとても綺麗に笑うんだってことは、おれがやっぱり宇宙の誰よりも一番良く知っている。
おれ、ずっときみに何でも言ってきたよ。
きみに叱られちゃうから黙ってたくだらないことも、隠して引っ込めたかった言葉も、いっぱいいっぱい、きみはおれを引っ叩いて蹴りつけて、おれから簡単に、迷いごと引きずり出してくれたよ。
でも、ほんとは全部は言えてないんだ。
おれの膨らみ続けてきたお腹の中に、気付いてないだけで隠してたものがきっといっぱいおれにはあるんだ。
ずっと、言えなかったことがあるんだ。
きっとずっと言いたかったけど、おれは言えなかったんだ。
◆
――コックピットの中で、ビッグなハンバーガーに齧り付く。
おれはこんな時でも、こんなおれのままこうして人生最大の危機に立ち向かっている。
まるまると太った大きな身体、メタボ体型を隠す為に着ている緩めのモッズコート。
手入れなんていつも忘れているボサボサの髪。
――きみが作ってくれた、おれだけの為の赤ぶち眼鏡。
ハンバーガーをがぶっと咀嚼して飲み込む。
喰らい尽くせ、おれの愛する食べ物たちを。
焼き尽くせ、生きる為に得たカロリーを。
その力で――おれは今から、おれの愛する宇宙を救う。きみがいつも守ってくれた、この愛機で。
おれ、ごはんを食べることが大好きだよ、愛してるよ、ほんとだよ。
ごはんをお腹いっぱい食べることが、おれの幸せ。
だって、食べることは生きることだから。
そこがどんな地獄でも、ちゃんと食べれば生きれはするから。
おれは、おれが一番言いたいのは。
おれは、ずっと、ずっとこの地獄を、きみと――。
「――改めて、降り臨め! ビッグバンダー・『トヨウケ』! そして――行こう! どこまでも、おれと一緒に!」
愛機の名前を叫び、操縦桿の役割を果たすレバーを握り締める。
――全てが終わったら、きみをおれの全部で抱き締めて、言いたいことも全部言うんだって誓いながら。