10年後ーー 絶対両想いな両片想い
10年後ーー
「オクタヴィア、少しいいかな?」
ニコッと柔らかく微笑むアイメリック殿下
「きゃー!王太子殿下よ……!ほんっと素敵!」
「物語の王子様だわ…っ」
「なんって儚くて美しいの……!」
ご令嬢達と、
「……っすきだ!」
「あぁ、俺の麗しい王太子殿下……」
私の策略が功を制したのか、
ご令息達の歓声が鳴り響く。
学園の殿下専用執務室に案内され、腰をおろす。
殿下とわたし、殿下の側近パドラの3人だけ。
「……ギオが会いにこない。」
輝く可憐な王子様♡ 優しく穏やかなアイドル♡
の仮面を外した殿下が、凍てつくような表情で生気を手放す
「殿下………
…つい3日前にお会いしてましたよね?」
「丸2日だぞ?!オクタヴィア……!」
まるで振られたのだというかのような迫真のさみしそうな表情に、思わず納得してしまいそうになる
「今までも2日くらい空くことはあったでしょう?」
「違うんだっ……
あいつ、結婚の許可がおりたって。
で、結婚したら妃を狙ってくる勢力がいくつかあるから、全部潰してくるって。ニコニコしながら行っちゃった…」
……!!!
やっと結婚!!!!おめでとう!!ありがとう!!
そう、なんとこの10年、
私が期待したよりも遥かに深くて重い愛を育んだギオとアイメリック
ギオは私よりも巧妙で重い根回しを重ね、
アイメリックを妃にするために人生を捧げていた。
原作よりも華々しい戦果や偉業を重ね、
その権威は皇帝をも上回る超人……いやもう、人じゃなくて神の領域かもしれない…というような存在にまでなっていた
…ん?
にしても、アイメリック殿下のこのリアクション、
なんか変だな…
結婚確定・殿下のために敵を排除してくる
なんてきいたら、
「俺のために冷酷なギオ…はぁほんと好き。」
とか言いつつ目をハートにしてによによと惚けるに違いないのに。
というか、いつもの殿下はそうなっている。
アイメリックが放心したような冷たい真顔のまま、
つーっと涙を流す
「ア、アイメリック殿下……?!」
「…あー俺、許せないなぁ。ギオを俺から奪ったゴミ。」
……ん?!
「ギオが俺のこと遊び相手にしちゃえるくらいの
本命ってどんな奴なんだろ。あーー殺す。」
……んん?!!
殿下は、ポロポロと涙を流しながら、
おぞましい覇気をたずさえている
「殿下…!皇太子殿下は殿下を本当に好…っ」
言いかけて、殿下に遮れる
「…はっ、好き?…あぁ、うん、だろうね。
でも2番目以降だったってことでしょ。
俺だけじゃないのも無理なのに、本命じゃないとか気狂うわ。」
ご、誤解してるー…!!!
「これ以上、ほんの僅かでもギオが盗られないように、最速で殺さないと。」
じゃ、俺いくね
とニコッと殺気満々の微笑みを向けられ、
一瞬固まってしまった隙に、
殿下は行ってしまった。
ギオのことだ。
誤解もといて甘々に懐柔するのは分かりきっている。
「…みにいこ。」
無実の人が手違いで殺されやしないか、
という不安半分、
漫画などでいう1番胸熱な両片想い的な展開を拝みたいという期待半分……いや、大半を胸に、
アイメリックをこっそり追いかけた。