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乙女ゲームの世界観を捻じ曲げてBLを嗜みたい


私、オクタヴィア・ケッセルが

前世の記憶を取り戻したのは、7歳のとき。


国内外問わず、王族が度々降嫁する由緒正しきケッセル公爵家の令嬢として、同じく7歳の王太子殿下の御学友として王城に招かれたときのことだ。


ローズクォーツをより繊細に加工したような儚い瞳、

さらりとしたホワイトゴールドの柔らかそうな髪、

どんな女の子やお人形よりも可愛らしく整った顔立ち、着飾った姿がテディベアのように愛らしい


そんな “ 彼 ” の名前きいて、全てを思い出したのだ。



そう、ここは、

漫画化もされ界隈では誰もが知る、

乙女ゲームを題材としたTL小説の中なのだ。


そして私は、この愛人をやっていそうな妖艶な見た目の通り、悪役令嬢だ。

ダークブラウンの巻き髪に、炎のような瞳、

扇情的な長い睫毛に涙ぼくろ。

この小説を知らない人が転生しても、悪役令嬢だ!と気づくだろう。


この小説も含め、悪役令嬢モノが大好物だった私は知っている。


悪役令嬢に転生した者は、例外をみたことがないレベルで全員が断罪回避を目標に動き出す。

そして、頭がいいのを売りにしているわりには、

恋愛面では不可解なほどの鈍感力をみせつけ、

目立たないように謙虚に生きたいと語りつつ、

現代日本等の先人の知恵を我がもの顔で披露し、

わりと自己中な考えの元、シナリオをぶち壊し、

ちゃっかりという名の必然な幸せを手にして人生謳歌しちゃってるのだ。


そう、前世の私は、

当て馬的存在が報われる裏をかいたような展開が好きだったはずなのに、みればみるほどヒロインを超越した自己中チート野郎にみえてきてしまったのだ。


なのでそんな自分の信条を曲げず、

私はあくまで当て馬のまま終える気満々。


ヒロインとヒーローの二人をくっつける!

となんやかんや言って、むしろ健気さアピールにしかみえない中途半端な行動も勿論しない。



そう決め込んだ、その日の翌日。

私は出会ってしまったのだ。

ヒロインこと、メルチェ・ルーニー子爵令嬢に。


この女が、まぁーー酷かった。



ベビーピンクの長い巻き髪に、クマのような小さなお団子をふたつ造り、瞳と同じ黄色の小花も添えて、

そんな髪型が控えめにみえるほどのフリフリとしたドレスや7歳には似合わないような派手な装飾品。

まるで プリキュ〇のような見た目。

漫画や挿絵でみた清楚で可憐なヒロインの姿とは違っていた。

そもそも、7歳時点では孤児院で慎ましく暮らしているはずのヒロインが、何故かすでにルーニー子爵家の養女になっていて、尚且つ我がケッセル公爵領の孤児院に足を運んでいること自体が原作の展開とはまるで違っているのだ。


これは、もしや…

という予想は的中した。


調べさせたところ、

我が領地の孤児院で暮らしていた過去をもつ攻略対象のニール目当てで何度も通っているらしい。


ニールを攻略したいのかと思いきや、

彼女はコンタクトのとれる攻略対象すべてに

デートを申し込んだり、熱烈にアピールしたりと、

かなりのませがき……いや、恋愛脳の少女ということがわかった。

わがままで横暴な態度が目立つという報告からみてもわかる通り、これはヒロインとしての強制力とか、

設定資料などでも語られていない黒歴史などでもなく、私のように転生者。


しかも、かなーり好き勝手やってくれちゃってます。


この日、私は新たに決意した。


この物語、すでに壊れてしまっている。

じゃあ私も好き勝手やりますよ?

物語の完璧なる当て馬として、ではなく、

私の推し達をくっつける完璧なる当て馬として…!


許してくれ、愛しの推し達。

こんなヒロインの承認欲求のために消費されるよりも、超弩級のスパダリ恋人と幸せになるほうが、

絶対あなた達にとっても薔薇色の人生になると思うの…!

あなた達のこと、絶っっ対に幸せにするから…!



だから、だから、

腐女子である私の趣向に付き合ってください……!





私の推しその①である、

テディベアな王太子殿下こと、

アイメリック・ロイセル・ロシュフォール殿下。


柔らかい微笑みで老若男女を虜にする、隙のない紳士的な美男子で、穏やかで優しいアイドルのような存在。

そんな彼は、恋をすると激しくヤンデレ化する。

そしてヒロインがハーレムエンド or 他の攻略対象を選択すると、最悪の場合、呪術をつかいヒロインの相手を皆殺しにしてヒロインを洗脳する。

そして国を私物化し、ヒロインとの遊興にのみ(ほう)ける歴史上稀に見る暴君として名を馳せる。

最良の場合でも、彼は狂い優秀な家臣達を次々に処刑して廃位されてしまったりと、あの転生ヒロインに手綱を握らせてしまったが最後、彼は確実に不幸になる。




そして、推しその②、

隣の皇国・ラトの皇太子にして戦場の英雄、

ギオ・ギルダード・ラト・ラシュレー殿下。


色っぽく端正な顔立ちからは想像できないほど

圧倒的な強さを誇る、戦の生きる伝説。

両サイドにかき上げられた扇情的にセットされた黒髪が少し、煌めく銀の瞳をかすめ、美しい顔を引き立てる。耳に垂れる棒状のピアスも、ふたつ並ぶ涙ぼくろも、何もかもが計算し尽くされたように完璧で妖艶。


そんな彼は、恋をすると一途に溺愛するスパダリ…

言葉を変えると、根回し完璧・激重執着化する。

そもそも彼は、小説の舞台となった乙女ゲームでは滅多に登場してくれない最高難易度の攻略対象で、

アイメリックのルートを絶望的な展開になるまで進め、国が没落寸前まで落ちぶれてはじめてギオが姿を見せる。

ギオに国を奪われ、ヒロインも彼に心変わり…

ここから大どんでん返しをみせてアイメリックとハッピーエンドになるのが小説での展開。

もちろんギオは死んでしまう…。


転生ヒロインはハーレム希望、

つまりアイメリックが絶望的になることが確定。

つまり彼が登場して一波乱あることも確定。

でも転生ヒロインの思考回路じゃ、ギオも更に最悪な展開へと進んでしまう可能性大。



だったらもう…!

この最強スパダリイケメン達が恋人になったほうが

絶対幸せよね?!

転生ヒロイン、あんなんだったし…!

という免罪符を手に入れた私は、

推し♂× 推し♂が恋人として幸せになる為の世界にすることを固く決意したのだ。


絶対、絶っっ対に幸せにするので、

腐女子としての(さが)が働いてしまっている自分に都合の良い計画なことは、どうか許して…!

幸せにするから……!!!






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