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戦闘員への変貌

 番号で呼ばれる毎日。

 練習メニューは運動部の連中なら難なくこなせそうなメニューなんだろう。

 だが、ここに集められた連中の多くはそうではない。

 特に引き籠りだったヤツはまったくと言って良い程、身体が出来ていない。

 走らせれば、100メートルも走れない。

 だが、走れないはここでは通用しない。

 常に監視され、練習を途中で投げ出せば、その場で折檻される。

 教官からの暴力は当たり前なのだ。

 唯一の救いは彼女達は感情で暴力は振るわない。

 職務として、淡々と、暴力を振るい、強引に練習させる。

 出来なければ、出来るまでやらせる。

 結果として、初日に練習を全て終える事が出来たのは日付が次の日になってからだ。

 そんな日が続いた。

 当然、ストレスから教官に歯向かおうとするヤツも相次いだが、無駄だった。

 ある者は心を病んで、一切、動こうとしなくなった。

 どうするのかと思ったが、1日、猶予を与えられ、それでも心を閉ざしたそいつは強制退学された。

 458番

 会話をした事は無かったが、最初から今にも死にそうな顔をしていたのは覚えている。

 彼女は教官達に連行されて、運動場の一角にある支柱に縛り付けられた。

 相当な暴力を受けたのだろう。身体中にケガをしていた。

 彼女は涙を流しながら、何かを言おうとしている。

 「おい453番。これであいつを殺せ」

 教官1は453番にナイフを渡した。渡されたナイフを見て、彼女は蒼褪めた。

 「おい・・・殺すって」

 「言葉通りだ。これからどうしたら人が死ぬかの実習だ」

 「で、出来ないよ」

 ヤンキーだった少女でもさすがにナイフで人を殺すのは躊躇った。

 「やれ。あいつはここでは役に立たない。つまり、社会のゴミだ。生きている価値がない」

 教官1は冷静に告げた。

 「む、無理だって」

 そう言った453番を教官1は蹴り飛ばした。

 地面に転がる453番を他の教官も手にした警棒で叩く。

 悲鳴が上がる。だが、教官達の手は止まらない。

 「命令に背くとこうなる。453番。解ったらやれ」

 フラフラになりながら、453番は立ち上がった。そして、落ちていたナイフを拾う。

 「早くやれ。可哀そうだと思うなら、すぐに殺してやれ。長引くと痛い上に苦しむ」

 453番は嗚咽を漏らしながら、458番を刺しまくった。

 458番は欠番となった。

 私たちは9人になった。


 殺される。それが現実になり、より一層、皆は訓練に励んだ。

 1か月もすると、何とか、メニューをこなせるようになった。

 気付くと自分の細い身体もそれとなく太くなっていた。

 戦闘訓練も本格的に開始されつつあった。

 それまでは座学で、兵士が覚えるべき事が叩き込まれた。

 今度はそれを実践する。

 野外での訓練となった。

 筋トレなどが免除された事が皆、嬉しかった。

 だが、その代わりに30キロの背嚢を背負わされ、手には模擬銃が握らされる。

 ヘルメットなども含めると装備は50キロを超えた。

 身体全体に重りが乗っている感じだ。

 「走れ走れ!遅い奴は追加で走らせるぞ」

 教官達は遅い奴の尻を警棒で叩き、動けなくなった者を足蹴にする。

 どんな事をしても5キロを走らせる。

 誰もがゴール地点で倒れ込み、中にはゲロを吐いている者も居る。

 だが、それで終わりではない。

 「匍匐前進だ。全ての匍匐前進を50メートルづつ、やれ」

 身体は鉛のように重い。

 それでも殴られるよりマシで懸命に匍匐前進を行う。

 体中はボロボロになった。

 汚れ切った身体を僅か3分のシャワーで洗い流す。

 足りない者は教官が高圧水銃で洗い流す。

 服はランドリーに回される。さすがにそれまで自分達ではやらなくても良かった。

 新しい服が用意されており、それを着て、営舎へと戻る。

 食堂では栄養は考えられているだろうが、味は二の次にされた不味い飯がある。

 これを5分で食べさせられる。だが、疲労で口に入らない。

 結果、残したままとなる。

 自分のスペースは二段ベッドの中だけ。

 そもそも私物の持ち込みは無いので、それで充分なわけだが。

 皆が、ベッドに入った瞬間に寝てしまった。

 この時まで、殺された458番の事を思い出す事は無かった。


 こんな事が1週間も続いた。

 不思議な事にこんな生活にも慣れるものだった。

 出来なければ殺されると思っていたのは最初だけ。

 三日もすれば、そんな恐怖は無くなっていた。

 多分、自分では分からないが、もう、引き籠りの頃の顔では無くなっていた。

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