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引籠りからのサヨナラ

 中学1年の時にイジメが原因で引籠りになった。

 親からも見捨てられ、とうとう、中学卒業まで、不登校だった。

 高校受験もしてないから、無職の始まりだ。

 そんな4月1日の朝。

 チャイムが鳴った。

 別に気にすることは無かった。

 もう、教師とかそんなのが来ることも無いから。

 だけど、階段を上がる足音がする。

 そして、それは私の部屋の前で止まる。

 ガチャガチャ

 ドアノブが回される。

 鍵がされてるので、開かない。

 そして、開ける気など無い。

 どうせ、親だろう。

 何を言われても黙っている為にヘッドホンをした。

 暫く静かにしていれば、諦める。

 そう思ってた。

 ドン

 激しい音と共にドアが破壊された。

 想定外の事だった。

 いくら何でもドアまでは破壊しない。

 そう思っていた。

 「小松夏海だな?」

 現れたのは屈強そうなお姉さんだった。

 どこかの制服らしきスーツ姿だが、細身に思える肢体とは別に見える手足は筋肉でゴリゴリだった。

 「は、はいぃぃ」

 夏海は怯えて返事をするしかなかった。

 彼女は左手を前に突き出す。手には1枚の紙。

 「社会適性法に従い、お前を矯正処置とする」

 社会適性法

 最近、施行された法律だ。

 引籠りや反社会的な者を矯正する法律らしい。

 細かい事は知らないが、世間やネットでは一時期、騒がれていた。

 突然のことに驚きしかなく、夏海はただ、呆然と彼女の顔を見ていた。

 「両手を前に出せ」

 そう命じられて、両手を差し出すと、手錠がされた。される時はかなり手首が痛いことだけは解った。

 両親は不安そうに見ている。助けてと言い出したかったが、すでに不信感しかないので、声に出なかった。

 「行くぞ」

 女に引き摺られるように歩かされ、ジャージのまま、表に止めてあったワゴン車の後部座席に放り込まれる。

 中には同じ位の年齢の少女達が手錠をされて居た。

 女は助手席に座ると、車は走り出した。

 後部座席と前部座席の間には鉄板で仕切られていて、後部座席の窓は全て鉄板で覆われていた。

 車内を照らすのは一つのルームランプのみ。

 少女達は皆、黙っていた。

 夏海も黙った。

 そして、今、起きてることを考えた。

 自分は罪を犯してない。

 ただ、引籠っていただけだ。

 犯罪者では無い自分に対する矯正とは?

 学校みたいな場所で強制的に勉強や資格を取らせて、社会に適応させる?

 確かに自分一人では立ち直れなかった。

 これは良い機会なのでは?と思う。

 親から離れ、自立して、立ち直る。

 うん。だとすれば、何を不安に思うことがあるか。

 夏海はそう、自分を鼓舞した。


 数時間が過ぎた。

 車は何処かに停まり、前で車を降りる音がした。

 スライドドアが開いた。そこには自衛官のような迷彩服を着た女性達が立っていた。

 自分を部屋から連れ出した女性は彼女達に指示を与えている。

 「新しい豚共を洗い、服を与えて、並ばせろ」

 豚⋯とは私のことだろうかと夏海は思った。

 迷彩服の女性達は手荒に夏海達を連れ出す。

 車外に出るとそこが学校のような場所だとわかる。

 そして、手錠が外され、連れて来られた場所はシャワー室。

 仕切りは無く、壁に設置されたシャワーヘッド。

 「ここで、お前等を洗浄する」

 いきなり、裸にされた。

 抵抗する者には、平然と暴力が振るわれた。

 脱いで、シャワーを浴びるのかと思ったら、使い捨ての液体石鹸が渡され、一列に並ばされた。

 「頭と身体を洗え、これで流す」

 これとは高圧洗浄機だ。明らかに人に使っていい代物じゃない。

 だが、容赦なく、高圧洗浄機で水を掛けられるので、慌てて、身体を洗った。

 それから身体を拭くと、灰色一色の作業場みたいな服が渡される。胸元には番号の札が縫い付けてある。

 夏海の胸には「541」。

 周りの子は概ね連番のようだった。

 「着替えたらこっちだ!」

 次の部屋は床屋のようだった。

 バリカンを持った女性達が待ち構えている。

 夏海は嫌な気がした。

 それは的中する。

 少女達は次々とバリカンで五分刈りにされる。

 見事な手際で夏海の頭は一分で丸刈りにされた。

 泣く暇もなく、少女達は校庭へと連れ出され、並ばせられた。

 夏海を連れてきた女性が少女達の前に立つ。

 「私の事は教官1と呼べ。ここでは胸にある数字がお前等の名前だ。自分の事を他人に話す事を禁止する。話したら、重罰が与えられる。ここでは全て教官に従え。徒党を組むのも、イジメもここでは罪だ。他人の悪口を言っても処罰する。そして、ここから出るには、優秀な成績を残し、認められるか。死ぬかだ。生きて出たければ、努力しろ」

 彼女はそう言うと、別の女性に代わる。

 「私は教官2だ。それぞれに担当教官が着く。教官の指示に従い、組み分けをする」

 すると教官達が、並ぶ少女達を怒鳴りながら、分ける。夏海は教官1が連れて行く。

 教官1の前には夏海を含め、10人の少女が居た。

 「ここには540から549までが居る。お前等は一蓮托生だ。頭数が減れば、今後、苦労する事になる。互いに助け合え。それが上手いやり方だ」

 教官1の言葉に誰も理解が及んでいない。

 「細かい説明はこれからするが、お前等がこれからやることは⋯戦争だ」

 戦争⋯その言葉だけが少女達に強く残る。

 

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