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(ほぼ私小説)最近の暴落がつらいので書いた短編 リアルバージョン

 3年前、将来への漠然とした不安から、貯金の一部を投資に回すことを決意した俺。最初は、SNSや投資系メディアで話題の個別株に飛びつき、一攫千金を夢見ていた。しかし、現実は甘くなかった。

 ある時は、期待していた新製品の発表が延期になり、株価が暴落。またある時は、クソみたいな決算を出して、連日S安にまで追い込まれる。そんな経験を何度も繰り返すうちに、個別株投資の難しさを骨身に染みて感じた。

「もう個別株は懲り懲りだ……」

 そう悟った俺は、個別株投資から足を洗い、優待や配当金の魅力のある数銘柄を除いて、全ての個別株を売却した。そして、残りの資金を、S&P500や全世界株式(オルカン)などの、分散投資効果が期待できる米国株ETFに全振りすることにした。

 この戦略変更は、功を奏した。米国株市場は、IT企業を中心に好調を維持し、俺の保有するETFの評価額は右肩上がりに上昇。さらに、歴史的な円安も追い風となり、資産は加速度的に増えていった。

「この調子なら、10年後には念願のマイホームも夢じゃないかも」

 そんな明るい未来を思い描いていた矢先、日銀が為替介入を実施したというニュースが飛び込んできた。急激な円安進行を抑えるための措置だが、市場関係者の間では、ある程度予想されていたことだった。

「まあ、想定内だな。それに、円高に振れるのも悪いことばかりじゃないし」

 円高になれば、海外旅行や輸入品の購入が割安になる。それに、円安が進みすぎた反動で、一時的に円高に振れることは、むしろ健全な調整とも言える。

 しかし、その後の展開は、俺の楽観的な見通しを打ち砕くものだった。

 とある大統領候補が、ドル高に対する批判的な発言を繰り返し、市場に「ドル安誘導」とも取れるメッセージを発信し始めたのだ。これにより、将来ドル安政策がとられるのではないかという思惑が加速し、円高が加速。俺の保有する米国株ETFの評価額は、為替差損の影響でみるみるうちに目減りしていく。

 例えば、1ドル150円の時に購入したETFが、1ドル130円まで円高が進んだとすると、単純計算で13%以上の損失が発生する。保有しているETFの額が大きければ大きいほど、その損失額も膨れ上がる。

 さらに、円高の影響は日本市場にも波及し、日経平均株価は下落の一途を辿る。俺が保有する数少ない個別株も例外ではなく、含み損は日に日に拡大していく。例えば、3000円で買った株が、2500円まで下落すれば、16%以上の損失だ。

 米国株ETFの含み益も、円高と株価下落のダブルパンチで、日に日に減っていく。気がつけば、利益が半分以上吹き飛んでいた。

 数週間前まで順調に増えていた資産が、ここにきて一気に目減りしていく現実に、俺は言葉を失った。

「まさか、こんなことになるなんて……」

 俺は、目の前の現実に打ちのめされ、呆然とすることしかできなかった。それでも、借金を抱えるような事態には至らず、市場から退場せずに済んでいるだけ幸運なのかもしれない。

「まあ、まだ慌てるような時間じゃない……のかなぁ」

 俺は、自分に言い聞かせるように呟き、重苦しい気持ちで証券アプリを閉じた。画面には、真っ青な数字が並んでいた。それは、俺の投資の失敗を突きつける、残酷な現実だった。

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