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068 魔術とスキル2

 ノエルのスキルの問題を確認するため、そして発動しているスキルを解除するためにも、俺の魔力をノエルの固有回路へと流し込んでいる。

 そして魔術やスキルは術式に魔力を循環させることで発動する。

 必要なのは魔力という名のエネルギーだ。

 そこに誰のものかという識別は存在しない。


「先生は他人の固有回路にも魔力を流し込めるんですよね。そのまま魔力を循環させてその人のスキルを勝手に発動することってできないんですか?」

「うん? どうだろうな。理屈の上ではできそうではあるが」

「できそうなのか……」


 三嶋の疑問に答えてみたが、なぜかノエルが引き気味だ。

 他人のスキルを勝手に発動できるというのは確かに脅威かもしれないが、魔力を流し込むにしてもノエルにしていたように体を触れさせていないとできない。それに相手だって、他人が操作する魔力という異物をすんなり受け入れることはないだろう。ノエルの場合は必要だから意識して受け入れてもらっていただけだ。

 仮にスキルを発動させることができたとしても、発動したスキルを操れるかもまた別の話だ。そもそもどんなスキルなのか知らなければ、発動したかどうかすら気づかない可能性がある。


「ということで、とりあえずやってみるか」

「いやいや何が――ということで――なんですか? 何で僕の肩に手を置いてるんですか?」

「工平。がんばりなさい」

「ミシマ。無理はするなよ」

「ちょっと二人ともなんでちょっと遠ざかってるの? 僕で試すことは決定なの?!」


 矢早銀とノエルは早くも距離を取っていた。

 三嶋の『生産者』はモノづくりのスキルなので、少なくとも周囲に危険は及ばないと思うんだがな。


「先生。何で僕なんですか?」

「そりゃあ危険な実験を女性で試すわけにはいかないだろ?」

「危険なんですか。軽い気持ちで聞いただけなんですけど」

「ふっ。恨むなら自分の浅はかさを恨むんだな」

「そんな気め台詞っぽく言われても!!」

「工平。今までありがと」

「やめて。矢早銀さんのその優しさはいろんな意味で本当に怖いから」

「ミシマ。短い付き合いだったな」

「ノエルさんまで?! 僕死ぬの? そんなに危険なの?!」


 冗談はさておき、実際のところノエルのスキルを調べるときや解除するときにも魔力は流し込んでいるので、それ自体に大きな危険はないだろう。

 それよりも発動したスキルを上手く扱えるかという方が怪しい。

 それがノエルや矢早銀のスキルで試さない理由だ。ノエルはスキル自体が彼女に負荷をかけるものだし、矢早銀に関してはそもそもどんなスキルなのかが判明していないからな。

 その点、三嶋のスキル『生産者』は構造を理解していないとモノを作り出すことはできない。仮に暴走したとしても不発に終わるか、運よく何かを作り出せても構造が単純なものくらいだろう。


「ほら、うだうだ言ってないでやってみるぞ」

「……はぁい」


 まだちょっと不安そうにする三嶋の肩に手を置いてゆっくりと魔力を流し込んでいく。

 目に見えているわけではないので、魔力で手探りに少しずつ固有回路の形を把握していく。


 ムム……。

 これはなんとも、ややこしいな。

 まだ三嶋の固有回路の全容を把握できたわけではないが、俺やノエルの固有回路とは明らかに勝手が違うのがわかる。


「なにか問題でもあったんですか?」

「いや、そういうことではないんだが。三嶋、悪いんだがちょっとスキルを使ってみてくれないか」

「わかりました。では、いつものバットを作ってみます」


 三嶋が『生産者』を発動する。

 今は木材などは持っていないので三嶋の魔力をそのまま変質させて材料にしていく。

 繊維のように編み込まれた魔力が踊り、それが寄り合うようにしてグリップの方からゆっくりとバットが形作られていく。

 

 そういえばこうして物質化した魔力は拡散しにくいらしい。

 まあ一度物質化すると魔術なんかには使えないので、その物質としてしか用途がないのだが。

 少し意識が逸れてしまったが元に戻す。

 三嶋がスキルを発動してから固有回路に魔力が循環している。循環はしているのだろうが――。


 ふむ、これは何とも難解だ。

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