006 異世界対策会議・前半
「――異世界転生?」
テンション高く語るトニー先生の言葉に思わず聞き返す。
「ああ訂正デス。ワタシたちは死んでイキカエッタわけではないですカラ、転生じゃなく転移デスネ。異世界転移デス」
「いや、トニー先生。そこに引っ掛かったわけではなくてだね」
「転生だか転移だか知りませんけど。そもそも、その異世界なんちゃらってのは具体的には何なんです?」
「ふむふむ。異世界ってことは、ここは別の世界ということなのかい?」
トニー先生が訂正するが、先生方から口々に疑問が飛び交う。
「Oh、先生方はあまりマンガやラノベは見ないデスカ? 物語の主人公がある日いきなり異世界に転移してチートや現代知識を駆使してムソウするお話デス。カクユウ私もそういう日本のサブカルをもっと楽しみたくて移住したクチデス」
「トニー先生のご趣味はともかく、この異世界と言うのはどういったところなのですか?」
大げさなリアクションを交えながらの熱い語りに、理事長は冷静に軌道修正を図る。
「……さあ?」
「さあって、トニー先生。あなたが心当たりがあると言ったんでしょう?」
とぼけた風でもなく返された言葉に、天地先生が若干の苛立ちと呆れを滲ませる。
「ノンノン。ワタシの心当たりはこの状況がマンガやラノベでよく描かれるイセカイテンイのようだということデス。しかしながら異世界と言ってもイロイロ。文化も生活も世界情勢も、二ホンにいてカイガイのことがほとんどワカラナイのと同じデス。もしかしたらこの世界にはマホウやチョウカガクなんてものがあるかもシレマセン。ですが、実際にドンナトコロなのかは、これから調べてみないとワカラナイデス」
トニー先生の言うことももっともだ。
現状わかることは学園の外が別世界になっていて、そこには人類も存在するということ。城があり兵士と思しき連中がいるということは、国家や何かしらの組織のような仕組みは存在するのだろう。
それでもその説明を飲み込む様に静かにうなずいて、冷静な声色で決定事項を告げる。
「とにかく、早急な対応が必要です。この世界のことが分からないならば考えうる可能性を考慮して行動するしかありません。ですので、その可能性を色々知っているであろうトニー先生には私について来てもらいます」