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036 赤紙依頼

 サウールの街に着いて二日目。俺たちは朝から冒険者組合に来ている。

 生徒たちの捜索もあるが、俺たちがこの街で生活するためにも何か依頼を受けないといけないからな。


「だからって、どうしてこっちに並ぶんですか」

「そりゃあ、なんかお姉さんが暇そうだったから」

 

 昨日と同じお姉さんのいる受付で依頼についての話を聞きに来たのだが、とても迷惑そうだ。


「仮に私が暇そうだったとしても、それは仕事をサボっているからであって、冒険者の方をお待ちしているわけではないんですよ」

「それは職員として大丈夫なのか?」

「だいたい今日は他の窓口も空いてるじゃないですか」

「まあ、空いてるな」


 昨日はごった返していた他の受付も今朝はかなり空いている。昨日出た赤紙依頼の影響で、多くの冒険者が昨日から出張っているらしい。

 なんでも凶悪犯罪者である鬼人族の捕縛依頼なのだとか。捕縛と言っても生死問わずという物騒な話だ。鬼人族というのも戦闘種族みたいな感じらしいし、本来なら限られた実力者しか依頼を受けないはずなのだが。

 依頼にはサウール周辺での目撃情報という形で書かれていたらしく、捜索範囲が広いために多くの冒険者が協力しているらしい。まあ人探しなら人数が多い方が良い。見つけたら実力者に伝えて捜索の報酬をもらえば、危険は少ないだろうしな。


 人探しねえ……。俺たちも生徒捜索の依頼をだせば良いんじゃないか思ったが、さすがに生徒たちを目立たせすぎるのは良くないか。

 まあ地道な聞き込みと足を使った捜索で行くしかないな。ということで冒険者組合のお姉さんにも話を聞いてみる。


「うーん。最近見かけるようになった若者ですか。冒険者組合にはいろんな人が来ますし、毎日新しい人も訪れますからね」


 冒険者組合は世界をまたにかける巨大な組織だ。その地域ごとに活動する際は申請が必要だが、別の地域に活動拠点を移すことも珍しくないし、それこそ世界を旅する者だっている。

 サウールは王国でも大きな都市で組合で受けられる依頼の種類も数も多いらしい。他の街からサウールに来る冒険者も少なくないとなれば、最近初めて訪れた冒険者という条件だけでは絞り切れないか。


「先生先生、いなくなった生徒の写真とか持ってないんですか」

「学園なら生徒手帳作ったときのデータとかあるんじゃないの」

「それが、最近個人情報の取り扱いって難しくてな」

「異世界に来ても?」

「こんなの非常事態でしょ」

「まあその気持ちもわかるけどな。下手に生徒の情報が外に漏れてトラブルに巻き込まれないとも限らないしな。それに異世界だからこそ余計に慎重になってるというのもある」


 そもそも写真自体がこの世界にはまだない技術なのだ。余計な騒ぎが起きればそれこそ生徒捜索の妨げになる。


「それなら、言動の違いとかで聞いてみるとか」

「矢早銀さんみたいに、ちょっと余計な事言ったら殴り掛かってくるとか――ぐはっ」

「工平。余計とわかってるなら黙ってなさい。余計な口は縫い付けるわよ」

「矢早銀さん。だから忠告の前にまず殴るのやめてくれませんか」

「話は逸れたけど、いくら言葉が通じるからってすべての単語が通じるわけじゃないでしょ。それにこの間まで平和な日本で暮らしていて、この世界での旅や生活にだって慣れてないでしょ」


 確かに矢早銀の言う通りだ。さっき写真の話をしてた時もお姉さんはよくわかっていない様子だった。

 逆にこの世界では当たり前のモノでも、俺たちには見新しいことはあるし。それらに対する反応なんかの差異も大きな手掛かりになるだろう。


「なるほどな。それでお姉さんそこらへんはどうなんだ?」

「いや話が良くわからないんですけど。まあでもちょっと危なっかしそうな子たちなら今朝も見たかも」

「見たのか?」

「ええ。そういえば彼らも数日前から見かけるようなった子たちですね。金髪の活発そうな男の子とちょっと大人っぽい感じの桃色の女の子の二人組なんですけど。この前、女の子の方が受付の娘にこの街のこととか冒険者や依頼内容について詳しく聞いてましたね」

「それって……」

「まあ、十中八九あの子たちのことでしょ。冒険者にもなってたみたいだし」


 お姉さんの話から、今朝も見かけたというのは俺たちも昨日見つけた轟と保倉のことっぽいな。

 まあだが生徒たちがこの世界で目立つというのは分かった。聞き込みをしていけば他の生徒のこともわかるかもしれないな。


「悪いなお姉さん。その二人組なら俺たちももう会ったから大丈夫なんだ」

「ああそうだったんですか。なら安心ですね。まだ冒険者になったばかりのはずなのに、赤紙依頼の手伝いに誘われてたからちょっと気になってたんですよね」

「ちょっと待ってくれお姉さん。もしかしてあいつら依頼を受けたのか?」

「彼らが直接依頼を受けられることはないはずですけど。他の冒険者の手伝いという形ならわからないですね。詳しくはその冒険者を担当していた受付の娘に聞いてもらえれば」


 お姉さんに聞いた話を、依頼を担当したという受付の娘に聞いたところ、確かに二人は赤紙依頼を受けた冒険者と一緒に出掛けたという。


「これはちょっとヤバくないですか」

「まったっく、あの子たちは……」

「何にしても放っておくわけにもいかねえな。とっとと探して連れ戻すぞ」


 俺たちはその冒険者たちが向かった場所を聞き出して、二人を連れ戻すべく冒険者組合を飛び出したのだった。


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