幕間013 脱出方法
サウールの街で出会った轟と保倉。俺たちが街についてた時にはすでに冒険者として暮らしていたらしい。さすがに難易度の高い依頼は受けてはいなかったらしいが、高校生二人だけで異世界で生活できていたのは中々すごいんじゃないだろうか。
それにしても、二人はどうやってこの街までやってきたのだろうか。学園の外に出るにしても敷地を覆うように侵入者防止用の塀が取り囲んでいる。あくまで一般警備レベルなので抜け出せないことはないだろうが、二人はスキルでも使ったのだろうか?
「俺たちは國光についてきたんすよ」
「そうそう、國光くん最初からすごいスキル使いこなしてたんだよねー」
國光というと2Aの竹辻國光のことだろう。俺の授業も取っていた生徒で、背が高くてどこか老成しているような印象がある。
両親の仕事が忙しくて祖父母の家で暮らしていると聞いたことがあるが。祖父母も穏やかな人でその影響で本人も落ち着いた性格になったようだ。
スキルを使いこなしていたと言うがどんなスキルだったのだろうか。
異世界に転移して二日目の朝、轟と保倉はまだ辺りが暗いうちに目が覚めたらしい。その夜といえば学園のみんなが妙な夢を見ていた。二人も例外ではなく、妙な夢のことが気になってじっとしていられず、しばらく二人で校内を散歩していたらしい。
「そんで何気なく窓の外見てみたら、國光が歩いてて」
「なんか毎朝同じ時間に散歩するのが日課らしいんだよね」
なんか本当におじいちゃんみたいだな。
「ちなみに俺らが國光を見たのは二階の廊下だったんすけど」
「國光くん、窓の外を歩いてたんだよねー」
「うーん。廊下から見えるっていうと裏門の近くか?」
「いや、空中ってことっす」
「何を言ってるんだお前」
「まあそういう反応になるよねー」
どうも二人が見たとき竹辻は、文字通りの空中散歩をしていたのだそうだ。確かにそれはスキルを使いこなしてると言えるんだろうが。
それでその竹辻のスキルを使って学園から抜け出したり、王都にも塀を乗り込んで入り込んだらしい。完全に不法侵入なんだが。
「王都からサウールには馬車できたのか。そういえばみんなは馬車代とかどうしたんだ?」
「俺らの場合は制服を売ったら結構なお金になったっすね」
「制服のままだと目立つしね。こっちの世界の服とか食べ物とかも買って馬車旅行みたいな」
この世界に合成繊維なんてないし、品質的にはかなり珍しいだろう。
元の世界だと制服を売っている図は犯罪臭もするが、この異世界で生徒たちの生活の足しになったんならまあ良いだろう。それにその手があるなら、他の生徒たちも初期資金稼ぎはどうにかなっていそうだ。
しかし馬車旅行とは暢気なものだ。この二人に関しては、近くに竹辻がいたというのも大きいのだろう。異世界だろうとスキルを使おうと、日課の散歩をするような奴だからな。
とはいえ、竹辻もこの街に一緒に来たということか。俺らが街について早々、3人目が見つかりそうというのは中々幸先が良い気がする。
「いや、國光ならこの街にはいないっすよ」
「この街に着いてすぐに、スローライフを目指してくるって言って、農具とかいろいろ背負ってどっか行っちゃったんだよねー」
「スローライフ……?」
異世界に来て一日二日、しかも一人でスローライフを目指すって、三嶋や矢早銀が失踪した生徒のリストを見て厄介そうだと称したのもうなずける。
スローライフといっても完全に街との繋がりを断つことはないだろう。農具もそうだが何でもかんでも自給自足はできないだろうからな。
そうすると基本は街で他の生徒を探しつつ竹辻のことは気にしておく。それで余裕が出てきたら街の周辺を探しにいく感じか。
そうして竹辻に関してのとりあえず方針は決まったのだった。