031 冒険者組合
サウールの街に着いた俺たちは、冒険者組合を訪れていた。
学園の手配によって王都で冒険者登録済みなので、今回はこの街での活動申請を行うだけだ。
この世界において、冒険者といっても二種類に分けられる。
一つは冒険者組合に所属する組合員としての冒険者。もう一つは組合員ではないフリーの冒険者。
どちらも冒険者組合を通して依頼を受け、報酬を得ることで生計を立てるというのは同じだ。ただ組合員だと組合の依頼を受ける義務が生じるらしい。
そこで問題になるのが冒険者組合というものが各国の支援を受けているということだ。国家がスポンサーである以上、組合は国家からの要請を受けざる負えない。つまりは組合員になると国家の指示に従わなくてはならなくなるとうことだ。たとえそれがどんな依頼であっても、断ることはできない。
そういった背景もあって、学園からは組合員にはなるなと指示されている。フリーの冒険者の場合、手数料が高くなったり、組合からのサポートも受けられなくなるのだが、国家の思惑に関わりたくはない。
「ここが冒険者組合ですか」
「思っていたよりも立派な建物ね」
冒険者の本拠地というと酒場のようなイメージがあったが、目の前の建物は石造りのどちらかというと役所のような出で立ちだ。
建物中に入ると多種多様な武器や防具を身に着けた冒険者たちでごった返していた。
入ってそのまま奥の方に受付があり、中央には待合所のように簡素な椅子やテーブルが置かれている。そこではただの雑談か仕事の話し合いなのか、大声で言い合ったり笑いあったりと賑やかな声を上げている。
右手側には壁一面に掲示板が立てられ、大小新古様々な紙がところせましと貼りつけられている。そんな掲示板の前で、数人ずつ塊になっているのは冒険者パーティというやつか、あれでもないこれでもないと掲示板に張られた紙と睨めっこしては喧々諤々している。
俺たちはそんな冒険者の間をそろそろと通り抜け、一番端にある受付へと向かった。窓口は5つ並んでいたがなぜか右端だけ空いていたのでそちらを選んだのだが。
ふわりとウェーブした髪の目の死んだお姉さんが窓口にいた。眠たいのか疲れているのか腕を投げ出して机に頬をつけて項垂れている。ほかの冒険者が別の窓口に並んでいるのはこの人のせいなのだろう。
「おーい。お姉さん、冒険者の活動申請がしたいんだけど」
「ご新規さんかぁ。わざわざこっちの窓口に来るなんて」
「あんた受付じゃなかったのか?」
「いや、受付だけどぉ。受け付けたくないといぅk……もごもご」
机に頬を預けたまま、ダウナーな声で話しきることすらあきらめてしまう。
「彼女、大丈夫なの?」
「冒険者も多いみたいですし、お疲れなんですかね?」
「いやぁ。この窓口はみんな避けるから忙しくはないんだけれど」
矢早銀と三嶋も心配するが、どうやらただ無気力なだけの人らしい。
「それで、サウールの活動申請だっけ……、あれ?」
なんとか気ダルそうな体を起こしようやく作業しようとするが、はたと止まってしまった。
「どうかしたか?」
「活動申請の処理って、何するんだっけ?」
元の世界の役所といえば、担当窓口に次々回されて苦労するというイメージがあるんだが。ここでは最初の窓口からまったく動かないまま苦労しそうだ。