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016 失踪

 境天寺学園は学年ごとに4つのクラスに分かれており、そして各クラスには30人前後の生徒が在籍している。

 いなくなった生徒たちの状況報告を担当していたのは確か新人の先生だったはずだ。緊張しているのか若干声を詰まらせながら告げられた失踪者数は想像以上のものだった。


1-Aが0人

1-Bが1人

1-Cが0人

1-Dが0人

2-Aが5人

2-Bが6人

2-Cが5人

3-Aが3人

3-Bが2人

3-Cが2人

3-Dが3人

 

 1年生の失踪者がほとんどいないのは、まだ学園生活に不慣れだったためか、異世界に飛び出すという選択肢を持てなかったのだろう。良くも悪くもこの場では教師だけが唯一の頼れる大人なのだ。

 無論、上級生に比べて多少担任が手厚くフォローしていたというのもある

 その一方で、3年生は将来のことをよりはっきりと考える時期だ。すでに志望校の合格切符を勝ち取っている生徒も少なくなく、それを簡単に手放すことは出来ないのだろう。それがたとえ異世界転移したとあってもな。


 多くのクラスから数人ずつ失踪者が出てしまった。

 俺が朝起きたのは他の人に比べれば遅かったはずだ。それでも生徒たちが居なくなった騒ぎが起きていなかったのは、いなくなったのが各クラスで小数人だったためにトイレか何かと勘違いして確認が遅れたのだろう。


「ところで、2-Dの報告がなかったようですが?」


 報告に来た先生を訝しげに見つめて理事長が問う。

 そういえば2-Dだけ失踪者が何人だったかの話がなかったな。


「そ、その……。2年D組の失踪者は……、に、にじゅうはち人です」


 たどたどしく放たれた答えにその場が騒然となる。


「28人デスカ?!」

「なんと……」

「ほとんどクラス全員じゃないか」

「これは想像以上かな」

「大体その人数、クラス担任は何をしていたの?」

「何故それほどの生徒が居なくなっていて、報告が状況確認をするまでなかったのですか?」


 皆が戸惑いと驚きを口にする中、理事長だけは勤めて冷静に問い直す。


「それが……、担任の由良先生がかなりパニックを起こしているようで。私たちが状況確認するまで、生徒が居なくなったことを隠していたみたいで……」

「隠していたって……」


 気が動転してしまうのも仕方ないが、それだけで済まされないのが大人というものだ。


「それで由良先生は今どうしているのですか?」

「だ、だいぶ混乱しているようでしたので、今は保健室の方に……」

「保健室って、他の生徒はどうしたんですか」

「2-Dは確か30人クラスだったはずだが」

「つまり、残った二人だけでクラスにいるってことかな?」


 続けざまに詰められるように言われて報告に来た先生にも同情するが、さすがにそんな状況の生徒だけにしておくのは心配だ。


「す、すいません。二人ともあまりにも落ち着いていたので、つい大丈夫かと……」

「理由はともあれ生徒たちだけで居させるわけにはいきませんね。周東先生、その生徒たちのことを頼みます」

「はい、分かりました」


 ――ん?

 あまりにも自然に振られて考えずに返事してしまった。

 うーん、残された生徒のサポートか。責任重大だ。


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