015 スキル
「スキルですよ、スキル。やはりワタシたちもスキルが使えるようになっていたのデス。昨晩の妙なユメが関係しているのデショウカ。その時にイメージした能力が使えるようになったのデス。さすがに夢にまでみたチートスキルのあれやこれもはムリでしたケド、何とかオヤクソクは叶えることができましたデス」
この世界には魔術とスキルという漫画や映画で見るような能力が存在する。
スキルは誰にでも備わっているらしいが、元の世界にはもちろんそんなものはフィクションだったし、俺たちには使えないのだと思っていた。
しかし、今朝起きたら誰もが不思議な能力を手に入れていたという事らしい。さっきまでは髪質が変わったことに気を取られていたが、改めて自分の身体に意識を向けてみると確かに今までは感じたことが無い流れのようなものを感じる。
「須藤先生も昨晩妙な夢を見たでしょう。おそらくそれが何か関係しているとは思うのですがねえ」
「まあその考察は後でしましょう。今は生徒たちの問題が先決ですしね」
「生徒たちがどんなスキルを手に入れたのかも問題かな。姿を隠したり、短時間で遠くに移動できるようなものなら探し出すのも大変だからね」
スキルというものが本当に俺たちみんなに備わったというなら、生徒たちの中には騒ぎ出す子も出てくるのは当然だろう。
異世界という未知のなかで特別な能力を持ってしまえばそれを試したくもなる。もしかするとそのスキルを使って学園から抜け出したのかもしれないな。
「なんにしてもまずは状況を把握しなければなりません。生徒たちの件ももちろんですが、他にもこの学園に侵入した輩がいたようですしね」
「侵入者?」
「昨晩のうちに何者かが学園に侵入した形跡があったのよ」
天地先生の話では昨晩のうちに校舎の一部の窓ガラスが外側から割られていたそうだ。
外部からの介入もあったとすると、生徒たちが自発的に学園を抜け出しただけとは限らないということだ。最悪、この世界の者に連れ去られた可能性さえある。
この場にいるみんなの顔がその深刻さに曇る。
俺たちは単なる教育者であり、訓練を受けた軍人でも無ければ、高度な政略をこなす政治家でもない。
面と向かっての暴力や対等な話し合いならまだ対処の仕方もあるが、策謀暗躍が渦巻くならば俺たちに対処は難しいだろう。
そうしてようやく、状況確認に行っていた先生からの報告が届けられたのだった。