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014 スキル

「まったく、頭の痛い話ですね……。やはり今の状態では警備が足りませんか……」


 理事長が心痛な面持ちで重い息を吐く。

 生徒が居なくなったという報告を受けて、先日と同じメンバーが理事長室に集まっていた。みんな俺や佐藤先生と同様、髪や目が様変わりしているが今はそれどころではなく、みんな真剣な表情を浮かべている。

 生徒が居なくなったと言っても、全生徒が居なくなったわけではなく、数人がそれぞれのクラスに戻らないという事らしい。現在他の先生方が手分けして状況の確認に走り回っている。


「現状でこれ以上の警備は難しいでしょう。それでなくとも昨晩から侵入を試みた輩も目撃されていますし、それも完全に防げたかも定かではないですし」

「よし、仁科先生の見回りを増やそう」

「何言ってるんですか佐藤先生。大体少し見回りを増やしたところで限界があるでしょう」

「まあそうだよねえ。外からの侵入者だけでなく、内からの脱走者まで気にしないといけないし。うんうん、仁科先生が5倍働いても難しいかな」

「だから私ばかり働かそうとしないでくださいよ」


 まさかこの世界のこともまだよくわからない状況で、一日と立たず生徒たちが学園の外に出てしまうとは思わないだろう。外には武装した兵士や、突然現れた俺たちを警戒するこの世界の住人たちもいるのだ。

 だからこそこちらも中から外に出ていく人ではなく、外からの侵入者を警戒していたのだ。


「それにしても、容姿が少し変わったからって学園から出ていくなんて……」

 

 思わず漏らした言葉に、しかし周りはきょとんと俺を見返す。

 あれ。俺なんか変なこと言ったか?


「須藤先生。まさか、私たちの身に起こった変化に気づいていないのですか?」

「シンジラレマセン。起きてからカラダになんかこう、チカラが湧いてくる感覚トカ。なにか頭の中にイメージが湧いてきたりシナカッタデスカ?」


 理事長とトニー先生が信じがたいとまでに言い、他の先生方も呆れた感じの表情になっている。

 そう言われても正直、さっきまでサラサラストレートになった髪のことで頭がいっぱいだった。


「ああ、そうかそうか。周東先生はさっき起きたところだったね」


 戸惑う俺を見て、思い出したとばかりに佐藤先生が手を打つ。


「うーん、説明するより見てもらった方が早いかな。さあ、見せてあげるんだ仁科先生!」

「だからなんでまた私なんですが……。まあいいですけど」


 言うや否や佐藤先生がどこからかビーカーを取り出して、仁科先生の手に乗せる。

 ビーカーの中には水が入っており、しばらくするとゆっくりと回転し始めた。回転は次第に速くなり、ビーカーの中心に渦が発生していく。


「いよっ! 人間撹拌機!!」

「褒めてもなにも出しませんよ」


 ……今のは誉め言葉なのか。


「須藤先生。これで分かったかい?」


 実際にこの目で見たことでようやく理解した。

 つまり、俺たちは何もないところからビーカーを取り出せるようになっということだ。



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