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ソニアの異変

 部屋に戻ったソニアはジェラルドの事を考えていた。私、なんだかんだ言ってジェラルドの事を好きになった。ルアーナとに仲を引き裂くとか困らせるとかそんなんじゃ無い。純粋にジェラルドに恋をした。ソニアはジェラルドの事を本気で好きになったと自覚した。レオナルドがルアーナを好きだと聞いて真っ先に浮かんだのはジェラルドの大切な人を守りたいと思った気持ち。ああ、私はジェラルドが好き。ルアーナがジェラルドにとって大切な人ならば私はルアーナの為に百一年前私は誰かを好きになったのだろうか?今私はジェラルドを好きになれた自分が幸せだと感じる。ジェラルドの幸せのために私が深い眠りから起こされたことも今は許せる。だってジェラルドが幸せになればそれで良いと思えるから。ジェラルドが私を好きじゃなくても私の好きはちゃんとここにあって、その好きが結果として彼の人生をずっと照らすだろう。ジェラルドの人生の役に立てて良かった。誰かを愛すると言うこの尊い感情を教えてくれたジェラルドを幸せにする為に私は生贄になったのならこれこそ本望だと思えた。祈りの乙女としてジェラルドの役に立てた。それだけで生贄になった私も報われるわ。ソニアは自分の人生に初めて満足感を得た。愛する人の幸せに貢献できるこの立場を心から誇りに思う。

 ソニアは窓辺に立ち夜に輝くフローエン帝国の街を見つめた。愛する人の国。守ってみせる。「ウッ」ソニアは頭に強い痛みを感じ倒れそうになった。カーテンに捕まり痛みに耐えるが急に意識が遠のいてきた。な、なに?頭が割れるように痛い。気が遠くなりそう、、ソニアは耐えられなくなりその場にはしゃがみ込み両手で頭をおさえた。ああ、意識が遠のく、、

 そのままソニアは意識を失った。


「う、、ん」むせかえる花の香り。ここは天国?ソニアはうっすらと目を開けた。花が見える。重い体をゆっくりと起こし辺りを見回す。花、花、花だらけになっている。ソニアはベットの周りの花をぼーっと見つめていた。このたくさんの花は何?「ソニア!ソニア!」部屋の扉が開き息を切らせたジェラルドがソニアの元に飛び込んできた。「ジェラルド?どうしたの?」ソニアは目の前にいるジェラルドを見つめた。ジェラルドは全力で走ったきたようで荒い呼吸をしている。「ジェラルド大丈夫?」ソニアが聞くとジェラルドは両手を握りしめソニアを抱きしめた。ソニアは突然自分を抱きしめるジェラルドに驚いた。「ジェラルド?何かあった?」ソニアはジェラルドの強い抱擁に心が弾み体が熱くなった。「ソニア、お前は一カ月前に倒れてずっと起きなかったんだ、、。」ジェラルドはそう言いながらまたソニアを抱きしめた。ソニアもジェラルドが本気で心配してくれた事を感じ喜びで手が震えた。嬉しい「ジェラルド大好きよ」ソニアはジェラルドを抱きしめた。ジェラルドはソニアの言葉に頷き抱きしめる腕に力を入れた。二人はしばらくの間黙って抱き合っていた。ソニアは段々とどうして良いかわからなくなった。ずっとこうしていたいけどジェラルドを意識して鼓動が強くなる。ジェラルドにこの音が聞こえてしまうかもしれない。何か言わなきゃ。ソニアは口を開いた。「ジェラルド、この花沢山のはどうしたの?」ソニアはジェラルドの胸の中で聞いた。「これはレオナルドからだ。」ジェラルドはソニアを抱きしめたまま答えた。レオナルドが?「どうして?」ソニアはジェラルドを見上げ聞いた。「お前が倒れてから毎日大量の花を送ってくれてこうなった。」ジェラルドは花をじっと見つめながら答えた。「そうなんだ。ところでジェラルドは何をしてくれたの?」ソニアは少し意地悪無質問だと思いながらジェラルドに聞いた。ジェラルドは一瞬顔をしかめハッキリとした口調でソニアを見つめ言った。「俺にはルアーナがいるからそんな事はできない」ソニアはその言葉を聞き血の気が引いていくのを感じた。ジェラルドが幸せなら良いと思ったのにジェラルドからその言葉を言われると全てを投げ出してしまいたくなる。自分勝手だとわかってる。だけどジェラルドの胸の中でその言葉を聞きたくなかった。「じゃあ私を抱きしめないで!」ソニアは腕をジェラルドの胸にあて突き放そうとした。しかしジェラルドはソニアをさらに強く抱きしめた。そして小さな声で「ごめん」と言った。

 ごめんって何よ?どう言う意味?ごめんと言いながらなぜ私を抱きしめるの?でも、そのごめんの意味を聞けない。聞いたら全てが崩れそう。ソニアはジェラルドの胸の中で目を閉じた。今さら考えても仕方がない。今はこの時間だけはジェラルドに抱きしめてもらいたい。ジェラルド、ごめんね。私の気持ちを押しつけてごめん。ソニアはジェラルドの胸の中でまた眠った。

「ハッ!」ソニアは目が覚めた。先程までジェラルドの胸の中にいたが今は誰もいない。ああ、体が重い。倦怠感で動けない。せっかく一カ月ぶりに目覚めジェラルドを安心させたのに。さっきまではこんな調子ではなかったのにどうしてこんなに体が重いの?これでは余計にジェラルドが心配する。気力だけで起き上がり部屋にあるテラスに出た。体に力が入らない。ソニアはそのままソファーに倒れ込んだ。「失礼します」誰かが部屋に入ってきた。女性の声。一体誰?ソニアは気力を振り絞り体を起こした。頭が重く顔が上げられない。目の前に誰かが立った。ドレスが見える。ソニアはゆっくりと顔を上げた。その人物はルアーナだった。ルアーナは眉間に皺を寄せソニアを見下ろしている。体の前で握られている両手が小刻みに震え怒っているように見える。「ルアーナ様、何かご用でしょうか?」ソニアは平静を装い聞いた。「あなたなんかいなくなればいいのに!」ルアーナはそう言ってソニアを睨みつけ部屋を出て行った。一体なぜそんな事を言うの?ソニアはルアーナがなぜ怒りながらこの部屋に現れたのか全くわからなかった。なぜならジェラルドはルアーナを選んでいる。ソニアにはっきり自分にはルアーナがいると言った。だけど居なくなればいいと言われるのは傷つく。私はあなたの為に起こされあなたの為に再び眠るのよ?なぜそんな事を言うの?全てを持っているあなたは誰よりも幸せなはずなのに。ソニアは力なく空を見上げた。

 「ソニア!ルアーナが来なかったか?」ジェラルドが現れた。ジェラルドは少し怒っているような表情をしている。何かあったのかもしれない。だけどなんとなく来たと言ったらダメな気がする。「来ていないよ」ソニアは嘘を言った。「嘘だ、ルアーナの姿を見た。何か言われたか?」ジェラルドは真っ直ぐにソニアの顔を見つめ聞いた。ソニアは気力が抜けてきた。今は体調が悪い。話が続かない。ごめんねジェラルド。今は無理。ソニアは気が遠くなった。「なに、、も」と答えそのままソファーに倒れこんだ。「ソニア?具合が悪いのか?」ジェラルドは不安な顔をしソニアを抱き起こした。「ソニア?ソニア!」ジェラルドは血色を失ったソニアを見てその頬に手をあてもう一度名前を呼んだ。「ソニア?!」ソニアはジェラルドを見つめ言った。「ジェラルド……丈夫だよ」そのままソニアの意識が無くなった。


 その後また二週間ソニアは眠っていた。「うーん!よく寝た」ソニアはベットの上で体をのばしょ起き上がった。「うん?ここは何処?」ソニアは見たことのない美しい部屋にいた。その部屋は柔らかい光が大きな窓から差し込み、その窓からは美しい木々の緑が見える。心地よい柔らかな風がソニアの頬を撫でた。「天国のようだわ」起き上がったソニアを見たメイドが慌てて部屋から出ていったと同時にジェラルドが現れた。「ソニア!」ジェラルドはソニアを見て泣きそうな表情を浮かべた。その表情を見てソニアはジェラルドがどれほど自分を心配してくれたのかを感じ取った。「ジェラルド、私はまた眠っていたようね。心配かけてごめんね。」ソニアの言葉を聞きジェラルドはベットの端に腰をかけた。そしてそっと手を伸ばしソニアの頬にふれた。「体調は?」ジェラルドは目を細めソニアに聞いた。「目覚めてばかりで分からないけど、悪くないとおもうわ」ソニアは優しいジェラルド意識した。自分の顔が赤くなったのを感じそのまま下を向いた。どうしよう。ジェラルドに触られいる頬がすこし熱い。心臓がドキドキする。ジェラルドが心配しここに来てくれた。ジェラルドは恥ずかしそうに下を向くソニアを見て安心した。体調は悪くなさそうだ。「ソニア、少しが話したい、後ほど迎えに来るから、、」そう言ってジェラルドは頬から手を離しソニア頭を撫でた。「また後ほど」ジェラルドは部屋を出て行った。

 

「ここはどこでしょう?この部屋は?」ジェラルドが去った後近くに待機しているメイドに話しかけた。「ソニア様、この部屋はジェラルド様の亡きお母様、先代の皇后様のお部屋でございます」「え?、、なぜ私はここに?いつから?」ソニアは驚いた。「ソニア様が倒れられてすぐに。ジェラルド様がソニア様をお連れになりました。」メイドはそう言って入浴の準備を始めた。ソニアはその様子を見つめながら何が何だかわからなく頭の中が混乱していた。「ソニア様入浴の用意が出来ましたのでこちらに」メイド手伝ってもらいソニアは入浴をし、髪を整えてもらいドレスに着替えた。その後ソファーに座りお茶を飲みながらジェラルドがなぜ私をここに連れてきたのかを考えていた。だが一向に答えはわからない。ソニアはため息をはいた。考えてもわからないわ。起きたばかりで入浴し少し疲れたのかそのままクッションに体を預け目を閉じた。この部屋はとても静かで開放してあるテラスから木々の葉が風に揺れる優しい音が聞こえて来る。このまま眠り起きたら二百年後でも後悔はないかもしれない。私は恋を知った。ジェラルドがルアーナと幸せに穏やかな人生を送ってくれるなら私も幸せだと思える。これでいい。もうこれ以上望むことは無いよね。そう覚悟し目を開けると心配そうな、不安そうな顔をしソニアを覗き込むジェラルドが目の前にいた。「わっ驚いた!」ソニアは目の前にいるジェラルドに驚き飛び上がった。「ソニアごめん。俺も驚いた。またソニアが眠ってしまったと思って、、、」そう言ってジェラルドは優しく微笑み「大丈夫?」とソニアに聞いた。ソニアは優しいジェラルドに胸が高鳴った。「大丈夫!全然大丈夫です!」至近距離でジェラルドを見たソニアは気持ちが舞い上がった。「ハハハ、ソニアが元気で嬉しいぞ」ジェラルドはそう言ってソニアにもう一度微笑んだ。その微笑みはソニアの心を捉え離さない。心臓が止まるほど胸が苦しくなった。こジェラルドを諦められる?どこかでそんな声が聞こえた。


 

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