ライバル登場
「うーん」目が覚めた。ここはどこだったっけ?ソニアは辺りを見回した。質の良いブランケットにシーツ、それにこの部屋の調度品も高級品だ。私どうしたんだっけ?ソニアは首を傾け思い出そうとしていた。「ソニア起きたか!」ドアが開きジェラルドが現れた。「ジェラルド、おはようございます」ソニアはジェラルドを見つめ思い出した。たしかジェラルドの胸の中にいた。そのまま眠ってしまったようだ。「ジェラルド!私、本当はジェラルドに会いたかったの!」ソニアはブランケットを握りしめ素直な気持ちをジェラルドにぶつけた。ジェラルドは優しく微笑み起きたばかりのソニアに近づき言った。「ソニア、最近全然見なかったから心配したんだけど、まさか牢屋に入れられているとは!全くあなたはすごいよ!」ジェラルドはそう言ってソニアの髪を撫でた。
その仕草にソニアはときめいた。嬉しい。どうしようジェラルドが心配したと言ってくれた。すごいよと言ってくれた。ソニアは小さく頷きジェラルドに言った。「ジェラルド、それ褒め言葉?」ジェラルドはソニアの言葉に大きく頷き言った「俺の周りにそんな人いないから新鮮で、ついつい気になるな」ソニアはジェラルドの言葉を聞き笑顔になり聞いた「え?それって恋の始まり?」ジェラルドは笑いながら答えた。「ハハハハ、ソニアこう見えても俺婚約者いるんだ」ジェラルドは笑いながら言った。「いやいや、先のことなどわかんないよ!」私も笑いながら言った。私たちは顔を見合わせて笑った。ソニアはジェラルドの言葉に少し胸が痛んだが、こうして話せることが嬉しかった。
「朝からソニアには笑わせてもらったな」ジェラルドはそう言いながら私の頭を撫でた。「ちょっとジェラルド!私の方が歳上なのよ、私がしてあげる方じゃない?」「ああ、そうだった、ソニアは百十九歳だもんな、朝からそんなに笑ったら死ぬぞ!」「ありがとう、若い人の言葉は身に染みるわ」そう言ってまた二人で笑った。
ソニアは改めてジェラルドに言った。「と、いう事で、私はジェラルド推しで行くからよろしく!」一応言っておかないと。ソニアはジェラルドを見つめた。「ハイハイ」ジェラルドは笑顔を浮かべた。冗談に聞こえたのかな?ソニアはもう一度言おうとした時「ソニア、ここに住んでいいぞ、お前百十九歳だからいつぽっくり行くかわかんないからここにいて」ジェラルドはソニアの頬を優しくつねった。ソニアは一瞬で顔が赤くなった。ときめく!!ソニアは照れ隠しするよう大きく頷いた。その様子を見てジェラルドはフフフと笑い部屋を出て行った。
ソニアはベットに腰掛けもう一度大きく頷いた。これはありがたい。当初の予定通りジェラルド推しでガンガン攻めよう。二人の仲を脅かすわ。正直ジェラルドにときめいているし。でも一応ルアーナにも伝えて牽制しなきゃ。ま、正直言って相手にされないと思うけど。でもわたしにも意地がある。眠りを妨げられ使い捨てのような扱いやはり許せない。
だけど、まずここは完全にアウエーだわ。私は厄介者だもの。意地悪や嫌味などをスルーする気持ちを強く持たなければ。目的のためなら多少の痛みは受け入れなきゃ。ジェラルドは私の告白?に婚約者がいると答えた。ルアーナのことだ。ジェラルドはルアーナを愛しているのだろうか?人に愛されるってどんな気分だろう。愛することも愛されることもまだ未知の世界だからわからない。でもきっと幸せなんだろうと思う。
それから数日が経った。ソニアはお城に住まわせてもらっているがこの城の間取りがわからない。少し探検をしてみようと考えた。暇つぶしと言えば暇つぶしだ。ソニアは部屋から出た。部屋の前に廊下がある。この廊下はどこに繋がっているのだろう?興味深々で歩き始めた。長い廊下をひたすら歩いているとジェラルドとルアーナと執事のアレクが正面から歩いてきた。うわぁ気まずい、どこかに部屋に入っちゃおうかなと一瞬思ったが別に悪い事は何もしていない。堂々としよう。ソニアはそのまま進んだ。ジェラルドがソニアに気が付き微笑みかけてきた。ソニアも笑顔を浮かべ会釈し通り過ぎようとした。「ソニアどこに行くのか?」ジェラルドがすれ違う手前で話しかけてきた「あ、特には、目的はないかな」私はそう答え立ち去ろうとした。「じゃあ、ソニアも一緒にお茶会どう?」ジェラルドが突然お茶会に誘ってきた。お茶会、きっと私は見せ物になりそう。断らなきゃ。「うーん、結構です。」ソニアは答えた。「ジェラルド様、こちらは?」ルアーナがジェラルドに言った。ルアーナが私に気がついた。馴れ馴れしい言葉遣いが気になったのかソニアをじっと見つめている。「あ、紹介まだだったな、この人は齢百十九歳の祈りの乙女だ」ジェラルドはルアーナにソニアを紹介した。ソニアは年齢はいらないでしょ?と心の中で思ったが笑顔を浮かべルアーナを見た。「まあ。そうでしたか、わたくしはルアーナ フランシスと申します」ルアーナは笑顔を浮かべソニアに挨拶した。ソニアは目の前にいるルアーナに少し嫉妬心を覚えた。ジェラルドはこの人を救うため私を起こしたのだ。「はじめまして、百十九歳のソニアと申します。ジェラルドに起こされて恋をしました。ライバルですがよろしくお願いします」ソニアは笑顔を浮かべルアーナに言った。「ま、まあ!!」ルアーナは驚きジェラルドを見た。ジェラルドはソニアの言葉を聞いて爆笑している。「アハハハ!ソニアさすがの自己紹介だな!長生きって素晴らしい」ジェラルドはそう言ってまた笑っている。「ジェラルド様、、」ルアーナは涙目になりジェラルドを見つめている。ソニアはルアーナを見てなんとも言えない気分になった。なんで泣くの?泣きたいのはこっちなのよ。ソニアは頭を下げ歩き出そうとした。「ソニア様、ルアーナ様はジェラルド様の婚約者様です。言葉を慎んで下さいませ」執事のアレクがソニアの前に立ちはだかり言った。「はい、存じております。けれど私は私の意思を持って好きなものは好きだと言っているだけでそれ以上何かしている訳ではありません。何か問題でもあるのでしょうか?」ソニアははっきりと自分の意見をアレクにぶつけた。眠りについている生贄を起こす方がよっぽど問題だ。
「ジェラルド様!」ルアーナは突然ジェラルドの胸に飛び込み泣きはじめた。ソニアはその様子を見て驚いた。泣く事なの?「ルアーナ、大丈夫だ。」ジェラルドはルアーナの頭にキスをした。その姿を見たソニアは悔しかった。こんな事で泣くなんて羨ましい。私はもっと悲しかったわ。ソニアは両手を握りしめ言った。「ルアーナ様。泣かせるつもりはありませんでした。だけど先程言ったことは訂正しません。私は私を貫きます。失礼」ソニア頭を下げその場を離れた。泣き続けるルアーナに驚いたメイドや使用が集まってきた。ソニアの方を見てなにやら言っている。ソニアはため息を吐いた。あーあ、悪女決定だなぁ。ソニアは少し気分が落ち込んだ。だけどこんな事で泣けるルアーナが少し羨ましくなった。 なぜならソニアは目覚めてから涙を流す事が出来なくなっていた。