ジェラルドを追っかけます
「ジェラルド様これはいったい。」ソニアが出て行った応接室に残された執事のアレクはソニアの激変に驚きジェラルドに言った。ジェラルドは楽しそうに笑っている。「ハハハハハ、ソニアはさすが生贄の巫女だ!度胸があるし吹っ切れているな」そう言ってまた笑い出した。「トントン」ドアがノックされアレクが対応した。そこにはルアーナがいた。ジェラルドはルアーナを見て声をかけた。「ルアーナ、どうしたのだ?」ルアーナは一礼し話し始めた。「急にジェラルド様が退席されたので何かあったのかと心配して参りました。」その言葉を聞いたジェラルドは優しくルアーナに微笑みルアーナの手を取り庭園に戻った。1人応接室に残されたアレクはソニアがお城に来れないようにしなければならないと考えていた。あの生贄の娘は危険だとアレクの勘がいう。ジェラルド様があのように楽しく笑う姿を見たことがない。あの娘はジェラルド様の心に入り込む可能性がある。それを阻止しなければ。アレクは考えた。ソニアからの借金返済は一人で対応しよう。事後報告になるが全て終わってからジェラルド様にに報告する事にした。ソニアは危険な香りがする。えも言われぬ魅力がある。ジェラルドとルアーナの幸せを守るのも私の仕事だ。アレクは大きなため息を吐きソニアが持ってきたお金を回収した。
さて、恋愛は時間を空けていい期間とダメな期間がある。ソニアは宿に戻り作戦をたてていた。徹底して恋愛についての書物を買い込み指南書も読み漁り恋愛マスターの域まで知識を詰め込んだ。恋愛のスタートはインパクトが大事、これはクリアーしたと思う。そして距離を詰めるために出来るだけ会うようにしなければいけないが、相手は帝国の皇帝だ。そうそう会えない。私は以前は恐らく貴族だったと思うが覚えていない。今は身分が無い、住所もない幽霊のような存在だから立場として祈りの乙女というネームバリューを使うしか無い。しかしジェラルドに会う口実といえば借金返済しかない。だが最近あの執事しか会えない。執事の作戦だ。私とジェラルドを会わせないぞ!というオーラが伝わってくる。それに対し何もできないのが現実だ。悔しい。作戦を変えなきゃ。例えば、ジェラルドが出かけるときに待ち伏せするとか。でもそうやすやすと皇帝に近づけるはずがない。さてどうしよう。大事なのは存在感を出して強烈な愛をジェラルドに認識してもらわなければいけない。そんな時ふと子供達がフローエンの国旗を持って走り回る姿を見た。これだ!!!ソニアはすごいアイデアを思いついた。
ジェラルドはその日城を出て大きな川に架かる橋の建設工事の視察に来ていた。ジェラルドはとても人気のある皇帝でその姿を一目見たい民衆がどっと集まってきた。ジェラルドはそんな民衆達に挨拶をしようと足を止めた。その時に不可解な横断幕が目に入った。「百一年ぶりに恋をした!相手はあなたよジェラルドラブ!」と書いてある。ジェラルドはその横断幕を持って笑顔で手を振っているソニアを見た。「ソニア!」ジェラルドは笑い始めた。民衆は突然笑い出したジェラルドの視線の先にいるソニアを見た!「あ、あんたすごいな!!」「ジェラルド陛下があんた見て笑ってるよ!」ソニアは周りの人から声をかけられた。「笑う?何言っているの?私は本気なのよ!!百一年と二日ぶりの恋なんだから!!」そう言ってこちらを見て笑い続けるジェラルドに手を振った。ジェラルドは「ソニア,お前最高だね!さすが百十九歳だよ」と言って笑いながら去って行った。ソニアは確信した。この作戦意外にいけるっぽい。しかし周りの民衆はソニアが祈りの乙女と気がついたようで、「乙女、ジェラルド様にはルアーナ様がいますので恋をされるなら違う殿方をおすすめします」と言い始めた。もう!放って置いて欲しい。わかってやってんの!と思いながら「自分の好きは自分のものだから人のことは関係ないわ」そう言ってその場から離れた。恐らく民衆は私のことを今後は嫌いになるだろう、でもそんなことはどうでもいい。私は最初から一人なんだから。
それからソニアはジェラルドが行く先々に現れ横断幕を掲げジェラルドの笑を得ていた。笑われているのもどうかと思うが、そろそろ近くに行かないとただの面白い人になってしまう。しかしアレクの鉄壁が高すぎて安易に近くに行けない。そろそろ第二段階に進む事にした。姿が見えない作戦だ。押し押しで行ったので少しの間大人しくする事にした。まず二週間一切ジェラルドに会いに行かなかった。しかしよく考えたら今まで二週間の間に会えたのは四回。たったの四回か、、もっと会わない期間を伸ばすことにした。思い切って二ヶ月、二ヶ月会わない。と、言っても恋人のように会っていた訳じゃなくて勝手に一方的に私が会いに行っていただけだけど。ソニアはため息を吐いた。私何しているんだろう。少し虚しさを感じた。ダメ、虚しさなど感じる必要はないわ。これは戦い。私の尊厳をかけた戦いなの。でも心の休憩も必要ね。この二ヶ月は自由に過ごそう。ソニアはこれを機に何かしようと思った。