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騙された


「あ、頭が痛い」ソニアは目を閉じても感じる朝の光の眩しさを遮るように片手を瞼の上にそっと置いた。頭を鉄の棒で殴られたようなガンガンと脳に響く頭痛に顔をしかめうっすらと目を開けた。ぼやける視界が開け見たことのない場所にいることに気がついた。「うん?ここは?ここはどこ?いえ、えっとまず私は誰だっけ?なんか久しぶりに起きたような、あ、私、生贄だった。けど、たしか起こされておばあちゃんになってジェラルドに、、、ワイン飲んで、私、死んじゃったんだっけ?」「ふふふ、ソニアは目覚めたばかりで良く喋れるな」ソニアは声のほうを振り向くとジェラルドが立っていた。「あ、ジェラルド?私、まだ寿命じゃなかったのかな?でも頭痛いし、気分が悪いわ」ソニアはそう言ってベットにうつ伏せになった。ジェラルドは笑いながらもソニアに近づき頭をぽんぽんと優しく叩きながら言った。「ソニア、それは二日酔いだ。ワインを一気飲みしたからだな。この薬草湯を飲むと良い。それより、百一年と三日ぶりに風呂に入ってゆっくり身体を休めるとよいぞ」ジェラルドはそう言って若い召使いに用意するように言った。ソニアは言われた通りサイドテーブルに置いてある薬草湯を一気に飲み干した。「に、苦いわ」ソニアはその苦さに身震いをするとジェラルドは優しく微笑み「また後で」と部屋を出て行った。その後ソニアはメイドにお風呂に入れてもらい髪を洗ってもらい綺麗なドレスを着せてもらった。そのドレスを見つめながらおばあちゃんになってもこんなに可愛いドレスを着せてもらえるのはちょっと嬉しかった。年齢は関係なく可愛いものは可愛いし嬉しいことは嬉しいのね。「お嬢様いかがでしょうか?鏡をお持ちします」喜ぶ様子を見ていたメイドがソニアの前に鏡を持ってきた。ソニアは反射的に俯いた。おばあちゃんになった自分を見るのは勇気がいる。けれど、これも現実、受け止めよう。ソニアは勇気を出して顔を上げ鏡を見た。

「えーーーーーーーーーーーー!!!!!!!???なに?これ?この鏡魔法?どうなってるの?????」鏡に映っている自分は十八歳の自分のままだった。「は?お嬢様これは普通の鏡ですが?」メイドはソニアの言葉に驚きながら言った。「いやいや、私は百十九歳のおばあちゃんなのよ。この鏡おかしいわ」私はそう言って鏡を覗き込んだ。メイドは困惑している。

「アハハハ!ソニアお前は最高に面白いな!」部屋の扉が開きジェラルドが現れた。一体どうなっているんだろう?ソニアはジェラルドの方を振り向き言った。「ジェラルド、これはどんな魔法なの?」ジェラルドは目を細めソニアに言った。「ソニア、本当、お前可愛いよ。自分がおばあちゃんだと信じていたもんな」ジェラルドは口元に軽く握った手を当て笑っている。ソニアはその様子を見つめ無言になった。「……」はぁ?もしかしてだましたの??段々と状況を理解し始める。この男!!私を騙したんだわ!「……信じられない。本当最悪、こんな皇帝ありえない。最低」私は本気で怒った。ずっと眠っていた私にこんな酷い嘘をつくなんて。こんな男最低。「ジェラルド、私は怒ったわ。貴方が皇帝だろうとなんだろうと二度と会いたくない。騙すなど酷すぎる。」ソニアは笑うジェラルドに詰め寄り怒り出した。ジェラルドはそれでも笑ってソニアを見つめている。なんなの?いきなり起こして私を騙してこの人最低!こんな人がいるとこに居られないわ!ソニアは両腕を組み笑うジェラルドに言った。「ジェラルド、お金下さい。私寝てて起こされて嘘つかれてとても怒っているの。でも起きたからにはこの先生きていかなきゃ行けない。だけど百一年も経ってしまってもうだれもしらないし住むとこもない。だからお金下さい。手っ取り早くそれで解決するわ。」ジェラルドは怒るソニアを覗き込み言った。「ソニア、ごめん怒った?」その言葉を聞きさらに怒りが増す。「怒らない人間いたら知りたいわ!このアホ皇帝!」ソニアは覗き込むジェラルドを押し退けた。その時ドアの外に控えていた執事が声をかけた。「お取込み中失礼します。ジェラルド様、ルアーナ様がいらっしゃいましたが、、」ジェラルドはドアの方を向き言った。「ああ、そんな時間か、すぐに参ろうちょっと待つよう伝えてくれ」ジェラルドはそう言ってソニアの方に近寄った。ソニアは近寄るジェラルドを睨みつけた。なんでもいいから早くここから出ていきたい。早く一人になって先のこと考えたいわ。ソニアは言った。「ジェラルド、お金下さい。くれないなら貸してください。必ず返しますから。」そう言ってジェラルドを睨みつけた。ジェラルドは片手を額に当て首を左右に振り言った。「はぁ、ソニアそんなに怒るとは、、お金は貸すことにする、またソニアに会いたいからな。あげるのは簡単だが借金があった方が生きがいがあるだろう?」ジェラルドはそう言って執事にお金を用意するように伝えた。そして名残惜しそうにソニアの方を見つめいった。「ソニアまた会おう」ソニアは返事の代わりに睨みつけジェラルドはそんなソニアをみて一瞬寂しそうな表情をし部屋を出て行った。なんなの?ひどい嘘をついた本人があんな顔をするなんて。ソニアはため息を吐きジェラルドが去ったドアを見つめた。その後執事が借用書なるものを作りお金と共に持ってきた。ソニアはそれにサインをし借りたお金を受け取った。そして案内してもらいフローエンのお城を出て行った。


 ソニアは街を歩きながら大きなため息をついた。百一年ぶりにこの世に帰ってきたけれど懐かしいと思うものは何一つ無い。百一年で建物が変わったのかと思ったが街の建物は石造りで何百年も前から建っているような雰囲気がある。きっとこの街は百一年前から変わっていない。私が懐かしく思わない理由は一つ。私は忘れてしまったのだ。自分の名前と同じように過去の記憶を全て忘れたのだ。だからこの世界で私はたった一人だ。あの洞窟の中と変わらない。独りぼっち。

 あの洞窟で眠っていた時は一人だったけれど眠ってたから寂しくなかった。だけど今は起きている。圧倒的な孤独を感じている。なぜジェラルドは私を起こしたの?この先私にどうしろと言うの。悔しさや悲しさで涙が滲んできた。覚えていることと言えば百一年前いきなり生贄に選ばれショックで泣いて怒ってまた泣いて人生諦め生贄になる覚悟を決めた。寂しくて悲しくてでも運命だと受け入れ静かに眠ったのに急に起こされてどうしろって言うんだろう。自由に生きていいと言われたけれど私は自由の意味さえ知らない。だけど、。ソニアは涙を拭った。泣いてなどいられない。とにかく、このお金で生きてゆかねば!ソニアはお金を確認しようとバックに手を入れた。「あれ?」お金がない。えっと、ソニアはここまでの事を思い出そうと立ち止まった。確かジェラルドの執事がバックにお金を入れてくれて、それを斜めがけして歩いていた。特に変わったこともない。だけど建物をぼーっと見つめたり、考え事をしたり。あ、もしかして盗まれたってやつ?「嘘でしょ?うそ、これはついてなさすぎる。もう信じられない。ありえない。」ソニアは両手で顔を覆った。怒りで震えてくる。なぜこんな目に会うの?私が何をしたと言うのよ?ソニアは放心状態になった。瞳を閉じ大きく深呼吸をした。もう、もう本当にどうでも良くなってきた。このまま死んじゃってもいい。思い残すこともない。だって思い残す記憶が無いのだから。そう思うと力が抜け道端にしゃがみこんだ。「もうどうにでもなれだわ。」ソニアは両手を握りしめ呟いた。「お嬢さん大丈夫ですか?」誰かが声をかけてくれる。でも声をかけてくれても私を助けてくれるわけじゃない。私はこの国に住む全員のために生贄になったのよ。この国が今も平和であるのは私の犠牲のお陰なの!!それを無理矢理起こし?お金盗まれ?あり得なくない?ふつふつと怒りが湧き上がる。もう、逆ギレよ!!ソニアは立ち上がり叫んだ。「はぁ?大丈夫な訳ないじゃない、見てわかんない?なんだってんのよ!百一年と二日ぶりにジェラルドのアホ皇帝に起こされて、騙されて、お金借りて盗まれて、ひとりぼっちで。大丈夫に見える?あのね私はね、百十九歳なの!こう見えても!百一年ぶりにこの世界に連れ戻された可哀想な生贄なの!どいつもこいつも自分勝手よ!いい?私はあんた達の為に生贄やってきたのよ、そんな私にこの仕打ち?恨んでやる!呪ってやる!!」私は怒りに任せて言いたいこと言った。叫ぶ私を見て人が集まり周り黙って私の言葉を聞いている。なんなの?そんな珍しい?ポカーンとした顔して!ソニアは取り囲む人々を見回しいった。「あんた達!私の怒りわかったか!」取り囲む人々はソニアの言葉を聞き拍手をし始めた。ソニアは思いもよらぬ拍手に戸惑った。何?なぜ拍手するの?戸惑うソニに1人の男性が声をかけてけきた。「あなたが祈りの乙女様か!」その言葉を発端に周りの人々も声をかけ始めた。「ありがたい」「まさかお会いできるとは!」ソニアはその言葉にますます戸惑った。何?意外に好意的な感じ。私歓迎されているのかしら?ソニアは好意的な人々の声に怒りが沈んだ。「そうよ、私がその祈りの乙女よ。あ、乙女でもないか?百十九歳だからね」と言って微笑んだ。その微笑みを見た人々は笑顔になり言った。「乙女に感謝を捧げよう!」その言葉が合図となりそれぞれが賽銭を投げるようにお金をソニアのバックにねじ込んでこんきた。「なななななに?」ソニアは自分に群がる人々に驚いた。なぜ好意的?頭のおかしい人と思わないの?それにお金をくれる。なぜ?驚くソニアにお構いなく人々は口々に感謝の言葉を捧げる。「ああ、祈りの乙女に会えるとはなんという幸運ありがたや!」「乙女は我々の守護神さまだ」その言葉を聞きますます混乱する。「へ。ありがたい?守護神なぜ?」ソニアはなぜ人々が自分に対して好意的なのか理解できないでいる。それに自分の口から生贄だったと言ったけれどその言葉を皆信じている。「昨日お目覚めになったそうで」一人の男が言った。ソニアはその男に言った「?目覚めた?いいえ、起こされたんだけど?」その言葉を聞いた人々は声を上げ喜び始めた。「これでフローエンは安泰だ!」「ジェラルド皇帝万歳」見る見るうちにソニアの周り多くの人々が集まりみんなソニアのポケットにどんどんお金を入れて行く。バックはお金で膨れ上がりポケットにもお金が入れられ溢れ出している。おそらく借金一括返済できるくらいお金が集まった。

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