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おばあちゃん?


その言葉を聞きやっぱりソニアは絶望した。折角起きたのにお婆さんになっていたとは。そんなんならずっと眠っていた方がよかった。「ああ、」この現実がショックで洞窟にしゃがみ込んだ。「おい、ソニア大丈夫か?」ジェラルドがショックを受けるソニアに近づきその肩をポンポンと優しく叩いた。ソニアはまた怒りが湧き上がった。寝てたほうが良かった。生贄として寝てたのに無理矢理起こすからこんなことになった!!!ソニアは立ち上がり両手を握りしめジェラルドに向かって怒り出した。「ジェラルドが起こすからよ!!見た目が皺くちゃのお婆さんで、心が十八歳なんてもう絶望よ!寝てたほうがよかったわ!もう一回寝る!もう絶対起こさないで!」ソニアは涙を浮かべジェラドを睨み踵を翻し眠りについた祈りの祭壇に戻った。眠りについた祭壇に飾ってあった宝石やら剣やらを手で払い除けその上に乗りもう一度横になった。眠ろう!ソニアは目を閉じた。が、寝れる訳がない。生贄になる為に数年がかりで段階を得て巫女になり儀式に基づいて眠りについた。しかし今は何もせず横になっただけ。百一年前のように生贄として儀式をしていないソニアは眠れる訳がないのだ。「眠れない!ジェラルドのばか!アホ皇帝!」ソニアは起き上がり両手で顔を覆った。「ソニア、ごめん」ジェラルドはソニアに近づき顔を覆っていたソニアの両手を握りゆっくりとソニアの顔から離した。ソニアは顔をこじ開けられ心配そうに覗き込むジェラルドを睨みつけた。「ソニア、嘘を言ってすまない、ソニアはとても綺麗だよ」ジェラルドそう言って優しく微笑みかけその頬にキスをした。「もう騙されません。もうこの際皺くちゃで結構!ジェラルド私を養老院でも連れて行きなさい。私は久しぶりに起きてうえに年寄りで歩く自信がないわ。連れて行って!」ソニアは歩く事を躊躇した。もしヨレヨレで歩けなかったらショック過ぎる。自分の歳に慣れるまでは大人しくしていよう。老人らしく穏やかに余生を送ろうと思った。それに百十九歳だから来年まで生きられるかわからない。もうどうでも良くなった。「仰せの通りにソニア」ジェラルドはソニアを優しく抱き上げゆっくりとした足取りで洞窟を出た。


 ジェラルドに抱えられながら長い長い通路を出ると海岸沿いの浜辺に着いた。「陛下!!お待ちしておりました!」浜辺には二百人くらいの騎士達が整列しジェラルドを待っていた。やっぱり本物の皇帝だったんだ。「ジェラルド様、その方が生贄の、、」騎士に一人がジェラルドに話しかけた。「ああ、ソニアだ」騎士はジェラルドに抱かれている私をじっとみた。「ちょっとそんなに見ないで下さる?年寄りはもっと優しい目で見てくれないと死んじゃうわよ」私をまるでめずらしいトラかパンダを見るような目つきで見てきた騎士に言った。「ハ、失礼いたしました」騎士はすぐに下を向き謝った。しかし何か震えている。なんとなく笑いを堪えている?私はそんなに皺くちゃでどうしようもないほどのおばあさんになったの?騎士の態度に正直いって傷つく。見た目が年寄りでも心は十八のまま。でももう今更仕方がない。私の長所は前向きな事!年寄りとして死ぬまで生きるか!「ジェラルド、お腹すいた。入れ歯になる前に美味しいもの食べたい」私はもう皺くちゃなおばあさんだから多少のワガママも許されるだろうとジェラルドに言った。それを聞いたジェラルドはとても嬉しそうな顔をし「確かに、、入れ歯になる前にたべないとな、よし」そう言って騎士に馬車を用意させソニアはジェラルドに抱かれたまま馬車の乗り込みレストランに向かった。到着したレストランはとても素敵な趣のある老舗レストランに見えた。百年ぶりくらいにこんな所に来たので全てが珍しくソニアはジェラルドの腕の中でキョロキョロとし周りを見ていた。ジェラルドは「そんなに動くと骨を折るぞ」と脅し楽しそうに微笑んだ。その顔を見たソニアは自分がもっと若ければこの笑顔を好きになったかもしれないと思い少し悲しくなり俯いた。ジェラルドはソニアを覗き込み言った。「冗談だ。動いていいよ」ソニアはその言葉を聞いて顔をあげジェラルドに笑いかけまた周りを見始めた。レストランの中にいた貴族達が皆立ち上がりこちらを見ている。ああ、そうか。皇帝に抱かれてレストランに来た老人を珍しく思ってみているのね。ソニアは貴族達を見つめた。貴族達は上がりジェラルドに挨拶をし、ソニアを怪訝な顔をし見ている。その視線は何者なのだ?と言わんばかりの好奇な視線だ。その視線にソニアは気分が悪くなった。「最近の若い者は礼儀を知らないのね」ソニアは貴族達に聞こえるようわざと大きな声で言った。それを聞いたジェラルドは「アハハハ、全くだ!!」と大笑いしている。ソニアはなぜジェラルドが大笑いしているのかわからなかったが、百年も経つと笑いのツボも変わったのかもしれない。


 その後特別室に通されジェラルドはソニアを椅子におろしその隣の席に自らも座った。そして料理を注文し「ソニアは俺が食べさせてあげるよ」と言って目を細める。ソニアはそんなジェラルドを見て皇帝も時代が変わるとその距離感も変わるのかと思った。やはり百年の眠りは長いのだと改めて感じた。ジェラルドは料理が運ばれてくると上品にフォークとナイフを扱い食べやすいように切り分けソニアに食べさせる。ソニアの食事のペースに併せて急がせないように絶妙なタイミングで口元に運ぶ。ソニアは感心した。「ジェラルドは気遣いができて老人に優しい子なのね。」そう言いながらジェラルドの頭を撫でた。そう孫だと思って可愛がってあげよう。そんな気持ちでソニアはジェラルドに接し始めた。そんなソニアの態度にジェラルドは少し照れた表情をし優しく微笑む。ソニアはそんなジェラルドを見て改めてこの若き皇帝はとても素敵でカッコいい青年だと惚れ惚れし見つめた。百十九歳のソニアでも微笑むジェラルドを見て胸がときめいた。「ジェラルドはいい男だね!私も若ければジェラルドに夢中になったわね!」ソニアはときめく自分の心がバレぬようニヤリと笑いジェラルドにウィンクした。ジェラルドは耳まで赤くなりその初々しい様子を見たソニアは嬉しくなり言った。「ジェラルド、こんなおばあちゃんに褒められ照れるなんて本当に可愛い皇帝だね!!初めは嫌なやつと思ったけれど、こんな孫がいたら幸よ。」ソニアはそう言って口を開けた。「ジェラルド肉!」ジェラルドはフフっと光り輝くような美しい笑顔を浮かべ肉をソニアの口元に運び言った。「ソニア、ワインは?」そう言いながらジェラルドはソニアにワインを勧めた。「私お酒初めて。百十九歳だけど初めてなんだよね。だからびっくりして死んじゃったらごめん。」そう言って笑いながらワインを受け取り一気に飲んだ。「美味しい、ジェラルド、美味しいわ。もっと下さる?」ソニアは目を輝かせワインを催促した。「ソニア、そんなに急に飲んだらあの世にいっちゃうからゆっくり飲みなさい」ジェラルドは穏やかな声でソニアに言いワインを手渡した。ソニアはそれをまた一気に飲み干しフーッと息を吐いた。お腹も心も満たされたわ!それからナフキンで口元を拭き目に前に置いてあったグラスの水を一口飲んだ。「ごちそうさまでした」ソニアはそう言った時、急に体が火照ってきた。暑く感じるわ?熱が出てきたのかしら?何かがおかしい。「ジェラルド、寿命がきたかも。身体が暑くて力入らない」ソニアは不安げな表情を浮かべジェラルドにしがみつきながら訴えた。「ソニア、それはいかん、すぐに治療しよう」ジェラルドは顔が真っ赤になったソニアを抱えレストランを出た。ソニアは動悸も激しくなり気が遠くなった。そしてそのまま目を閉じ記憶が消えた。


 

ものがたりは続きます。

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