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誕生日の夜


 初代ジェラルドは知っていたのだ。そしてフランシス、ルアーナと同じフランシス家の人間だった。思い出した。「ソニア・フランシス、、私はフランシス、当時のフランシス公爵の娘。兄が家紋を継いで、私は生贄に。ルアーナ様はわたしの血縁者だったってこと?」驚くソニアにジェラルド三世は言った。「ルアーナはジェラルドの曽祖父の時代に大きな功績を上げたフランシス公爵家の娘だった。」「要するに彼女の曽祖父はソニアの兄だ。ソニアの兄はその当時の皇室を支え、自然災害や戦争によって国が不安定になり皇室が民衆から支持をされなくなった時に妹であるソニアを生贄の巫女として捧げ、民衆の怒りを抑え皇室を守った。」


「そのおかげでこの皇室は現在までつづいている。その功績に報いる為に当時の皇帝はフランシス家に女児が生まれ、皇室に男児が生まれたら結婚させようと約束をしたのだ。」


「それがジェラルドとルアーナだった。二人の結婚はその時代に約束したものでジェラルド自身の意思では無かったのだ。当時ジェラルドは特に好きな令嬢や姫がいなかったのでそれを受け入れた」


「けれどルアーナが原因不明の体調不良になったと聞いてその原因はルアーナの曽祖父の妹で帝国のために生贄になったソニアの呪いだと言われ一度ソニアを起こすという流れになったのだ。そこでジェラルドはソニアに出会ってしまった。後はソニアが知っている流れだ」


 ジェラルド三世はソニアの手を繋いだまま言った。ソニアは驚き何も言えなかった。走馬灯のように三百年前の事を思い出した。ジェラルドはソニアと名前をつけてくれたけど、本当はソニアがフランシス家の人間だと知っていた。ソニアとルアーナは血縁関係があるとルアーナ自身は知っていた。だけどその話をソニアに話せばソニアがルアーナに対して自由に出来なくなるとジェラルドは思ったのだ。ジェラルドはソニアには何かに縛られる事なく自由でいて欲しかった。それがソニアの魅力でありジェラルドがソニアに対し唯一出来る事だった。だから今もソニアに自由を与えてくれている。ソニアは自分の肖像画を見つめ切なくなった。ジェラルドは私の知らないところで私を大切にしてくれていた。でもふと疑問が浮かんだ。「どうしてこの肖像画はここにあるの?」私の肖像画などルアーナは見たくないはずだ。それにこれはソニアが生きていた時代に描いたものでその当時はフランシス公爵家にあった。「ルアーナがフランシス家から持ってきたそうだ。ルアーナがソニアに対する罪意識なのかわからないが、三百年前からいまでも毎日花が飾られている」ソニアは衝撃を受けた。あのルアーナが?私に対し罪意識を?なぜ?ソニアはその場に座り込ルアーナの事を考えた。ルアーナは私を嫌いだったはず。でもジェラルドが私を愛してくれていた事をルアーナは知っていた。ルアーナはどんな思いでこれを?なぜ罪意識を?本当に苦しかったのはルアーナだったのでは?ソニアの瞳からポロポロと涙がこぼれ床に落ちた。

「ごめんなさい、私が起きたばかりに、私が邪魔したせいでルアーナ様に悲しい思いをさせてしまった。どうしよう、今さらこんな事を知っても、謝りたくてももう謝れない。」ソニアは両手で顔を覆い泣き出した。「ソニア、きっとルアーナも同じことを思ったはずだ。だからこそこの肖像画がここにあって、三百年もの間毎日花が飾られているんだ。」ジェラルド三世はそう言って小さな手でソニアを抱きしめた。ソニアもジェラルド三世を抱きしめた。


「ジェラルド三世様、ここに連れてきてくれて本当にありがとうございます!ソニアは沢山の愛をもらっていたと知りました。本当に本当に感謝しています」ジェラルド三世は涙を拭うソニアを見つめ優しく微笑みその頬にキスして言った。「ソニアは我々の大切な人なんだ。三百年前も今も」


 

それから二人は手を繋ぎジェラルドの肖像画のソファーに戻った。「ジェラルド三世様今日はとても良い時間を過ごせました。ありがとうございました!」「時々こんな時間も取ろう」そう言ってジェラルド三世は小指を出した。その指を見てソニアは昔ジェラルドとの約束を思い出した。

「ジェラルド三世様、私は約束を守った事が無いのですが今度こそ守ろうと思います。私の可愛い天使の為に!」そう言って指を繋ぎ約束をした。ジェラルド三世は楽しそうに笑っていた。


 それから二年の月日が経った。ソニアの小さな天使は少年になった。

 背も伸びて今では同じくらいになり、美しい金色の髪は少し長めになり肩まであった。顔も幼さが消えつつあり正真正銘の美少年に成長した。ソニアはそんなジェラルドの成長を姉のような感覚でも守っていたが、ジェラルド三世は不服そうだった。「ジェラルド三世様、昨日のパーティーで沢山の令嬢から刺繍のハンカチを頂いたって聞きましたわ!さすが私の天使ね!」ソニアは美少年になったジェラルド三世に言った。「別に嬉しく無い。」ジェラルド三世は興味なさそうに言った。全くこの子は!「ところでソニア、その手はどうしたのだ?」ジェラルド三世はソニアの手の怪我をみて聞いた。「あ、、。こ、これはさっき転んでしまって」ソニアは咄嗟に嘘を言った。ジェラルド三世はソニアの手首を掴み、手の内側に真横についた切り傷を見て言った。「私に隠し事は通用しない。これは切傷で通常こんな風に切り傷が出来る事は無い。本当の事をいえ」嘘をついたソニアに対しジェラルド三世は怒っている。ソニアはその場を収めようと困り顔を浮かべ言った。「ジェラルド三世様、怖いわ。怒らないで」ソニアは掴まれている手首をジェラルド三世の指から外し逃げて行った。

 

「ああ、危なかった!ジェラルド三世様は目ざといんだから気をつけなきゃ!」そう言ってソニアはお城の厨房に入って行った。三ヶ月後にジェラルド三世は誕生日を迎える。ソニアはジェラルド三世のために手作りのケーキの練習をしている。手の傷はうっかり包丁を落としそうになって素手で掴んだ時にできた傷だった。とにかく秘密にしたくてなんとか誤魔化したが、きっとジェラルド三世は徹底的に調べるだろう。「うーん困ったわ」ソニアは手の傷を見つめ考え込んでいた。「ソニア様いかがされましたか?」料理人のジェイコムが声をかけてきた。ソニアは先程の経緯を話した所、「良い案があります」と言ってソニアにりんごの剥き方を教えてくれた。ウサギの形になったりんごをソニアに渡し「ジェラルド様にはこれを練習して切ったといえば良いですよ!」と教えてくれた。ソニアは早速りんごの皮剥きを練習をした。

 

 そしてその夜ジェラルドの部屋にりんごを持って訪ねた。ジェラルドは不思議そうな顔をしソニアを部屋に招き入れソファーをすすめた。ソニアはソファーに座り包丁を取り出してリンゴのウサギを作ってジェラルド三世に渡した。ジェラルド三世は本当に驚いた顔をし、でもとても嬉しそうにそのりんごのウサギを見ていた。「ソニアそれで手を切ったのか?」ジェラルド三世が聞いた。「ジェラルド三世様に内緒で驚かせようと思って、、」そう言ってソニアは笑ったらジェラルド三世は急に立ち上がりソニアを抱きしめた。美少年になったジェラルド三世に抱きしめられると流石にドキドキしてしまう。なんとも言えない気持ちになる。「ソニア嬉しい。ありがとう」ソニアはジェラルド三世がこんなに喜んでくれるとは思っていなかった。「いつでもジェラルド三世様のためにりんご剥きますからね!」と言ってジェラルド三世を抱きしめた。

 


 

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