ソニア・フランシス
十歳の小さな天使は皇帝になるべく沢山の勉強をしている。 ソニアはいつものようにジェラルドの肖像画の前のソファーで本を読んでいるとどこからともなく小さな天使がやってきてソニアの隣りに座り分厚い本を広げた。「ジェラルド三世様、何の本を読んでいるのでしょうか?」
ソニアは小さな天使の方に少し寄り掛かる位近づき、小さな天使の頭に自分の頭をコツンと乗せて聞いた。「ああ、面白い本があってな、絶対王政と民主政治という二つの対局にある、、」「えー!ジェラルド三世様はそんな難しい本を読んで居るのですか?」ソニアの言葉を聞いた小さな天使はキョトンとした顔で言った「難しい、、そうかもしれないがいずれ私がやらねばならない事だからな。」そう言ってまた本を読み出した。ソニアは幼いジェラルド三世が責任という大きな重石を持って生きている事に胸を痛めた。「ジェラルド三世様、まだそんなに小さいのに人生急ぎすぎて勿体無いわ!私と一緒に散歩しませんか?」そう言って立ち上がりジェラルド三世に手を差し伸べた。ジェラルド三世は「フフフ」と笑って本を閉じソニアの手を握った。「ソニアに誘われるなご嬉しいな」と言ってソニアに微笑んだ。その可愛らしい笑顔を見たソニアはたまらなくなりジェラルド三世を抱きしめた。もう!本当に可愛いい!!
ソニアはジェラルド三世の手を握り言った。「さあ一緒に探検しよ!私三百年前にこのお城を探検しようとしたけど出来なかったの。だから今日ジェラルド三世様としよう!」ソニアはそう言って歩き始めた。「ソニア、三百年前にどうして出来なかったのだ?」ジェラルド三世は青い瞳をキラキラ輝かせながら、でも少し悲しげな表情を浮かべソニアに聞いた。「三百年前にお城に連れてきてもらって折角だから探検しようと部屋を出たらね、ジェラルドとその恋人だったルアーナ、あ、ジェラルド三世様のずっと昔のお祖母様のルアーナ様、、、、」
ソニアはルアーナを思い出して、ああ、二人は結婚して子供をつくってこの城にいたんだ。急に悲しくなって歩くのを止めてしまった。「ソニア?」小さな天使が心配そうにソニアの顔を見た。でもそのお陰でこの小さな天使が生まれ今ソニアの心配をしてくれている。ソニアは小さな天使を抱きしめた。ジェラルド三世も何も言わずソニアを抱きしめた。
「ジェラルド三世様、ルアーナ様のおかげで優しいジェラルド三世様に会えました。ありがとうございます」ソニアはジェラルド三世の頬にキスをしまた歩き始めた。小さな天使はソニアの手をキュっと握り返事をした。「あ、そういえば私はこのお城の事何も知らない、ジェラルド三世様のお部屋はどこにあるのですか?」ソニアは聞いた。「ソニア、気がつかなかった?ソニアの部屋の隣りだよ?」ジェラルド三世はソニアを見上げ言った。「まあ!!!それは光栄ですわ!!いつからそこに?」ソニアは全然知らなかった。「確か、、私が三つの時からかな。」「え??三歳??どうして三歳の時から??」ソニアは驚いた。三歳ってまだ子供じゃない!ジェラルド三世はソニアの目の前に立ち言った。「三歳の時に父上からソニアを、眠りの乙女を見せられて、それからソニアのそばに居たくて、」「え????ジェラルド三世様,三歳ですよ?!三歳から私を大切に思って下さったのですか?!」ソニアは戸惑い聞いた。「ソニア、年齢は関係なくないか?」ジェラルド三世は年齢を言われ少しムッとした口調で言った。 「いやいや、三歳って。ジェラルド三世様、ソニアは感動しました。そんな頃から大切に思って頂いたなど私は本当に幸せですね。一人じゃなかったんだ。」ソニアはそう言って小さな天使を抱き寄せて「私の小さな天使様大好きよ」と頭を撫でた。「ソニア、子供扱いしないでくれ、私は本気なんだ!」と怒ったがそれすら可愛かった。
ジェラルド三世は不服そうだったがソニアは暖かい気持ちになった。
二人が手を繋いで歩いていると使用人や騎士達が驚いた顔で二人を見ている。ソニアは不思議に思いながらジェラルド三世と城の中を歩いた。お城の大きなエントランス付近にさしかかった時、一人の男性貴族とその横に薄いブラウンの髪にグリーンの瞳のお人形のような娘がこちらを見ていた。ソニアは一応会釈をし通り過ぎようとした時その貴族の娘が声をかけてきた。「ジェラルド三世様!」ジェラルド三世はソニアの手を繋いだまま止まった。「何か用か?フィオナ令嬢」ジェラルド三世は笑顔なく令嬢に言った。え?小さな天使とても冷たいわ!!ソニアは心の中でハラハラした。私にはそんな冷たい口調や態度を見せたことがない。「そちらの方は?」フィオナ令嬢はジェラルド三世のそっけない態度を気にする様子もなくソニアを睨見つけている。うわぁ、どう見てもこの令嬢から嫌われてるわ。でも私も一応大人だし、、ソニアは自己紹介しようと向き直そうとした。「彼女は眠りの乙女のソニアで、私が唯一愛する人だ」ジェラルド三世は言った。ああ、小さな天使、場を読んで欲しいわ。ソニアは小さくため息をはいた。 「まあ、ご冗談でしょ?こんな年上のおばさん」フィオナ令嬢はソニアを見てわざと大きな声で言った。「アハハハ!!!」ソニアはフィオナの言葉に笑い出した。ジェラルド三世とフィオナ令嬢は驚いてソニアを見た。
「フィオナ令嬢様、おばさんと仰って下さってありがとうございます。私は四百二十歳ですのよ!おばさんではなくておばあちゃん!でも若く言ってくださって嬉しいですわ!」そう言って私はフィオナ令嬢にウィンクした。「フフフ、流石ソニアだな。さあ、行こう。では失礼」ジェラルド三世は手を繋いでいるソニアを引っ張りその場から立ち去った。フィオナ令嬢は悔しそうに二人を見ていた。
「ジェラルド三世様、いいの?すっごく可愛いお人形のような令嬢だったわ!」ソニアは言った。
「はぁ、ソニア、私はあんな娘興味がない」そう言ってジェラルド三世は怒っている。その様子を見てソニアはジェラルド三世を愛しく思った。全く可愛いんだから!
「ところでジェラルド三世様、お城の中でおすすめの場所はありますか?」「そうだなソニアを連れて行きたい場所がある」そう言ってジェラルド三世は歩き出した。
長い廊下を歩きその先に吹き抜けの広間があった。その広間は天井がガラスになっており柔らかい光が上から降り注いでいる。光溢れる美しい広間でそこには沢山の花が飾ってあった。その空間はどこか暖かさを感じる優しい雰囲気が漂っている。
「ジェラルド三世様、素敵な広間ですね。ここは?」ソニアは聞いた。ジェラルド三世は黙ってソニアを奥の壁に飾ってある絵画の前に連れて行った。ソニアはまじまじとその絵画を見つめた。その絵画には自分が描かれていた。「これ、、私?」そこにはソニア・フランシスと書いてあり、ソニアという名前は本名だった。