悲しい別れ
「ジェラルドどうして抱きしめるの?」ソニアはハグの意味を知りたくなりジェラルドに聞いた。「ソニア、嫌か?」ジェラルドは言った。「嫌、、嫌じゃないよ、、」そう答えると「じゃあ少しの間このままで、、」そう言ってソニアの頭にキスをしジェラルドは強くソニアを抱きしめた。ソニアは心が震えるほど幸せだった。ソニアは覚悟を決めジェラルドに言った。「ジェラルド大好きだったよ。ジェラルドの幸せが私の幸せだと感じるほど愛してた。こんな気持ちを教えてくれてありがとう。百一年目にジェラルドに出会えて幸せだった」そう言ってソニアはジェラルドから離れた。ジェラルドはもう一度ソニアを抱き寄せ「ソニア、ありがとう」そう言って強く抱きしめた。
「じゃあ満月の夜に迎えにくる」ジェラルドは部屋を出て行った。
その夜からソニアは寝込んだ。途切れる意識の中でジェラルドとの約束を守るためアニエスに言った。「アニエス、ジェラルドとの約束の日が来たら引きずってでも私を起こして、もしジェラルドが迎えに来てくれた時にまだ意識が戻っていなかったらすぐに行くから先に行って待っていてと伝えて、そしてアニエス、眠る私にジェラルドが待っているからと叩いてもいいから必ず私を起こして」そう言ってソニアは目を瞑った。
婚約式前日の満月の日、ソニアの意識はほとんど戻らない状態になっていた。アニエスはそんな状態でもソニアに美しいドレスを着せ髪を整え眠り続けるソニアに言った。「ソニア様ジェラルド様との約束の日です。今晩ジェラルド様が迎えに来ますソニア様どうか起きて下さい」ソニアはおきない。「ソニア様!ソニア様が愛するジェラルド様がソニア様を迎えに来ます!どうか起きて下さい」ソニアは眠ったままだ。「ソニア様」アニエスは朝からずっとソニアに声をかけ続けた。日が落ち大きな月が出てきた。「ソニア様、ソニア様時間がありません、ジェラルド様との約束はたしてください。」「ソニア様!!」アニエスは泣きながら眠るソニアを揺り続けた。「ア、アニエス」ようやくソニアの意識が戻った。「ソニア様!!!!!!」「アニエス、、ジェラルドは?」「まだいらっしゃっていません、ソニア様今のうちにに準備を、、」「アニエス、ソファに移動するわ」ソニアはゆっくりと立ち上がりアニエスに支えられてソファーに座った。アニエスは急いで暖かいお茶を用意してソニアに飲ませ、髪をもう一度整えた。ソニアの髪は随分長くなりソファーに座っていると床に毛先が着くほど長くなっている。それに少し色が変わっていた。起きた当初はブラウンの髪色だったが今はプラチナブラウンに変わっていた。祈りの乙女の姿に戻っていたのだ。もう時間が無い。ソニアはまた深く長い眠りにつく準備が整った。その為意識がある時間がほぼ無くなっていた。今もソニアはギリギリの所で意識を保っている。気を緩めたらもう二度と起きないとわかっていた。少し意識が遠のいてきた時にジェラルドが迎えに来た。アニエスにジェラルドに先に行っていてと伝えてもらい、ソニアはアニエスに掴まり意識朦朧となりながらジェラルドの待つテラスに向かった。テラスに入る前まではアニエスに手伝ってもらいそこからは最後の気力を振り絞ってジェラルドの元に行く、その時点で例え意識を失ってもジェラルドとの約束はなんとか守れる。その後は眠り続けるだけだから恐らくもう二度とジェラルドに会えない。ソニアが眠ると言うことはルアーナの病は治りソニアはこの世界に満足したと言う事だ。祈りの乙女としてフローエン帝国を守る。それがソニアの宿命なのだ。でも、最後にジェラルドに会える。
本当に幸せ。
ソニアは途中で何度も倒れながらようやくテラス前まで来た。ソニアはノックをしたが返事が無い。だがもう自分には時間が無いとわかっていた。ここにジェラルドが居なくても私がここ来る事がジェラルドへのメッセージになるわ。ソニアはそのままテラスに入った。アニエスはソニアを見送り頭を下げた。次呼ばれる時はもうソニアは眠っているとわかっている。二度と会えない。ドアを閉めアニエスは泣いた。
ソニアはテラスに入ったがジェラルドの姿はなかった。しかしソファーの上にジェラルドのマントと剣が置いてあった。肌身離さず持っていた剣。ジェラルドのすぐに戻るからまっててという伝言だと分かった。しかしソニアはもうジェラルドを待つ時間が無かった。意識が遠のく。ソファーに倒れ込みジェラルドのマントと剣を胸に抱いた。マントはこの国の紋章が刺繍されておりジェラルドそのものを象徴している。剣は重く冷たいけれど常にジェラルドを守りこの国を守っている。ジェラルドが今この場所に居なくてもジェラルドの分身だからソニアはジェラルドを感じられた。少し首を上に傾けると大きな月が青々しく光っていた。その光は強くソニアはその引力に贖えない。月にソニアの意識が引っ張られて行った。「ジェラルド、お互いに約束半分だけ果たせなかったね。」そう呟いてソニアはマントにキスをし、剣にもキスをした。そしてそれらを抱きしめ目を閉じた。ソニアの瞳から涙が溢れ頬を伝いソファーに落ちた。「ジェラルド、愛しています」ソニアは意識を失った。
ジェラルドはルアーナが倒れたと報告があり躊躇したがすぐにマントと剣を置いてルアーナの元に行った。ルアーナは明日のことが不安になりジェラルドに会いたかっただけだった。ジェラルドは何も言わずすぐにテラスに戻った。テラスのドアを開けた時ソニアが来ているとすぐに気がついた。急いでソニアの元に行った時ジェラルドは息が止まった。
ソファーに横たわるソニアはジェラルドがソニアを起こす時に洞窟の中で見たソニアになっていた。髪の色、長い髪、美しく幻想的な雰囲気、そして悲しいほど美しい涙。ソニアはジェラルドのマントと剣を胸に抱きしめ眠っていた。もう二度と起きないことは本能的にわかる。だがジェラルドはソニアを抱き抱え叫んだ。「ソニア!お願いだ、目を覚ましてくれ」「ソニアお願いだ、ソニアまだお前に言っていないことがあるんだ」ジェラルドは自分の指にはめていた指輪をソニアの指にはめてソニア頭を優しく撫で流れる涙を指で拭いソニアにキスをした。「ソニア愛している、君を愛しているんだ!」そう言ってもう一度キスをした。ジェラルドはその場から動けない。「ソニア眠らないでくれ」「ソニア俺を置いて行かないでくれ!」「ソニア!ソニア!」何度もソニアの名前を呼んだ。だがソニアは目覚めることは無かった。それでもジェラルドは諦めきれない。「ソニアお願いだ、目を目を覚ましてくれ」「ソニア、ソニアがいないこの世界でどう生きればいい?」「ソニア、ソニア!!」
東の空が明るくなる頃ジェラルドは眠るソニアを抱き抱え亡き母の部屋に戻った。全てを知っていたアニエスは嗚咽を漏らしながら出迎えた。ジェラルドはソニアを優しくベットの上に寝かせソニアにキスをした。