誰の為に眠るのか、誰の為に生きるのか 死ねない私の愛の物語
はじめましてねここと申します。
この作品は2023年に書き上げたものですが誤字脱字や拙い文章が気になり手直しいたしました。
内容はほとんど変わっておりませんが、多少付け加えた部分もございます。まだまだ下手で申し訳ありませんが宜しければ読んでください。
皆様にいただいたイイネを消してしまうのが惜しく上書きいたしました。
ありがとうございました。
【あらすじ、?。 →?】 誰かの声が聴こえる。
再び生贄になった其方の為に再会の機会を与えよう。
何?
何の事?ここは、どこ?
―ああ、思い出した。私は死ぬのね。この深い海の底に沈んで行く。いつか、また、会う事が出来たらあの日のように精一杯愛してもいいですか?
「おい、おばさん起きろ」
誰かの声が聞こえる。これは夢の中の声?と思いつつも「おばさん」という単語が気になった。だって私はまだおばさんと呼ばれる年齢ではなく眠りにつく前は十八歳の少女だったから。
眠りと覚醒の間をフワフワした気持ちで行き来していたらいきなり両頬ををペチペチ叩とかれた。一体何?私は眠りについているの。乱暴はやめて。
「おい、おばさん、いい加減起きろ」
男の声が聞こえる。何?起こさないでよ?意識朦朧ながらも覚醒の方向に引っ張られゆっくり目を開けた。顔の間近、目の前に物凄いハンサムな男性が私を覗き込んでいる。「お、やっと起きたか」その男性は輝くような金色の髪に青い瞳まるで童話に出てくる王子様のような美しい男性だ。
「あの、もう寝なくていいから好きに生きてよ。俺皇帝なったから色々変えようと思って、まずおばさん起こす事から始めているんだ。」その男性は柔らかい笑みを浮かべながら言った。えっと?この男性は何を言っているの?自分の事皇帝と言った?起きたばかりの私には何一つ状況がわからない。そもそも私はフローエンという国の安寧を祈って十八歳の時に生贄の巫女として選ばれ海底の洞窟で祈りを捧げその後深い眠りについた。でもこの自称皇帝に起こされそんな事を言われても頭が回らない。
「あ、あのー」私は頭をフル回転し思い切って目の前の自称皇帝に声をかけた。「ん?おばさんなんか質問があるのか?」彼は少し首を傾け私の方を向き言った。「お、おばさん?」おばさんって誰?私の他に誰かいるの?周りを見渡したが私と目の前にいる自称皇帝しかここにいない。おばさんなどこの海底の洞窟にはいない。そんな私の様子を見て笑いながら言った。「おばさんはあなたの事だよ。だって随分昔から寝ていたんだろ?」そう言って髪をかき揚げながらこちらを見た。その姿はオーラがあり美しかった。本当に皇帝かもしれない。でも、おばさんと呼ばれ寝ていたと言われた事に少し腹が立った。
先程この男はこの国の皇帝になったと言った。もしまだこの国がフローエンならば私はこの国の為に自分の人生を諦めて生贄になったのだ。皇帝ならばそんな私を神と崇めてもおかしくない。もっとありがたがってくれても良いはずなのにおばさんと呼ぶとは本当に失礼だわ。目覚めて早々怒りが込み上げてきた。これは断固として文句を言いたい。
「あのですね、そもそも私はこの国の安寧の為にベアトリーチェ以来数百年の間禁止されていた生贄になったんです。十八歳の花盛りの乙女が人生を諦めてこんな暗くて寂しい海底でたった一人祈りを捧げて眠っていたのですよ?それをいきなり起こしておばさんはないでしょう!あなた皇帝だったら私に感謝しても足りないくらいの存在なのですよ?」そう言いながらここにきた時の事を思い出し唇を噛んだ。十八で人生を諦めるなど貴方にその苦しみが理解できる?
「あ、すまん、配慮に欠けていたな。申し訳ない」皇帝は素直に謝ってきた。頭を下げる皇帝を見てちょっと意外に感じた。悪い人じゃないみたい。私はため息を吐きいった。「理解してくれれば良いですわ」「じゃあ、あなたのことをおばさんと呼ばずに祈りの乙女と呼ぼう」皇帝は呼び名の提案をしてきた。しかし先ほどまでおばさんと呼ばれたのに今更乙女はないだろう。「私、ちゃんとした名前があります!」皇帝は優しく微笑み言った。「ああ、では名を教えてくれ」そう言いながら私の手をそっと持ち上げた。その姿はスマートで一瞬胸が高鳴った。私は小さく首を左右に振り冷静さを取り戻し皇帝の顔を見つめ言った。
「私の名前は…………………………あれ、なんだったけ?え?うそ!覚えてない?え?名前わかんない!!」どうやら寝ている間に自分の名前を忘れてしまった。こんな事ってあるの??私は俯き懸命に記憶をたどるが思い出せない。嘘!!ショックのあまり呆然としながら顔を上げ皇帝の顔を見た。「まさか自分の名前忘れたのか?」皇帝は笑いを堪えこれず口に手を当てている。そうしながらも私をチラリとみてすぐに背を向けた。背を向けても笑っていることはわかる。肩が震えている。そんなに笑う?めちゃくちゃ嫌なやつ!!私は泣きたいのに。自分の名前も思い出せないなど一体どれ位眠っていたの?背を向ける皇帝の背中を睨む。こんな男が治める国のために自分の人生を投げ出すだなんて。本当に私は情けないし悔しい!
「いやー、自分の名前忘れるってすごくないか?やっぱおばさんと呼ぶか!」そう言って皇帝は振り向き楽しそうに笑いはじめた。ひどい!なんなの?なぜこんな事言われるの?怖い思いをしてこの国の為にと犠牲になったのにこんな皇帝の為に自分の人生や、名前まで捧げたことが本当にアホらしく情けなく、とうとう怒りが爆発した。
「ちょっと!あなた!皇帝とか言ってるけど私はあんたのために人生諦めたなんて、、許せない!しかも自分の名前だって忘れちゃったのにそれを笑って!もう馬鹿馬鹿しくてやっていられない!!このバカ皇帝呪ってやる!!」私は怒りが頂点に達して眠っていた場所に置いてあった花瓶や燭台や自分に着けられたさまざまな装飾品を引きちぎって皇帝に向かって投げつけた。皇帝は驚いた顔をしたがすぐに楽しそうに笑い上手に避けている。もー!!それが余計に腹が立つ。周りにあるランプやら食器やら手当たり次第投げつけた。あまりに怒る私を見て皇帝は言った。「わ、わかったわかった、名前あげよう」皇帝はそう言って両手をあげ降参の仕草をした。私は手を止め皇帝を睨みつけた。「あなたは今日からソニアだ。よろしくソニア!」皇帝はそう言って優しく微笑んだ。その微笑みは上品で美しくつい見惚れてしまった。「気に入らない?」皇帝は何も言わない私を見つめ首を傾け聞いてきた。私はその可愛らしい仕草に負け言った。「ソニア、、ソニア良い名前じゃない!ありがとう、、えっと皇帝?名前は?」そういえば皇帝の名前を聞いていないことに気がついた。「あ、俺はジェラルド オズヴァルドだ。」「ジャラルド陛下?と呼べばいいの?」「なんでも良いよ。」ジェラルドは笑いながら答えた。「じゃあ、ジェラルドと呼び捨てね。私をおばさんと呼んで怒らせた罰として!!」この世界に皇帝を呼び捨てする人間はいない、ソニアはわざと意地悪をしてそう言ってどんな返事が返ってくるのか待っていた。「ああ、いいよ。ソニア許す。ジェラルドと呼べ」ジェラルドはなんでもないという表情で私を見て言った。「え?ちょっとジェラルド、本当に呼び捨てなのよ?怒ったりしないの?」私は驚いて念を押しながら聞いた。「だってソニア、俺の為に人生諦めて名前も忘れちゃったでしょう?なんか気の毒でそれくらい許すよ。改めてすまないな。」ジェラルドはそう言って私に頭を下げた。皇帝にそうされると思わなかった私は慌て言い訳を言った。「あ、久しぶりに起きたからなんか鬱憤溜まってて、つい怒っちゃってすみません。」そう言って素直に謝った。「そうだよな、ソニアは百一年と二日眠っていたからな」ジェラルドが頷きながら言った。「え?私そんなに眠っていたんだ。」この洞窟に入ったのは昨日のように感じたが実際の年月を聞いて私は少し怖くなった。「そう考えるとおばさんじゃなくておばあさんだな」ジェラルドは楽しそうにソニアの顔を見て言った。「確かに、私は百十九歳か、、、」私もつい納得してしまった。ちょっとまて、私の気持ち十八歳のままだけど、この顔や体はおばあさんになっているの?ここには鏡がない。今の自分の姿がわからない。「ちょっとジェラルド、鏡、鏡ある??」不安になり自分の姿を確認したくなった。折角百一年ぶりに起きたのに見た目が百十九歳で心は十八歳の乙女だなんて辛すぎる!!「鏡?ないけど、、どうした?」ジェラルドは不思議そうな顔をして私を見ている。「あの、私ってやっぱ百十九歳の見た目なのかな?自分じゃわからなくって」なんとなく不安だったので遠慮がちに聞いた。「アハハハ、そうか、わかんないよな、気の毒で言いたくなかったが、すっごいしわくちゃだぞ」ジェラルドは笑いながらも少し申し訳なさそうに言った。
ものがたりは続きます。