《踊る壱》
《踊る壱》
******
《XX山脈地区、集落跡地》
そこは世界各地の残党、その筆頭がモニターを通じて集まった場所。
『我々はある存在に、脅かされている』
『人間の、小娘の姿をした一人のオウガと、その仲間達によって』
名は知らず、黒龍と共に行動したことから、龍の女と呼ばれている。
『数年前から噂があったが、中央区の襲名式からそれは真実となった』
多くの歓声を鎮め、爆炎と死骸で散らかされた報道は、多くの者達を注目させた。
『何故今まで確認されなかった《ヒト型》が、現れたのか』
人の造形を模しながらも、他の生物の特徴をとりいれた存在のオウガが多く。
人の造形を捨て、別の異形として派生する種も徐々に増え始めたのが約10年前。
黒き龍も、その流れならば、10年オウガとして生き、
少女に味方する理由はないハズだ。
彼女が襲撃した場所を撮影した資料が配布され、皆目を通す。
『・・・・・・』
多くの者が、古びたモニターで映し出された彼女による惨劇を見せつけられる。
『白き風に、私達は新たな姿として適応しても、彼女はそうではない、のか』
皆、その言葉の後に、口を閉ざした。
彼らは理性ある人間から、理性あるオウガとして生まれ変わったハズ。
しかし、大きく嫌な顔をしている一部の者は、ヒトであることを忌み嫌い、見下し、
オウガである自分を賛美してる側面を持っていた。
『彼女は、我々の業が作り上げた歪みだ』
一人が口を開いた。
『人々が争いを続けた様に、我々もまた、オウガ同士での戦いに、なるというのか』
そしてまた一人。
『だからこそ、私は、皆を集めた』
誰よりも重く、低い言葉で、その一体が発する。
『彼女を止めたものこそが、真の・・・・・・王だ』
龍の女を狙った争いは、難しい。
そして、もしも龍の女を討ち取った事実が欲しいが為に、
他の勢力と敵対するのも、後々不利な立場に変わってしまう。
『彼女は試練なのだ、我々《上位たる者》の。分かっておるのだろう?』
その重い声の主以外の者達が、睨み合う中、話は終わった。
******
激しい波が大きな音をたて、岩を削る崖の上。
そこに純白の女とも言うべき、ツクモが、白き鳳凰と共に立つ。
「《ノヴァ》、ここで良いんだな?」
鳳凰の名はノヴァ。ツクモはその翼に、導かれた。
『ぎゃははははははははははは、早くこの俺に拝ませてくれよ、《お友達》の姿をよお』
翼を折りたたんだ悠々しい姿とは裏腹に荒々しい言葉をクチバシから発するノヴァ。
「・・・・・・・・・」
ツクモは荒海に向けて手を伸ばした。
そして辺りに吹く潮風が、一層強さを増し、海へと向かう。
その風は竜巻となって、海に渦を起こし、その渦から現れたのは・・・・・・。
美しい翠に輝く蛇。それは翼無しでも宙を泳ぐ《海竜》で・・・・・・。
大いなる姿を人がみれば、《青竜》とも例えられただろう。
『だははははははははははははははははは、伝説の竜にしては、少し色が落ちたか?』
『・・・・・・』
『で、お名前は?マイフレンドお?』
『・・・・・・《カエサル》』
大きな顎を開かず、その青竜は答えた。
『よろしく、カエサル、一緒に黒龍アヴラムを倒そうぜえ。きゃはははははは』
大いなる2体の存在の間にいたツクモは、彼らが巻き起こす風圧の中で、
白き髪と白衣を揺らした。
初稿 2018/07/03 04:54




