《群れた流星》
《群れた流星》
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エゾリーが探知した新たな隠れ場所で翼を休める龍と少女。
凍結しかけた髪を整える為に向こうでコソコソとしてるエゾリーに対して、
黒龍アヴラムは霞んだ記憶を脳内でたぐり寄せていた。
『明日は食料探しか』
人だった頃、少年時代には謎の病---今の《白き風》が流行っていた。
激しい体の新陳代謝から始まり、
多くの生物が肌から白塩や白い角質を排出していきながら絶命する病。
その後、化け物として身体を変異させ、蘇る。
人間だった彼はそれに免疫があり、徴兵され、特殊部隊に入隊。
男女関係無く、大きな施設で暮らしていた。
親族も生活の補助を受け、感謝される。
『・・・・・・』
恋もした。叶わぬ恋だと自覚はしても、
愛する女や友、そして親族を失い続ける日々。
己はあと何年、戦えるか。
自問自答の中で、決戦とも言えた一夜を迎える。
《大いなるもの》
人類側は、空を舞い、そして地上からも多くの兵器を放つ。
爆炎と煙が巨影をのみ、進行を抑えようとする。
その後の記憶が、ブツリと消えていた。
気が付けば、冷たくなっていく血まみれの身体を這いずらせ、
天へ向かって腕を伸ばしていた自分を、今は苦笑いしてしまった。
きっと、瀕死状態の自分は、そこで病の抵抗力を失い、化け物になってしまったのだ。 ここまでは予想がつく。
だが、化け物として変異する中で、自分は長く眠っていた様だ。
目覚めた時には、ジークがいて・・・・・・。
---全てを、根絶やしにする。
そう宣言する彼女に、己は力を貸した。
だが、共に戦うことに、疑問を抱かない訳では無い。
化け物の言葉を理解すれば、その断末魔や命乞いに、
人間だった頃の自分が何度も何度も、正義を問いかけてくる。
---貴方のことを、愛している。
それでも、冷たいジークの手の平が、鱗を優しく撫でながら、身を預け、
唇を動かす一言が、過去の温もりと重複する。
---アヴラムといると、とても安心する。
彼女の言葉が、靄やノイズの掛かった一つ一つの過去の後悔を喚起させ、
彼の迷いを払うのだ。
彼女と共に生きると言うことは、その逆でもある。
---最後は、私と貴方で・・・・・・。
その約束が果たされるのは、いつになるだろうか。
雑木の影に隠れた龍は、首を伸ばし、木々の枝や葉の隙間から夜空を覗く。
ヒトが居なくなり、オウガ達が文明を再利用してるであろうこの世界。
未だ都市部の夜空は、満点の星空ではないらしい。
遺された自然の山奥の場所から、アヴラムは多くの煌めく星々を拝んだ。
その星々の輝きにまじって、一閃二閃の流れ星が視界を過ぎる。
---今日もありがとう。
アヴラムは何を、願ったのだろう。
初稿 2018/06/28




