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018_どこへ行こうか?

第一話(第一章)エピローグ。



 結晶(デッキクォーツ)を作る。


 今回のことでかなり消耗してしまったからね。公邸の宿舎に厄介になっていた時には、さすがに作るわけにはいかなかったし。監視されてたようなもんだから。


 というか、どういうわけかお嬢様に気に入られたからなぁ。命の恩人とかになると、そういうものなのかなぁ。


 素顔だったらともかく。下級生の女子からやたらと告白されたしなぁ。同級生は私の変なところで苛烈な性格を知ってたから、そんな無謀はしなかったし。


 なにせ、キレたら自分の手が骨折するレベルで殴りつける女だし、私。


 そんなことを考えつつ、結晶をつくる。


 水晶みたいなものだけれど、これはあれだ、ファンタジーでいうところの、いわゆる魔石なんてものに近いものだろう。


 精神力の結晶?


 まぁ、よくわかんないや。神様から貸与された力だし。


 薄い黒色の結晶を作り出す。ほんのり透明な黒色の円柱の結晶。ショットガンの弾丸と同じサイズだ。

 仮面のベースとする動物は毒ヘビのブラックマンバ。ジョブは暗殺者。モードは貫通(ペネトレイト)から致命(クリティカル)に変更しよう。“致命”。一定以上のダメージを与えることで、問答無用で死をもたらすスキルだ。

 日本語では同じ“致命”だけれど、“クリティカル”と“ヴォーパル”では効果が変わる。【這いずるモノども】に死をもたらせるのは“ヴォーパル”のほうの致命だ。“クリティカル”の方は無効化される。ただ“ヴォーパル”は制限が掛かってるから、好きにつけられないんだよね。残念。

 能力は赤外線視、振動探知、無音歩行、各種毒。

 うん。まさに暗殺者。盗賊どものアジト襲撃とかには非常に便利だ。使用頻度は一番高い。


 斑模様のあるほぼ不透明な黒色の結晶。

 ベースはブラックジャガー。ジョブは武闘家。モードはなにをつけようか。使った奴にはパリィをつけてたんだけど……うん。パリィのままでいいや。打撃とかつけても多分微妙だし。

 能力は格闘。それだけ。そもそもジャガーは牙じゃなく、猫パンチ最強な猛獣だからね。それで十分。身軽でもあるしね。


 またしても黒色の結晶。こっちは縞模様。

 ベースとなる動物は黒猫。ジョブは忍者。モードは影。

 能力は暗視と無音歩行、そして軽業。

 戦闘系じゃなくて、どちらかというと盗人という感じかな。大抵はブラックマンバで事足りるから、今回みたいに使うことは滅多にないんだよね。実際、忍者作ろう忍者! って調子で面白半分で作った結晶だし。今回は後をつけられたりしないようにしようと使ったけれど。まぁ、無駄になっちゃったんだけれどねぇ。


 次は銀色の結晶。

 ベースはワンコ。キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル。ジョブは騎士王。モードは殲滅。

 能力としては犬だから嗅覚とかあるんだけど、ほとんど使わない。基本、脳筋仕様用の変身だしね、これ。あぁ、あと奇跡を使えるようになるのか。いわゆる祝福系の魔法。とはいえ、それもあんまり使わない。近接戦闘では普通に優秀だから、使用頻度は高いかな。


 深紅からピンクのグラデーションの結晶。

 ベースはウサギ。ジョブは狂戦士。モードは加速。

 能力というか、これは特殊。ウサギといってもヴォ―パルラビット。実のところヴォーパルラビットだけだと、とんでもなく弱かったりするため、狂戦士で補助している形だ。そのせいで時間制限なんてものができたけれど。だから高速機動のできる加速もつけてあるという、ある意味問題だらけの変身だ。なにせ時間経過で自滅必至な変身だからね。

 ただ、馬鹿みたいに強いんだよなぁ、これ。しかも変身中は頭が少しばかりイッてるから、ストレスが解消されるんだよね。まさに『最高にハイってヤツだ』。


 緋色の結晶。形状はバングル。オートアジャスト機能付き。

 ベースは不死鳥(外見は孔雀)。ジョブは炎王。モードは蘇生。

 能力は蘇生(再生)と炎。それだけ。シンプルなだけに威力が異常で、実のところまともには使えない。火炎能力なら火焔魔人のほうが取り回しがいい。

 基本、不死鳥は1回休み回避用の変身。デスペナが怖いからね。とはいえ、デスペナがどんなものかは知らない。これまで1回休み――死んだことがないからね。神様のことだから、きっと妙なペナルティを用意しているんじゃないかなぁ。一定期間幼児になるとか、性転換とか。


 藍色の結晶。

 ベースは青竜。ジョブは打撃魔術師。モードは雷電。

 能力は雷全般。それだけ。

 基本的に打撃魔術師は必殺技用のジョブみたいなもんだしねぇ。いちおう、他のジョブでも使えるけど。今のところ必殺技は、雷と炎、冷気、あとは……光か。いや、光は被害が酷いことになりそう。


 白い結晶。

 ベースは神の(めい)。ジョブは大天使。モードは邪眼。

 これは組み合わせを変えられないんだよなぁ。能力は回復と邪眼。邪眼は基本、なんでも出来るっていう、完全チート能力だ。使い過ぎると失明するけど。時間制限は狂戦士より短くて、連続使用はいいとこ10秒。今回みたい効果をパッと決めるなら時間制限は問題ない。でも起こす効果によっても目に負荷が酷く掛かるから、望んだ効果によっては使用した途端に失明したりする。

 今回は説教代わりに使った感じだけど。あと回復のため。まぁ、回復するだけなら、コアトルがあったんだけれどね。あぁ、あれも見た目は天使か。輪っかがないのと、仮面が蛇なのを除けば。


 今回消費したのはこれくらい。


 あとは、リンダとケイトリンの結晶を補充しておこう。変装用の結晶は大目に創ってあるけど、だからって作らずにおいて「あれ? ない!?」なんてことになったら最悪だからね。あ、ケイトリンはもう使わない方がいいのか。くっ、結構気に入っていたのに。しかたない、茶髪娘のカレンを増やしておこう。あとは新規で……シーラにしとこう。確かオーストラリアでの女性のテンプレネームだったはずだ。花子みたいな。


「補充は終わったかい?」


 むぅ……っと呻いていると、コタツに突っ伏していた神様が声をかけてきた。


「はい。消費分は作りましたよ」

「遊んで―」


 ……退屈なんですね。


「でもその前にご飯食べな―。なんで目が覚めるなり作業を始めるかねー」

「……いや、なんだか空腹を感じなかったので」

「それ、空腹が過ぎた結果だから。知ってるかい? 絶食をすると、一定の時間を過ぎると空腹感が麻痺するんだよ。いまの君はその状態。雑炊あたりをだしてあげるから食べな―」


 コタツの上にポンと土鍋がでてきた。


 卵……じゃなくて鶏雑炊かな? 具材には……刻んだ里芋に鶏肉、そしてもちろん卵。あれ? 消化に良いものをって理由で雑炊じゃないの?


「大丈夫だよー。ちょっとその鶏肉を箸でつついてみな―」

「うわ。簡単にほぐれた」

「それは別個で二時間煮込んだもも肉だからねー。そこまでやっこくなってれば、お腹もびっくりしないよー」

「……どうしました神様。なんだかぐでーってしますけど」

「いやぁ、君が寝ている間に神託を降したんだけどねー。教会のクズ共内乱を起こしやがってさー。なんで僕があのクソの代わりに骨を折らなくちゃなんないんだよー。仕方ないから第7聖女に従えってまともな連中に命令して、あとはぶんなげたよ。でもそれだと第7聖女が可哀想だから、ちょっぴり僕の加護を与えたよ。それと彼女をバックアップしてる第4聖女にも。歳で体のそこかしこにガタが来てたけど全部治したし、お役御免な歳なのに全盛期並みに健康にしちゃったのは、却って可哀想だったかなー。ま、寿命までの30年あまりを健康でいられるんだから問題ないでしょ。縁側で日向ぼっこしながら大往生できるってものだよ」


 なにやってんですか神様。第4聖女、がんばって! としかいえないよ。というかですね――


「なんで第7聖女」

「彼女が勇者を探して放浪してたんだよ。2年前くらいにふたりをみつけて、孤児になってたのを保護してるよ。まだ前世の記憶は戻って無いみたいだねー。多分、8歳かそこらあたりから前世覚醒判定がはじまるかな?」

「あ、問答無用で覚えてるわけじゃないんですね」

「成人時の教会での儀式で問答無用で思い出すけどねー。それまでは運かなー」


 ……本当にお疲れですね、神様。


「ただ僕、あのふたり、嫌いなんだよね」


 ぶふっ!?


 い、いや、これまでの言動から、気に食わないんだろうなぁとは思ってましたけども。


「だってさー。あのふたり『自分はなんて可哀想なの? それもこれも○○のせいよ!』って感じなんだよ」

「……その○○ってなんですか?」

「親だったり教師だったり友人だったり政治だったり社会だったりネコだったりと色々だね。あ、あとポストが赤いのも」


 なんだそりゃ。


「云ったじゃん。根性無しの脆弱ちゃんだって」

「そういや、云ってましたね」

「本当、チャチャや君とはえらい違いだよ」


 へなへなとまたも突っ伏す神様を見ながら、雑炊を口に運ぶ。


 美味しいな、これ。最初はあまりにも薄味でどうなんだと思ったけど、食べつけると凄く美味しい。


 親子雑炊、ってとこかな。見栄えをよくするならあさつきを散らすといいかな。今回入っていないのは、私のお腹の具合を考えてだろう。


「それで、今度はどこに向かうんだい?」

「そうですねぇ。海にでもいきましょうか」

「また突然だね。なんで?」

「いや、お嬢様ににがりだのの話をしていたので」


 こっちの海産物にもちょっと興味があるんだよねぇ。


「なるほど。海の魔獣の刺身をつくると」

「はい?」

「ただサイズがでかいよ。小さいのでも本マグロサイズはあるからね」

「え、捕まえるんですか?」


 なんだか嫌な予感がして思わず聞き返した。


 私は漁をする気はないんだけど。


「釣りをしよう、釣り。やったことはないんだよ!」

「え、神様、降臨とかして大丈夫なんですか?」

「僕の管理世界じゃないし、四六時中見張ってやる義理なんてないよ。そんなことより、君と遊ぶ方が大事だ!」


 ……いまさらだけど、なんか私、妙に神様に執着されてないかな。


「……えっと、お、サバっぽいのがいるな。これ釣って味噌煮にしようよ。なんか1メートルくらいあるけど、なんとかなるだろ」


 ちょっ!?


 いやいやいや、釣り初心者ですよ。そんなの釣れるんですか!?


「最悪、ズルすればいいよ。よし、釣り竿とかの準備は任せておきなー」

「あ、はい」


 なんだか釣りをすることになった。



 ★ ☆ ★



 魚釣りをすることを決定してより2日。やっと体調が回復した。


 私はコソコソとストローツの町をでて、西へと向かって歩いている。東……というか、北東に公国があって、あっちへ進むと面倒そうだからね。北西側にある王国は、いわゆる赤い国っぽいから行くのは却下。向こうにも結界の綻びはあるみたいだけど知らん。


 テクテクと徒歩で進むこと3日。はじめて馬車とすれ違う。


 人通りはすくないねぇ。徒歩で移動している人なんていないといっていい。見かけはするけれど、そういった人たちは狩人とかだ。あとは魔獣狩りをやってる冒険者。


 実際には冒険者というより、荒事専門のなんでも屋って感じだけれど。


 私の外での移動は基本的に徒歩。見知らぬ人と一緒に旅をするとか、私には無理だからね。


 いや、こっちで生活していたら、どれだけ日本が安全安心平和な社会なのかを自覚したからね。


 やー、怖い怖い。そうだね、地球ではあれだ、南アフリカとかメキシコとか、そんな感じだと思えばいいよ。駅までの100メートルでの強盗遭遇率が200%だっけ? そんなとんでもない都市があるんだよね、確か。……よくそんなんで社会が成り立ってるな。


 まぁ、こっちはそこよりは多少はマシかな? いや、スリだのなんだのを考えると、大して変わんないか。路地とか入ると攫われて女として確実に終わるだろうし。で、その後人生が終わるんだ。


 最初の頃は結晶をかなりの頻度でスられたしね。まぁ、呪い効果で戻って来るんだけど。


 気持のよい陽気の中。てくてくと歩く。


 のどかだねぇ……と、のんびりと景色を眺めながら歩いていくと、正面のずっと先でトラブルが起きているのが見えた。


 馬車が2台。ひとつは横転している。そしてチャンチャンバラバラしている連中。


 双方ともに手練れなのか、私がのんびりゆっくり歩いているのに決着がつかない。


 剣での斬り合いなんて、ゲームじゃないんだから斬ったもん勝ちで結構簡単に決着がつくっていうのに、あんだけ乱戦で斬り合ってて、互いに斬られずってどうなってんだろ?


 なんだかまた面倒事に巻き込まれそうだなぁ。


 そんなことを考えつつも、私は歩みを止めることなく、そのトラブルの真っ最中のなかへと突き進んでいくのだった。



着地点がかなりぐだりましたが、ひとまずこれにて終了です。


第二話はネタができたらということで。

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