女の子には優しく??
「おいそこのキミ。そこの溜まった鍋洗ったらちょっと来なさい」
見た目は10代半ばくらいだろうか
金色のショートカットのよく似合う可愛いらしい女の子が話しかけてきた。
鍋洗いを一通り終わらせ
さっきの女の子の元へ駆け寄る
「今日からキミの指導をする事になったシズクよ。よろしく。わからない事があったら聞いてちょうだい」
手短に挨拶を済ませ、彼女は山のように積まれた芋の皮むきへと戻って行った。
(わからない事って…わからない事だらけなんですが…)
とりあえず鍋も大方洗い終わったので
シズクのやっている芋の皮むきを手伝う事にした。
山積みの芋に手をかける
「これ手伝っても良いか?」
「構わないけど邪魔だけはしないでね。早く終わらせたいの」
そう言った彼女の手を見ると傷だらけだった。
芋の下処理なんかするのはいつぶりだろうか。
基本的に料理長だった俺はコースの仕上げが主な仕事だった。
ふいに調理師学生の頃を思い出す。
(あぁ、あの頃は俺も毎日包丁で手切ってたなあ」
ふう。
一呼吸起き、ナイフに手をかける。
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「シズク!ちんたら芋の仕込みしてたら終わんねぇぞ!ん?もう終わったのか??」
最後の客の料理を仕上げたロゼが寄ってくる
「俺より早いんじゃねえのか?それに一つ一つ丁寧な下処理じゃねぇか」
「いえ、これは私じゃなく…」
そう言った彼女を遮るように
「また明日も皮むき教えて下さい!よろしくお願いします!」
シズクはぽかんと口を開ける
「がっはっは!そろそろシズクにも次の仕事教えてやんねぇとなぁ!おうそうだ新入り!鍋洗い終わったならもう今日は上がっていいぞ!」
「お疲れ様でした!!」
頭を下げ俺は厨房を後にする。
拍子抜けしていたシズクは訳も分からないまま会釈をした。
「キミは一体何者なの…?」