希望と絶望
まさかオークションに出されてるとは...とりあえずエゼキエルの天使の力に
頼ってみることにした。早速本来宿代を稼ぐはずだったゲームに向かう。
⦅何にかけるつもりなの?⦆
「ああ、ストレイボアレースにするよ。」
⦅なるほどねぇレースか、いいじゃないか僕が未来予知を使って着順をあててやるよ!⦆
「未来予知か、便利だな天使限定のスキルか?」
⦅違うよ、これはこの世界でいう固有スキルというもので属性とは関係なしに個人が生まれながらに持っているスキルのことだよ。⦆
「へぇじゃあ俺の固有スキルはなんなんだ?」
⦅ごめんね、全員が持ってるわけじゃなくて例えば勇者やそのパーティー、それに魔王やその幹部なんていう選ばれた者だけしか持っていないんだ⦆
へー世界の存亡がかかった任務をもつ俺は選ばれた者じゃないのか...
「で、その固有スキルは勇者とかいくつくらい持ってるんだ?」
⦅ふふ、それはね1人1つまでなんだよ。いくら勇者でもね。でも僕のような天使はすべての固有スキルがつかえるんだ!⦆
「おお!最強じゃねーか!なんでお前が魔王を倒さないんだ?」
⦅それはね、天使は天界じゃないと力が制限されてしまうんだ。だから本来天界でなら1世紀くらいは難なく予知できる未来予知のスキルも下界だと10秒先を予知するだけで精一杯なんだ⦆
なるほど...まあカジノくらいなら10秒先読めたら十分だよな。
グラグラグラグラグラグラ....
「おい!今揺れはなんなんだ?」
⦅これはまずいぞ!避けろカナメ!右だ!⦆
なんだ!?俺は迷わず右に避けた。
ガバァァァァァァァン!!
「うわ!なにが起こったんだ!?」
巨大な火の玉が飛んできた!
⦅カナメ!そのまま真っ直ぐ進んで外に出ろ!⦆
「おい!何が起きてるんだ!?」
⦅魔王軍だ、魔王を葬る7つのアイテムの情報を聞きつけて聖龍の涙を取りに来たに違いない!⦆
「そんな!じゃあアイテムを取りに戻らないともう魔王を倒せなくなるじゃないか!」
⦅君には無理だ、恐らく数だけでも200はいる。それに1体1体がカナメの数十倍の強さはあるだろう。⦆
「そんな...」
⦅それよりも今はアテネのところに向かってこの街からでるんだ!⦆
俺は走った。四方八方から飛んでくる建物の瓦礫や魔法をエゼキエルの未来予知で避けながら。この街にいた冒険者たちが手柄をたてようと魔王軍に立ち向かっていくが聞こえるのは魔王軍を倒した歓喜の声ではなく、悲鳴や助けを求める声ばかりだった。
「どうしよう...もうすでにアテネが...」
⦅カナメ!そんなことを言ってる場合じゃないぞ!宿屋は街の外れだまだそこまでは
魔王軍も来ていないはずだよ、あくまで狙いは聖龍の涙だからね。⦆
「おう!そうだな。宿が見えてきたぞ、あと少しだ。」
どうやらここまでは魔王軍は来ていないようだった。
俺は宿屋のドアを勢いよく開け、アテネの部屋にいった。
「アテネ!無事か!?」
『どうしたのよ、汗だくじゃない。』
「いいから逃げるぞ!」
俺たちは再び走り出し、街を一望できる丘に向かった。
『どういうことなのよこれ...街が燃えてるじゃない!』
俺たちが丘に着いたころには街の大半は燃えていて既に魔王軍が去った後の様だった。
「まさかここまでの被害だなんて...」 俺は自分の弱さに失望した。
『なにがあったのよ!』
「魔王軍が来た...どうやらカジノのオークションにあった聖龍の涙の情報を掴んで奪いにきたらしい。」
『そんな...』
⦅二人共こうしちゃいられないよ!次はきっとメデューサの髪が狙われてるはずだ⦆
「そんなこと言ったってもう聖龍の涙は魔王に奪われて破壊されているに違いない」
⦅いや違うよ、7つのアイテムにはそれぞれ天使の加護が付いている。だからそのアイテムに
加護を付けた天使を殺しでもしない限り破壊出来ない。⦆
『じゃあまだ希望はあるのね』
「無理だろ、たった200の軍勢で1つの大きな街、しかも冒険者の集まる街を壊滅させて
しまったんだぞ?その親玉なんて到底俺たちにかなうわけないだろ!」
⦅現時点ではね、でもいくらアイテムを奪われても破壊することはできないんだ。だからそれまで君たち2人は旅を続けてレベルをあげるんだ⦆
『わかったわ』
「まぁそこまでいうなら希望はあるんだろう。この街で無残に死んでいった人達の為にも魔王を倒して見せよう!」
⦅やっと主人公らしくなってきたみたいだね!そういうことで君たちは”王都エルホワール”に向かってくれ。僕は勇者たちにこのことを伝えに行くからしばらくは腕輪の中にはいなくなるからね⦆
「ああ、ありがとな」
こうして俺たちはこの街にお悔やみと別れを告げて”王都エルホワール”に向かう。
第8話ご覧いただきありがとうございます!
果たして”王都エルホワール”どんなところなのでしょうか。
そしてアイテムを取り返し魔王を倒すことができるのでしょうか。
ではまた第8話で