次なる街へ!
アテネと旅が出来るのはうれしいしさっさと出発したいところだが
装備も何もない。
しかも服装はダボダボのパーカーに下は高校の時に買ったスウェットという
〔布の服〕や〔鉄の鎧〕などの服装が主流のこの世界にとってかなりおかしな格好なため、
防具屋に...って金がないんだった。
流石にこれ以上はアテネに借りるわけにはいかないが取りあえず見るだけで...
絶対に買ってもらおうなどとは思っていないぞ!!決して!
っということでアテネに案内してもらい武器・防具屋に来た。
「すいませーん。装備見たくて来たんですけど...」
「おっ遊び人のにーちゃんじゃねーか!」
このガラガラ声はまさか、
「ガバンのおっさんじゃねーか!どうしてここに!?」
『ねーあんた外の看板見なかったの?看板に”ガバンの装備店”って書いてたじゃない』
いわれてみたら確かに書いてあったような...
「ところでにーちゃん、今日は何しに来たんだ?」
そのことなんだが...と今は金がなく旅に出たくても武器もない為出られず困っているということをおっさんに伝えた。
「なるほどな...まあここにきたのもなにかの縁だ、店のモンはただじゃやれねーが俺のお下がりをやるよ。多少汚ぇが十分使えるだろ」
そう言って俺に”鋼の剣”と”鉄の胸当て”をくれた。
これなら少しはこの世界にも馴染めそうだ、本当にいよいよって感じだな
「ありがとなおっさん!」
「いいってことよ!常連候補は大事にしなきゃな!」
こうして装備も整い早速装備してみた。
おっさんのお下がりってことはデカすぎて真面に装備できるのかと心配したが意外とぴったりだった。なんだかおっさんの装備がぴったりなんて複雑な気持ちだが、胸当ては思ったよりも軽くかなり動きやすい。
鋼の剣も多少の傷はあるもののとてもよく切れそうだ。太陽にすかすと鏡のようにキラキラと輝いている。
『なかなか様になってるじゃない、冒険者らしくなったわね』
アテネにも褒めてもらえた。人に褒められるなんてほとんどなかったためすごく嬉しい。
「お、おう。じゃあ早速行こうぜアテネ!」
『そうね、じゃあここからそう遠くないソルケトの街に向かいましょうか。そこなら向かう道中もスライムのような雑魚モンスターしか出ないからあなたにとってもいい練習になるはずよ』
「よし目的地も決まったことだし行くとするか!」
そして2日間過ごしたエアストの街に別れを告げて旅に出た。
「そういえばさっき次の街までそう遠くはないって言ってたけどどれくらいかかるんだ?」
『んー早くても2日ってとこね』
「へー」 それって近くないよね...
俺たちは草原を進んでいく。温かい微風が吹きとても心地が良い。
アテネによると道なりに進んで行けば次の街に着くらしい。その道中にいくつか小さな村があるためのんびり行こうというわけでだ。
『カナメ!見なさい、あそこにスライムがいるわ。』
アテネが少し先にの岩陰に指を指しながら言う。
アテネが指を指した方向には確かにスライムを見つけた。
『ちょうどいいわね、カナメ行きなさい!あなたの初めての戦いよ』
「よし、いってやるぞ......いやちょっと待ってくれやっぱり心の準備が...」
いくらゲームの世界では雑魚キャラとして名高いスライムと言えど最初があんな出会い方だとやっぱり怖い。これがトラウマというやつだろうか
『何スライムごときに怖気づいてるのよ情けない。』
「いや、ゲームと違って現実だといくらスライムでも...」
『いいからさっさと行け!!』
「はいっ!」
バンっと背中を叩かれ少し気合が入ったような気がする。背中のヒリヒリした感覚がしばらくして消えたところでスライムの方へと駆け出した
よーし、相手はただのスライム、そうスライム!
行けるっ
「くらえー!!」 シャキン
気持ちのよい音と共にスライムは真っ二つになって液体になり地面に染み込んでいった。
手にはまだスライムを切った不思議な感覚が残っている。
「た、倒したのか?倒したんだな!?一人で!!」
『スライムだからね』
「あぁスライムだったな...」
その後スライムへの恐怖心は無くなり道中出会ったスライムをバッタバッタと切り伏せていった。 だがしかし...
「お、おいアテネなんだあの魔物!」
しばらく歩くと木々が生い茂り薄暗い道へとはいった。
パキパキッと枝が折れる音が前方から響きグルルルルと恐ろしい音を立てる大きな影が現れた
なんなんだあの魔物は?よくみると大きなイノシシのような魔物が片足で土を蹴り上げながら今にもこちらに突進してきそうな目でにらんでいる。
『あれはストレイボアね、こんなところには出ないはずなのに...まぁ走ってる間は方向転換
できないからそれだけ注意していればあなたでも倒せるわよ』
そんなことを言われてもあんなでかい動物なんて動物園くらいでしか見たことないのにいきなり倒せる訳がない。
だがこの時の俺は違かった。スライムを倒せたことから少し心に余裕が出てきた。
調子に乗っていたのだ。
だがもう遅い。俺はすでにストレイボアに向けて走り出していた。
タッタッタッタッ
『突進されなきゃいいけど...』
ドンッ 鈍い音がした。
内臓に響く振動を感じながら気付くと隣にアテネが立っていた。
どうやらアテネのもとまで、およそ10メートルほど後ろに吹っ飛ばされたようだ。
もし胸当てがなかったらどうなっていたことか。
「いてててて...」
突進された胸の痛みより思いっきりついた尻餅の方が痛かった。
『っぷははははははは』
吹っ飛ばされた俺を見てアテネは大笑いしていた。
これまで見せたことのない程の大笑いだ。
それどころじゃないだろ....俺はボソりと呟いた
高橋シュウです。第5話ご覧いただきありがとうございます
面白かったでしょうか。
次回はストレイボアに勝てるかな?
ではまた第6話で。