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3杯目 (シャンパンのカクテル①)

 「何か少し摘まれませんか?」


 オリーブを噛りながらマティーニに飲んでいると桜羽さんが声をかけて来た。


 確かに何か少し食べたくなって来た所だったので、摘める物は何があるのか聞いてみる。


 桜羽さんは頬に手を当てて少し考えると、バックバーからメニューを取ると彼に差し出しながら


 「こちらがフードメニューになります。色々ありますけど、今日のおすすめは鴨の燻製ですね。私の手作りなんですよ♪」


 と微笑んだ。


 ⋯いちいち驚くのも疲れてきたよ⋯と内心思いながらも簡単な燻製を何度か作った事のある彼としては興味が湧く。


 「自家製の鴨の燻製ですか?作るの大変だったんじゃないですか?」


 と聞いてみると、桜羽さんはグラスを磨きながら


 「そうでも無いですよ。鴨は温燻で仕上げますから70〜80℃に温度を管理するのが少し大変な位ですね〜。スモーカーの前でビール片手にノンビリするのも良いですよ〜♪」


 と事も無げに言った。


 スモーカーの前でビール片手にしゃがみ込み真剣な顔で温度計とにらめっこしながら燻製の番をしている桜羽さん...


 ヤバい、想像すると思わず笑みがこぼれてしまう...


 カウンター内で鴨の燻製のブロックをスライスしながらお皿に盛り付けている美咲さんを見つめていると、彼女と目が合った。


 「⋯何かちょっと失礼な事考えてませんか?」


 ジト目で彼を見つめる桜羽さん。


 ⋯これヤバすぎる⋯超かわいい⋯


 「いや、スモーカーの番をしている桜羽さんを想像するとつい可愛いな〜って思っちゃって...」


 彼がそう言うと、彼女は赤く染まった頬を膨らませて


 「もう〜、からかわないで下さいよ〜」


 と彼に言うと、いそいそと盛り付け作業に戻った。



 唐津焼の皿には数切れの鴨の燻製とサラミ、それと数種類のピクルスが盛り付けてあった。


 「サラミみたいな物はチョリソ。この町の山奥で作っているお店があり、そこから買って来た物です。ピクルスは地元のおばちゃんが作った無農薬の野菜を私が漬けました。」


 「それとこちらはサービスです♪」


 大皿の隣にそっと置かれた小皿には、数種類のドライフルーツが盛り付けられていた。


 「オレンジと柿とマンゴーのドライフルーツです。この町でつくられた果物を私がドライフルーツにしました。今は家庭用の機械があるから楽ですよね♪」


 香ばしい香りのジューシーな鴨肉は絶品だし、ピリッと辛味のあるチョリソも旨い。


 ピクルスは絶妙な酸味と浸かり具合で口の中をさっぱりしてくれ、ドライフルーツはねっとりと甘味が凝縮されていて最高だ。


 美味しそうに箸を進める彼を、桜羽さんも嬉しそうに見つめていた。



 「こちらはシャンパンかスパークリングワインのボトルは置かれていますか?」


 彼がそう尋ねると、桜羽さんは嬉しそうに


 「ございますよ〜♪クリュッグ・グランド・キュヴェ〜、ルイ・ロデレールのクリスタル〜、サロンもありますよ♪あ、ドンペリニヨン・レゼルヴ・ド・ラベイになさいますか?」


 と答える。


 指折りプレミアムシャンパンの名前を並べる彼女を彼が冷たい目で見つめていると、その視線に気づいた彼女は咳払いを一つして


 「...冗談です。ちゃんとお手頃な価格のシャンパンもスパークリングワインも用意してありますよ♪お飲みになられますか?」


 と聞いて来た。


 「こちらのお店は先日オープンされたばかりですよね?ご迷惑でなければ一杯ご馳走させて頂けませんか?」


 と彼が言うと


 「宜しいのですか?ではお言葉に甘えて一杯頂戴致します。」


 桜羽さんは嬉しそうに答えた。


 「それではスパークリングワインのボトルを開けて頂けますか?それでカクテルを2杯お願いします。私にはブラック・レインを、桜羽さんにはシャンパンフレーズを...」


 と言うと


 「はい、お酒は揃ってますから大丈夫ですよ。...私にシャンパンフレーズを選んで頂けるなんて嬉しいです♪」


 と嬉しそうにリキュールのボトルを取り出し始めた。


 「せっかくなのでグラスはこれを使いますね♪ロブマイヤーのアンバサダー・シャンパン・フルートです♪」


 と戸棚から美しいフルートグラスを2脚取り出した。


 ⋯あれ確か1脚2〜3万はするグラスだよな⋯


 彼が若干引きながら見つめている彼の視線など全く気にすること無く、美咲さんはご機嫌でバーマットの上にグラスとリキュールのボトルを並べるとバックバーの一角に埋め込まれているワインセラーから1本のスパークリングワインを取り出した。


 「ワインはクレマン・ド・ブルゴーニュ・ブリュットを選ばせて頂きました。味もコスパもバッチリのスパークリングワインですよ〜♪」


 彼女は慣れた手付きで封を切ると、コルクを静かに抜いた。


 グラスにスパークリングワインを注ぐと、一つのグラスには真っ黒な薬草のリキュール"オパールネラ・ブラックサンブーカ"を注ぎ、もう一つには苺のリキュール"クレーム・ド・ストロベリー"とサクランボ原料の蒸留酒"キルシュワッサー"を注ぎ軽くステアした。


 「お待たせ致しました、ブラック・レインです♪」


 と桜羽さんは彼の前にあるコースターの上にそっとフルートグラスを置いた。


 そしてもう一つのグラスを手に取ると胸元で両手で持ち構える。


 彼もグラスを持つと目の高さまで持ち上げ


 「開店おめでとうございます、これからも宜しくお願いします。乾杯!」


 と言ってグラスに口を付けた。


 「ありがとうございます♪これからも宜しくお願い致します♪」


 と言って嬉しそうに微笑みながらグラスに口を付けた。

美和さんの名前を上げたシャンパンですが、ビンテージにもよりますが小売価格が

クリュッグ・グランド・キュヴェ ¥25000

ルイ・ロデレールのクリスタル ¥35000

サロン ¥80000

ドンペリニヨン・レゼルヴ・ド・ラベイ ¥120000

位です。

クレマン・ド・ブルゴーニュ・ブリュットは約3000円

因みに彼女の店のセラーには軽く20万円を超えるドンペリニヨンP3も転がっています((笑))

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― 新着の感想 ―
[一言] 酒も美味しそうなのですが、鴨の燻製がたまりませんね。静かなバーで静かにお酒が楽しめる大人になりたいです。
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