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不安な奴は読め。  作者: こども
9/138

なし9

 日曜の終わり。夏休みの終わり。夏の終わり。人が最も死ぬ時期だ。月曜日はさぼって良し。火曜も水曜も週7日、365日さぼって良し。上手に賢くさぼれる能力が人間の必須能力だ。


 どうしようもなく大切な人を煩わしいと感じるようになってしまったら、どうすればいいのだろう。世界でたった一人の家族に、「さっさと消えろ」と毒づいてしまったら、寂しい時あれほど会いたかった人が最も会いたくない人に変わってしまったら、一体私達はどうすればいいのだろう。こんなに乾いているのに水を飲みたくない。こんなに空腹なのに何も喉を通らない。眠りたいのに眠れない。いつだってそんなことばっかりだ、私達は。どれほど人間が嫌いでも、結局恋しくなるのだ。どれほど恨みつらみを抱えていても、許さずにはいられない。どうせいつか必要になるから、側にいてほしいと願ってしまうから、突き放すのも寄り添い合うのもどっちも正しくないんだろう。


 誰でも良かったから付き合った人とは傷ついて離れ離れになったし、どこかしらを好きになって付き合った人との思い出はこれといってすぐに出てこない。自分は全く自分を知らないし、人の見た目も中身も大して重要じゃないんだと分かった。性格がいいとか容姿がいいとか、一緒にいて楽しいとか、結局全部言い訳だ。負け犬の遠吠え。言うだけ無駄だ。好きなところなんて一つもないけど一緒にいたいと思えてしまったら、いつもより少しだけ大事にしてみたほうがいい。


 それでも誰しも一人の時間は必要だ。ずっと一緒にいたいなんて全くロモンチックじゃないことを言う奴は何かしらの事情で一緒にいられなくなった時、一瞬で終わる。残念。

 例えば公園のベンチに腰掛けた時、ほんの少し微かに残る温もりと、足元に転がる空き缶を発見した時のような、孤独で、温かい感情。わざわざ入口から一番遠いベンチの端っこを選んで泣いていたやつが、自分の他にも確かに存在したことの証明。そういう時、心底救われる。偶然の一致か、はたまた思考が似ているのか。顔も姿も知らぬそいつに想いを馳せる。明日は生きていけそうか、と。お前のおかげで私はもう1日くらい生きていけそうだ、と。そういう一人の幸福が生きていく希望じゃないのか。一人で幸せを感じられないやつが集まっても、二人で幸せになれるわけがない。


 いつか大切な人がいなくなった時、死ぬほど後悔する。離れる理由は鼻で笑えるようなことだろう。死ぬほど後悔する過去を今私達は生きている。だからなんだ。結局私達は大切にできず、時々傷つけ、笑い合いながら生きていくしかない。開き直るでも諦めるでもなく、ぼんやり生きていけたら、きっとそれでいいんだと思う。


 

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