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不安な奴は読め。  作者: こども
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雨と雷、そして虹。

 雨が降る東京。最近は地震が多い。どこもかしこも人はいない。そもそも地球にはとっくに人間なんかいない。ちょっと賢くて果てしなく愚かな2足歩行生物、その成れの果て。不安は気温の低下とともに押し寄せる。解凍中の枝豆は永遠に溶けない。もう何年も虹を見ていない。


 雷が落ちる東京。祈る老婆に直撃した。跡形もなく消え去ったその運命に飼い犬は特に興味を示さない。天気が悪い日に限って外に出たくなる。躊躇なく水たまりを踏んだあの頃にはもう戻れない。雷を見ようと家を出た少女は2度と帰ってこなかった。真っ先に思い浮かぶ本気の恋などない。


 携帯の充電は一向に増えない。部屋はどんどん暗くなっていく。通知画面にはどうでもいいやつの名前しか映らない。この間寿命は320秒減った。生まれた理由を考えるのには飽きた。2枚のマスクは届かない。5年前もらったペンダントは今や地獄を反射する鏡。もう1週間も返信は来ていない。


 どうでもいいやつとどうでもいい話をしてどうでもいいやと思いながら一番安いホテルでセックスした。そんな時に限ってちっともどうでもいい夜なんかにはならない。軽率な人間になるには強さが要る。薄情な人間になるには諦めが要る。僕には才能がなかった。池袋東口のガードレールは血に塗れていた。


 心配しなくても全員死ぬ。自慰するたびに不全感が襲いかかる。携帯の充電は一向に増えない。雷はどんどん近くなってくる。今日の夜は多分眠れない。唯一欲しい返信は来ない。今朝口座から12万円減った。この雨は後1年は止まない。


 会いたい人には会いに行けばいい。途中雷に打たれても自己責任。昔大好きだった人は今雨の中セックスしている。運命は諦めた者に付いてくる。僕の眼にはもうきっと虹は見えない。

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