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俺であるため
「生きなさい」と言われた。どうしてそんな残酷なことを、と恨んだこともあった。寿命まで生きることの難しさを日々痛感しながら満員電車に乗る。
俺は俺の快楽のため大切な人を傷つけ、大切な何かから逃げ、気づけばなにも残ってはいない。朝陽が逃げられぬ渦を伴って近づいてくる夜明け前、野良猫は轢かれ腸を飛び出して死んでいく。
プライドとは何かと考える暇もなくちっぽけなプライドにしがみつく惨めさに周囲は嗤う。自分を信じ生きられない滑稽さに周囲は笑う。「よかったね」と言われても、誰も彼も地獄を抱えたま生きているだけ。
優しさの答えに気づけないまま10代は終わる。人生の意味を諦めてから20代は始まる。あと何年すれば俺は優しくなれるだろう、そう自問しながら線路内に飛び込む人を今日も見送る。




