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不安な奴は読め。  作者: こども
5/138

なし5

 世界中でたった一人だけ、愛せる人がいたとする。絶望の底で、恋も相性も妥協も全部超えたところにいた相手。そんな人がいたとする。完全に身も心も愛してしまった。あなたの負けだ。完敗。結婚もした。その人が連続殺人犯だったら、誘拐犯だったら、ドラッグに溺れていたら、3億円の借金を抱えていたら、どうする。

 

 変わらず過ごせるか。愛せるか。信じることが、できるか。死ねと言われたから死ぬ。そんな形もあるはずだ。さよならと言われたから殺す。そんな形もあるはずだ。傷つけて傷つけられて、ボロボロのガラクタの錆びた鉄の塊になっても諦められない。そんなグロテスクで、美しい愛。何も面白いことなど言わずとも、どれだけ涙を流そうとも、どれだけ身体の奥の奥の熱い何かを叫んでも、何一つ満たされない日々。誰にも語られない、二人だけの日々。気遣い合いながら、殺そうとする毎日。正義も悪も常識もモラルも歴史も人情も法律もセックスも、何もかも超越した二人。そんな夫婦がいるのだろうか。依存するでも、認めるでも、貶めるでもなく、どうしようもなくどうでもいい関係。グチャグチャのブンブンの最も人間らしい、格好悪い愛。二人の携帯にはSNSのアプリは一つもない。部屋にはDVDしか見られないテレビと、本棚とこたつ。それだけでいい。手でも繋いで誰もいない、明かりも灯っていない、一寸先も見えない道を一生散歩する。寝顔にキスする。一生セックスなんかしない、性器の必要ない生活。そういうものに憧れているのかわからないが、そんな二人がどこかにいることを願う。


 いたらいいな。

 

 他人の過去なんてどうでもいい。自分の過去ですらどうでもいいからだ。苦労も罪も後悔も、誰も何も聞きたがらない。そんなもんだ。清楚な人間なんて、素朴な人間なんていない。一度は乱交でも野外でもなんでもやったほうがいい。誰も過去は愛せない。今のお前しか愛せない。過去なんて全部嘘で作り話だ。どれだけお前が傷ついても反省しても、人に話した時点でそれは嘘だ。許してもらった瞬間都合のいい妄想だ。許してもらわなくとも、お前一人でお前の人生を笑ってやれ。笑えないなら、泣いてやれ。それだけできっと生きていける。だから殺人犯でも誘拐犯でも借金を抱えていても脳みそがぐちゃぐちゃでも惚れた相手がお前の相手だ。負けてしまったらしょうがない。自分だけの物語を、日記にでも書いて永遠に海の奥深くにでも沈めておけば、それで十分だと思う。

 


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