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不安な奴は読め。  作者: こども
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なし4

 いつからだろうか。真っ先に思い浮かぶつらいことなどなくなったのは。いつからだろう。眠りたくなくなったのは。


 大量の漫画にゲーム。学校に行かない息子。何も言わぬ母親。ただ微笑む父。独立した兄弟。かつての賑わいは嘘のように、広すぎる部屋には何も響かない。響かない。響かない。息子は思い立ったかのように暴れてみては母親はひたすら謝るのみ。Googleの検索履歴に残る「楽な死に方」。簡単だ。いつだって壊れるのは一瞬だ。他人が苦しい。自分以外全て。世界も時間の流れも何も解決してはくれなかった。雨音の嘲笑。無限の想像は吐瀉物となって流れ出ていった。

 

 不登校だった。高校時代。間違いなく友達はいたし赤点を取ったこともなかった。靴を隠されることもなかったし部活もやっていた。ふと突然、いやもしかしたら何年も前からずっと、行きたくなかったのかもしれない。学校に行くのをやめた。どうでもよかった。数学も英語も体育も、校則も規則も出席も欠席も、昨日のテレビも直近のニュースも、好きなタイプの異性も芸能人も、テストも大会もどうでもよかった。何一つ、ちゃんとしなかった。気分じゃなかった。全て気分と雰囲気だ。人間は一生それらに敵わない。先生からの信頼なんかよりも、学校の最寄駅を過ぎることの方がはるかに嬉しかった。どうしてあんなに必死だったのだろう。どうせ今現在、1ミリも関わっていないのに。謎のアンケート用紙も体罰調査もかかってくる電話も保健室の先生も、全て気持ち悪かった。クソがクソ溜まりでクソの塊を相手しているのだから何一ついいことなどあるはずもなかった。バカで無駄で、自分の期待と無知を恥じた。担任に「先生が嫌いなので学校に行きたくありません」と言ったら保護者呼び出しの事態となった。私は嫌いで先生も私を嫌いだったはずだが、おかしなことだ。今でもブタの考えることはわからない。

 

 自分語りをしてしまったが、何が言いたいかというと学校なんて行かなくていいということだ。もっと言えば、行きたくないところなんて絶対に行かなくていいということだ。職場だろうと何だろうと、なりふり構わず走り去るべきだ。どっかのゴミ虫がゴミ虫の常識で文句を言ったりバカにしたりしてくるかもしれないが、誰もお前に責任をとってなんてくれない。言うだけ言って死んだら、「残念です」などとフジテレビのインタビューで答え、今晩行く風俗でも考えながら身なりを整えたハゲどもが「申し訳ありませんでした」などとフラッシュのたかれる中、ハゲを光らせる。涙を流して好感度を上げる。


 いいのか、それで。絶対に良くないことくらいわかる。私にすら分かった。世の中のほとんどがどうでもよかったが、不思議とそれは絶対に嫌だった。マスコミも代表取締役も校長も評論家も司会者も全員、お前を笑い者にして終わるだけだ。お前のその悲しい苦悩を、終わりのない戦いを、もがき苦しんだ毎日を、あいつらの給料にされて終わるだけだ。こんなにも私は脆弱だ。あなたも。現実は残酷だ。東日本大震災にはもう誰も関心がない。目の前で他人が電車に飛び込めば、まず会社に電話する。食事も会話も散歩ですら、スマホがないとまともにできない。誰も本当は他人に興味がない。嫌いだ。嫌いだ嫌いだ。大嫌いだ。へらへら笑って、嫌いなのに下心も隠さずオナニーばっかしやがって。気持ち悪い気持ち悪い。結局セックスだ。「セックスしたい」しか喋れないように設定してくれれば、世の中は100億倍良くなる。雨はもっと盛大に降れ、関東全域くらい未曾有の大洪水に。雷はまだ優しすぎる。もっとピンポイントで狙うか、関東全域に隈なく落ちろ。もう誰もたわごとを言わなくて済むように、腹の探りあいなどしなくて済むように、スマホなんて見なくて済むように、作り笑いもボランティアもラブホも寄金もコンドームも自殺も、全部なくなるように、全部ぶっ壊れてお終い。そんな夜があればいいと思う。

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