表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不安な奴は読め。  作者: こども
3/138

なし3

いい時代だ。日本に限っては。戦争はない。金はある。食料も水も服も家も。帰る場所がある。先進医療と科学技術も。思想、学問、宗教の自由、反差別、教育、就職、大都市、電波塔。スマホにベッドにテレビにパソコン、youtubeにTwitter、LINE、Instagram。漫画も小説もエッセイも評論もゲーム機もある。この国には幸せがある。

 

 年間3万人、自殺者の数だ。3万人。毎年。もう一度言う。いい時代だ。この国には幸せがある。本当に不思議な国だ。止まる電車。敷かれたブルーシート。散乱した薬。ガソリンとライター。夕方、留守番していた小学5年生の子どもに会いにふらっと帰ってきた父は、22時に帰ると言って家を出たきり、帰ってこなかったらしい。最高の贅沢。死にたきゃ死ねる。たったそれだけのことだった。恵まれた者たちの特権。それについて好き勝手言える特権も。特権だらけだ。私たちはあらゆる権利が憲法で保障されている。小さい文字で事細かに書かれた法律も、離れた人の声が聞ける電話も、地球の裏側まで行ける飛行機も、結局何一つ、誰も救えない。心は戻らない。科学も医療も、心は救えない。心理学の資格を取っても、誰も報われない。悲しい、悲しい、悲しい。本当は悩みなどない。本当は死にたくなんてない。本当は家族が大切だし、本当ははっきりと言いたい。逃げたい。泣きたい。暴れたい。叫びたい。そんな必死の感情が、ふと、ぷっつりと切れてしまう。周りの人間が、どうしようもなさすぎるせいで。気づけば起きているのか、寝ているのか、つまりは生きているのか死んでいるのか。ちょっと昼寝でもするかと、首を吊る。そんなもんだ。いい天気だから散歩がてら、ビルから飛び降りる。心が壊れるとは、きっとそういうことだ。覚えておいたほうがいい。

 

 夜にぐっすりと眠れる人に、真夜中散歩する人の気持ちは分からない。真っ暗な部屋のベッドの中で数時間先をただひたすら拒み続ける恐怖は分からない。このまま夜が開けなければ、何万人が救われるのだろう。そんな夜を送ったことのある人がどれほどいるのだろう。いつか死ぬ。明日かも、10分後かもしれない。人間なんて10秒あれば死ねる。


 カメラを駅のホームに設置して一人飛び降りた少女の孤独を思う。彼女が死んだ理由なんて、好き放題言うことができる。やばいやばいと、鼻くそでもほじりながら、新しくやってきたパンダのように眺める数十万の人間。クソども。死ね。神はいない。いるならとっくにそんな奴ら皆殺しにしているはずだ。人が死んでいるのが面白いと笑えるほどにお前らの人生は退屈だ。退屈は癌だ。気持ち悪い。心底、お前ら全員気持ちが悪いと思う。何もやばくない。少女が自分で死んだ。それだけだ。そんなことは年間3万回も起こっている。それが動画になった途端、お前らの肴になる。「そういえば、これ見た?(笑)」こんな会話が居酒屋で、ファミレスで、行われているのだろう。死ね。だからお前らが嫌いだ。だから死ねと言ってる。「死ねなんて軽々しく言ってはいけません」と、親は先生は謎の倫理観を持った蝿は語るが、じゃあ本気で言ってやる。クソども。善も悪も偽善も、良し悪しも興味がない。結局自分で選び、決めるしかない。だからお前らはクズ以下だ。死んで差し支えない。気持ち悪い気色悪い。かわいそうだ、なんてどの口が言ってる。どういう神経してたら、そんなことが言える。誰もお前の同情なんか微塵も必要としていない。共感や同調がないと何もできないお前らと違う。そんなものを必要としてたら一人で死ねない。お前のせいだ。私のせいだ。こんなにも世界が汚物まみれなのは、間違いなく、私たちのせいだ。世界は間違っている。世界がもう、明日にでも、今日の夕方にでも、終わってしまえばいいと思う。絶対に終わらないから、終わってしまえばいいと思う。


 くだらない人間ばっかりなのは、自分がくだらない人間だからだろうか。見世物にされるのは、自分で自殺配信なんてしたからだろうか。死にたいと、殺したいと、たったの一度も考えたことのないような人間が蔓延る現代。それも妄想か。誰もが死にたいと毎日思っていて、必死に隠しているのだろうか。分からないけれど、いつか、できれば私が生きてる間に、全部何もかも終わってしまえばいいと思いながら、これを書いた。さよなら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ